健全なるトキメキ
最近のトキメキは、何か悪いことをしているけれど、そのスリル感の楽しむ
「不健全なるトキメキ」だった。
要するに、彼氏でもない人といちゃいちゃをするということである。
この前、かっこいいな、いい人だな、仲良くなれたらいいなと思う”推し先輩”を呑みに誘った。
その先輩は、数ヶ月前に会社を辞めてしまった。
仕事の合間に立ち話をする程度の仲だったが、その少しの時間から感じとる彼の人柄がいいなと思っていたから悲しかった。
辞める前に、1度2人でランチに行った。
その時間がとてもとても楽しくて、「またご飯に行こう」となった。
そこで、もう1回私から吞みに誘ったというわけだ。
デートと思われて、変にお互いかしこまってしまうのは嫌なので、微妙な雰囲気になってもごまかせるようなサラリーマンのおじさんたちが好きそうなわちゃわちゃした大衆居酒屋を私が選んだ。
2人で呑むのが初めてだったから、ハマるか不安だったけれど、先輩はとても喜んでくれた。
二つ折りのメニュー表を私が広げると、片方のページを先輩が握ってのぞきこむ。
「どれもええなぁ。串焼きのおまかせとかはないんや」
先輩の声が近くで聴こえる。メニュー表を持っていない手が机の下で触れそうでとてもドキドキした。
なんかもどかしくて、萌える。
お互いビール好き、新橋とかにあるようなわちゃわちゃした大衆居酒屋が好き、と話しているとお互い共通点が見えてきた。
お酒が入って、少しほろ酔いで、いつもより気が大きくなって、話がとても盛り上がった。
ただ、なんか緊張してしまって、おつまみを食べず、ひたすら吞みながら話をしていた。
自分の家族のこと、地元のこと、電車や車に乗って目的地に着くまでの時間が好きなこと。
いろんなことを話した。ずっとドキドキしていた。
とても、とても楽しかった。
お店も閉店時間になり、駅まで2人で歩いてそれぞれの電車に乗った。
「楽しかったな、また呑もうな!」
そう言って手を振って帰る先輩が愛おしかった。
帰り道、マスクの下で口元が緩んでしまって、にやけが止まらなかった。
高校生とき、初めてできた彼氏と手をつながずに帰ったあの夜のことを思い出した。
キスもハグも何もしていない。
ただ3時間半おしゃべりをしただけ。
ただそれだけ。
だけど、トキメキが止まらない。
真っ白なトキメキ。
これが、健全なるトキメキ。
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