金色の翼
翼のなかった鳥、Ticoが語るお話。
レオ・レオニ
『TICO and the golden wings』
Leo Lionni
周りの鳥たちは、飛べないTicoへ
食べ物を取ってくれたりと
とても親切にしてくれていました。
『自分にもつばさがほしい』
その願いが叶うまでは。
金色の美しい翼を手に入れたTico。
その姿を見てかれらはどう思ったのか。
そして、金色の羽根が全て
かれらと同じ黒に変わった時は?
どちらの場合も周りの鳥たちは
あからさまに態度を変えます。
まるで人間の大衆のような残酷さ。
以前の優しさ、と思えたものは
弱い立場のものに対する優越感から?
金色の翼を見て手のひらを返したように
差別し始めたのは妬みからくるものでしょうか?
Ticoは金の羽根を一本いっぽん
抜いては貧しい人を助けていきます。
抜いたところからは黒い羽根が生え
最後には全て真っ黒になります。
『僕らと同じになったね』と喜ぶ鳥たち。
でも、もうTicoには分かっています。
見た目が同じでも、みんなとは違うんだ。
ぼく達はみんなそれぞれ違う。
それぞれ心、記憶、思い、持っている夢だって
見えないけれどみんな違うんだ。
(✳︎訳は参考程度にお願いします)
レオ・レオニの絵本ですが
お馴染みの版画やコラージュのような
技法ではありません。絵がとても美しく
何度も開いてしまいます。
作者がインドへ旅した後の作品だそうで
原書は1964年出版と書かれています。
シンプルにハッピーなだけでなく
完全に暗いわけでもない。
生きていれば目の当たりにする
陰と陽両方の要素を持ち
もちろん個性やエゴについても
深く考えさせてくれる絵本でした。
大人にとっても大切なテーマであり
色々な解釈が出来ると思います。
子どもが成長するとまた
話し合える内容も変わってきて
それもまた味わい深いのだと
ずっと手元に置いておきたいのです。