見出し画像

十月短歌

*全五十一首

10.1
本なんて読む暇もないリア充な君へ聞かせるモーリス・センダック
 (お題「読書または本」)

10.2
料理屋のカラカラ喋る換気扇あぶらのにおいいらっしゃいませ
 (お題「風」)

10.3
塩素の匂いが寒々しい十月のスイミングに子を送り出す
 (お題なし)

10.4
好きだからこそ憎み合ってしまうなど渦中で思えるはずもなくて
 (お題「ケンカ」)

10.4
アイコンを変えた理由はとくにないけどちょっとだけきぶんてんかん
 (お題なし)

10.4
ヘタな短歌ばかり詠んでるの、恥ずかしいからあなたにはまだ秘密
 (お題「秘密」)

10.5
完璧で究極でない君もアイドルダメなとこもむしろいいわ
 (お題「アイドル」)

10.5
君がくれたフラペチーノ画像にのらない幸せのかたちしてる
 (お題「写真」)

10.10
強風のこんな日ならば枯れ葉ごと飛ばされそうね君のとこまで
 (お題「飛ぶ」)

10.10
ふつかめに のこったねたを おいしいと たべてくれるひとがたいぷです
 (お題「おでん」)

10.11
君が歌うロックが聞きたくて降り立ったここはきっと地獄入口
 (お題なし)

10.12
青く燃える洋上を他人事のそぶりで見ている驕奢をわらえ
 (お題なし)

10.12
太陽の燃え殻が地に落ちてくる金木星と謂うらしいのだ
 (お題「金木犀」)

10.13
傷つけないやさしさという呪詛に阻まれて今日もまた抱き合えず
 (お題なし)

10.13
君照らす朝焼けはきっと優しいといのり夜更けにtouch&swipe
 (お題なし)

10.14
傘はない心はいつも濡れっぱなし迎えに来てよここは土砂降り
 (お題「雨と傘」)

10.15
我が事を信じてくれるおさいふの君がおまもりVISAにマスター
 (お題「おまもり」)

10.16
ありのままのあたしはほんと不細工だ黒くこすれたノートがそう言う
 (お題「勉強」連想短歌。NGワード「勉強」)

10.17
昼前に起きて夜のことをおもう ちかくてとおい目前(もくぜん)の月
 (お題「夜」)

10.18
いつも遅れてやってきて話題をさらう温いトマトでも食べてろ
 (お題「遅刻」)

10.18
ままならぬことばかりでしょとりあえずあすは油そばを食べに行く
 (お題なし)

10.18
ガソリンがガリクソンに見えた174円ガリガリちゃうわ
 (お題なし)

10.18
ひたすらに芋を焼きつつ煮て揚げていもくりなんきん他にはなにも
 (お題「秋の思い出」)

10.18
「しろい人」という名が詩的でうっかり恋しそうなのきっと秋のせい
 (お題 SNSアイコン風のイラスト)

10.19
えいえんと言葉と文字に踊らされ電池で動く人ならよかった
 (お題「充電」)

10.19
かたくなな醒めない夢の続き見るつま先剥げたエナメルパンプス
 (お題なし)

10.20
ドルガバの 香水のにおいきらいだと いう君のわけ知りたくて夜
 (お題 恋愛短歌)

10.20
だれかの陰口適当に返すたび増殖する小指の黒い糸
 (お題「増殖」)

10.20
花金に恋の一つもないけれど ないものさがしの三十一文字
 (お題 恋愛短歌)

10.20
君のグラスの水滴が落ちてくの黙って不埒な事考えてた
 (お題 恋愛短歌)

10.21
それにしてもアンパンチではばいきんは死なないあれは繰り返しの詩
 (お題「アンパンマン」)

10.21
かねもちになりたいっていう言い方が いかにも夢でフライドポテト
 (お題「夢」)

10.21
来たバスに乗り死んだ伯母に会いにゆく なにも言えぬと分かっていても
 (お題なし)

10.22
ちょっとずつ 日が短くなるねと何百回目かなママとこの会話
 (お題 初句「ちょっとずつ」)

10.22
詠んでみるほんとの君を知りたくて 短歌の何をも知らぬまま
 (お題「短歌」)

10.23
なんのスープでも揺蕩えるラーメンは誰とでも寝る女みたいだ
 (お題「ラーメン」)

10.24
いつだってあなたは泣いてないと云う 涙の跡を隠せぬままに
 (お題なし)

10.24
ちょっとずっと言いたかった事あったっけど何だっけって忘れたごめん
 (お題 初句「ちょっとずつ」)

10.24
好きな人の好きな人でもある彼に何を追悼すればよいのか
 (お題なし)

10.25
低音にふるえたくてまだロック聞く通勤電車の無口な朝
 (お題「ふるえ」)

10.25
自己評価と他人の評価が一致しないのだ作品が。謎だしオモロ
 (お題なし)

10.25
なんでだよ、とあなたは言った。でもかけるボタンがないよどこにもないの
 (お題「ボタン」)

10.26
俺とおまえどっちがほんとうなんだよと分身のアイコンに問われ
 (お題 SNSアイコン風のイラスト)

10.26
犭(けものへん)に招かれてノートの中で猫に逢う苗(ミャオ)と鳴く文字なぞる
 (お題「猫」)

10.27
髙島屋2階コスメフロアーで 端から端買い目覚める午睡
 (お題「楽園」連想短歌。NGワード「楽園」)

10.28
停車場で訛りは聞けぬ始祖たちの ふるさと求めてムーを立ち読み
 (お題「楽園」連想短歌。NGワード「楽園」)

10.29
コード決済選べずにまた財布出す 面倒くさいの壁にはばまれ
 (お題「壁」)

10.29
冬に来るもろもろのこと想いつつカーペットに体温をダウンロード
 (お題「ダウンロード」)

10.29
見送りは3秒でいいわこんなでも一人で逝くのに慣れてますので
 (お題 敬礼する警官のイラスト)

10.31
客はなくもとより仮装もなにもないカボチャがあれば煮物にしたる
 (お題「ハロウィン」)

10.31
もうずっとこの窓辺から眺めてる林檎の味はいまだ知らない
 (お題「Apple社製品」)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?