Baba au rhum ババ・オ・ラム@Les enfants rouges Paris 75003 フランスのフードニュース 2021/12/22
今週のひとこと
年末も押し迫り、クリスマス商戦の忙しい中ですが、弊社DOMAチームの最後のディナーを、いつもお世話になっているパリ3区篠塚大シェフの店「Les Enfants Rouges」で過ごしました。
パンデミックの後は、テーブルと椅子を一新。2013年、内装もそのまま、気さくな親しみやすいビストロの雰囲気のお店を受け継いでいましたが、篠塚シェフならではの繊細かつ大胆な料理にふさわしい、ステージを一歩進めた過ごしやすさを考えた設えに変身していました。
料理にも一層の磨きがかかっていました。以前から、グルマンな美食家たちも唸らせる腕前でしたが、一皿一皿、細やかに仕上げられた料理の完成度には心から感激させられました。
ヴァンドーム広場のホテル・リッツで、長年料理長を務めていたミッシェル・ロットのお料理を思い出しました。皿作りにおいて。大きな皿にある1つの素材をメインに、付け合わせをいくつか添えるというのが、よく見るフレンチの皿作りで、もちろんミッシェルもそうした料理を出しますが、すべての素材にメインも脇役もなく、一つにまとめ上げるという皿作りにも長けていました。今でも忘れられないのが小アーティチョーク、オマール、フォアグラの組み合わせ。一口大に合わせて切ったアーティチョークとオマールをソースで絡めて和え、フォアグラの泡のソースをかけ、夏トリュフを削りかけたものを、スプーンでいただいたのでしたが、素材を別々に出すのではなく、全てを和え、絶妙な調味でバランスを整えた味わいに感激しました。きちんと一つ一つの素材が調理されていて、それを合わせたからこその美味しさというか。お皿に素材を並べただけではない、考え抜かれたハーモニーに、ミッシェルの料理に対する、素材に対する愛を感じたものでした。
篠塚シェフの料理にも同じようなエスプリを感じました。例えば「半熟卵とイカスミを和えた麦のリゾット、イカと豚の胸肉」の前菜。イカはマリネしたものをブイヨンと一緒に低温オーブンで長時間火入れをしてから、澱粉をはたいて揚げたもの。ほろほろと崩れるくらいの火通しの豚。黄身が透けて見える乳白色の半熟卵。さっとマリネをした薄切りのカリフラワー。全てを一緒に盛り付け、さまざまな素材が渾然としているのにも関わらず、ハーモニーを奏でていました。
メインの「キャラメリゼしたバスクの仔牛、黄ワインのソース、野生のキノコと鱒の卵、菊芋」、「スペイン産のマグロ、海藻のブイヨン、ブロッコリのベニエ、インゲンのサラダ」にしても、すべての皿作りが同じようなエスプリが流れていました。しかも、前菜、メイン、デザートとにも4〜5皿の提案があり、一つの素材をあちこちの皿に流用していない努力にも、頭が下がるばかりです。
サプライズのある料理というのは、青い鳥のように、新しい素材や技術、盛り付けを求めるところにあるのではないと改めて教えていただきました。皿の真ん中に堂々と盛り付けられた勇気ある料理。稀有な食卓に感謝したいです。
最後はたっぷりのラムを含ませたババ・オ・ラムを皆でつついて。
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