ズッキーニの天ぷら@LES ENFANTS DU MARCHÉ フランスの食関連ニュース 2021.08.04
今週のひとこと
コロナ水際対策のための、日本に入国してから、2週間の待機期間中にあり、自宅にこもっています。いずれにしましても、今回は両親との時間を取り戻すための帰国なので、めったにない時間を有り難く過ごす毎日です。このコロナ禍において、高齢の方々への負担の大きさを、両親を通して感じています。両親が住むマンションは45世帯が入居しており、その中で2世帯にて認知症者が出てしまったそうです。折悪しく、大規模修繕の時期にも当たってしまい、外壁塗装のためにシートをかけられ、ベランダからは作業の方が見えるなど、普通でもストレスフルな状況だったでしょうが、コロナ禍で外出も憚られる中、精神的な行き場がなくなってしまったのだと思います。社会的な活動のある間は良いですが、高齢者にとっての時間の流れ方とそうではない人との乖離は大きい。インターネット社会になった今、若者のテレビ離れは進んでいる。しかし高齢者はテレビ主流の生活であり、そうした場合の、テレビの番組の組み方は、一考に値するのではと思いました。コロナ禍の数字を追うばかりのニュース、目を覆うような事件ばかりのニュース。日本の平均年齢が50歳近くである今、誰に向けて発信しているかを見据えた番組づくりというのも考えていただければ、テレビの生き残りにも結びつくのではないかと思いました。開催いかんの問題は超え、オリンピックの放映はせめてもの救いとなっているのは事実だと感じています。メディアというのは、その有効性に味をしめたヒトラーはじめ、今までプロパガンダの1つとして利用されてきた。だからこそ、今の時代は人々の心や五感のケアのために働いていってほしいものだと思います。
自宅での自粛を守っているのはもちろん、日本の夏はあまりにも暑く、戸外での食事は厳しい毎日。パリ3区にある半分屋根付きの屋内市場「レ・ザンファン・ルージュ」内にはレストランや屋台がいくつかあって、帰国前に、日本人シェフが腕を振るう「レ・ザンファン・デュ・マルシェ」へ。屋台の楽しさ。そして、シェフの生田政英さんの天ぷらはなかなかの逸品。ブリア・サヴァランの名言に「料理人にはなれるが、焼肉師は生まれつきである」という言葉がありますが、素材への火通しに生まれつきの才を感じます。素材への火通しは、キッチンに立っている時だけではなく、素材選びから。細くて長いズッキーニは天ぷらに。ホクホクとして、確かにズッキーニのカボチャの仲間だ、ということを思い起こさせてくれる絶品でした。
『完本 大江戸料理帖』なども執筆された、今は暖簾を下ろした大塚「なべ家」主人、福田浩さんと下町で天ぷらをご一緒したことがありました。キッコーマンの広報をされている鈴木聖子さんからのご紹介で、三人でカウンターに座らせていただいたひとときがあり、今でも忘れられないのが、福田のしいたけへの一言。料理長は揚げたばかりのしいたけに、包丁を下ろして真ん中から切ろうとしたのですが、そこでひとこと。包丁を入れるな、そのままで出せ。せっかくの汁が失われてしまうではないか、と。せっかく素材に閉じ込められた旨味をたたえた水分。それを包丁に味わわせるのではなく、自分の歯で噛み、口の中で感じさせるべきではないか。包丁を入れれば美しいかもしれない。どうしたら美味しいかを惜しむことなく客人に与え続けてきた人だったのだなと、そのひとことで理解できました。彼の料理をいただいてみたかったと思った、何年か前の風情のある夏のひとときでした。
今週のトピックスは今週のひとことの後に掲載されています。ご笑覧ください。【A】カルフール、15分で宅配サービスをするスタートアップ企業と提携。【B】「カフェ・コンスタン」、コンスタン引退前夜3週間のみのディナー、代表的なメニューを提供。【C】ジェラール・ドパルデュー、シベリアにレストランをオープン。【D】EGALIM法、来年より施行される、給食に使用する素材の品質認証表示の義務化へ向けた協同組合d'Aucyの試み。【E】ペパーミントリキュールGET27シャーベット by 「POPTAILS by LAPP」。
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