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腸脛靭帯は私のサンゴ
一カ月と少し前、私は60キロのロードのマラソンを走った。
私にとってはつらく長いレースになり、45キロを過ぎたあたりからは、左膝が痛くて曲げられないほどだった。
けれど、棄権するなどということは微塵も考えず、ただただゴールが遠いなと思いながら歩いたり走ったりしていた。
その後一週間ほどして膝の痛みもひいたので、久しぶりに走ってみた。
すると、それまで感じていた筋肉の痛みではない違和感を膝の外側上部あたりに強く感じた。
ギターの弦をぴんぴんに張ったような緊張感がある。
このまま走りつづけたら、この弦が切れちゃって大変なことになるかも。
そう思って走るのをやめた。
頭には、腸脛靭帯炎という言葉が浮かんだ。
それから鍼灸院に通うことになり、初診で「腸脛靭帯炎の症状ですね」と言われ、電気と鍼での治療をしてもらうことになった。
その後、マッサージも組み合わせて、ぴんぴんの緊張感をどうにかほぐせないものかと手を尽くしてみた。
今ではほとんど違和感もなく走れるようになったものの、腰やお尻のあたりが固まると、脚にも違和感が出てしまう。
そんな状況ながらも、やっぱり山に行きたいし走りたいしで、今日は比叡山のあたりの山に入った。
最初は少し違和感が出て、「大丈夫よ、緊張しないで」と言いながら進んでいたのだけれど、後半になって疲れもたまってきた頃に思った。
あ、違和感ない。
そこで、腸脛靭帯の違和感は私のサンゴだったんだと気づいた。
私は、井原知一さんのポッドキャストのヘビーリスナーだ。
その中のあるエピソードで、レース前に、それまでまったく気にならなかった違和感が出てくることがあるという話を以前されていた。
普段、練習していて疲労がたまっている状態を海でいう満潮に例えるなら、レース前に疲労抜きをすると、その水位が下がる(疲労が抜けていく)ことで、それまでは水に隠れていたサンゴ(違和感)が現れる、という理屈だった。
大会後3週間ほどはノーランで、その後もそれ以前に比べるとかなり走れなかったから、疲労度合いも低く、けれど違和感に対する感度は高く、という状況から、サンゴに目が行きすぎていたのかもと思った。
今日のルートは、走れるところも少なく、ただ淡々と前に進むしかなかった。
山を下りた頃にはすっかりへとへとで、まだ脚が心配なくせに容赦のない自分に文句を言ったりもしたけれど、それでも今日の山行をやりきれたことに満足感を覚えた。
腸脛靭帯の違和感は私のサンゴだった。
ここからまたどれだけ積み上げていけるのか、楽しみにしていよう。