フランスから、食関連ニュース 2020.07.15
今週のひとこと
昨日はパリ祭、革命記念日でした。今年は、コロナ禍のために、祝祭日という喜びを自粛した特別な日に。恒例のシャンゼリゼ大通りの大規模軍事パレードはなく、ロックダウン時に活躍した軍関係者のパレードをコンコルド広場を中心に行い、医療従事者を讃える式典になりました。夜に各地で繰り広げられる花火のイベントも、多くの都市で中止になり、バカンス前で、コロナ禍を忘却しそうになる国民たちに、未だ、厳戒態勢にあることを思い起こさせる機会にもなったのではないかと思います。しかし、パリではエッフェル塔、トロカデロ広場で行われる花火は中止にならず、その代わりに、シャン・ド・マルス広場は無観客に、テレビでの放映を宣伝していました。シャン・ド・マルス広場は無観客となったものの、どの位置から花火が美しく観ることができるかの情報は伝えられており、憲兵隊の監視下、セーヌ河沿いには人が溢れていました。私の自宅はエッフェル塔も近いために、毎年、たくさんの人が押し寄せ、近所に出るのが怖いくらいですが、今年は人出がセーヌ河沿いにかたよったせいか、毎年のような混雑はありませんでした。自転車で友人宅から戻ってきたタイミングで、人っ子ひとりいない裏通り、アパルトマンの間から、花火の音とともに打ち上がる花火は心を打つものでした。
自宅に戻ってきて、早速テレビ放映で、続きの花火の打ち上がる様子を見ようとテレビをつけました。エッフェル塔が前面に映され、素晴らしい映像や音楽による演出が背景の花火の打ち上がるきらびやかな様子が流されましたが、その少し前に裏通りから花火を眺めた時に感じた、あのわき上がるような感動は全くない。それどころか、どこか薄っぺらな仰々しさだけが目に飛び込んできました。
コロナ禍によるロックダウンという、我々の歴史の中で、一度も経験したことのない状況下に置かれ、ネットでのアクティビティが増えています。ネット上での様々な教室、対談、インタビューなど。ルーブル美術館も、スマホを動かせば、360度で展示物を観覧できるという3D映像を会員向けに配信していますが、そのリアルさには驚きます。ネットを利用することで、今までは考えても見なかったような、リアルな体験を仕掛けることができるようになった、それを生活の中に、ビジネスの中に当たり前にレイアウトしていく時代がきたのだなと感じます。例えば、ロックダウン中に実際に会うことのできない家族に、離れていても、スクリーン上で会話ができるという状況にあるということは、感動的でもありました。キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』で、宇宙飛行士と家族が会話をする、テレビ電話のシーンを見た時には、あり得ない未来だと思っていましたが。
南仏ヴァランス市の3つ星シェフの、アンヌ・ソフィ・ピックさんから、弊社DOMAに連絡が入りました。弊社の庖丁専門家マリナ・メニニが開催する、庖丁の研ぎ教室を昨年から体験したいと思っていたが、このロックダウンでなかなか実現しないでいる、是非Zoomで研ぎ教室を行ってくれないかという依頼でした。Zoomでの教室は今まで考えてもいなかったのですが、一つの手段かもしれないと、目を、扉を開かされた心持ちでした。手元に砥石が無いと行えないので、砥石を選んでピックさんにお届けし、これから日にちの設定となります。体験してから、どのように我々が感じるかということを大切にして未来に繋げたいと思いますが、同時に、Zoomはイニシエーションとしては良いツールかもしれないが、実際にアトリエに来ていただいて、感じる手応えというものは、先ほどにお話をした花火の体験のように、雲泥の差となるのではないかと予測しています。一足先に、我々DOMAもネット販売を始めましたが、それは可能性の一手段だが、それに頼ることはない、と今でも考えているのは、そのため。実際に庖丁を、道具を触っていただいた時にこそ、長年寄り添ってくれる、自分の手にしっくりとくる物をチョイスできる。ただ、リアルとヴァーチャルの差を感じていただくことも、無駄ではない。かえって、気づきにつながるだろうとも。我々にとっても、ピックさんとのzoom授業は、両者を知ることで生まれる次なる伝え方を、より深く考えることになる学びの機会となるのではと期待しています。体験後に、またお伝えできたらと思います。
捨てないでいた今年2月の新聞がたまたま出てきました。アジアで起きているコロナ禍を「ヨーロッパにそれが飛び火することは薄い、しかし、慎重であらねばならない」と対岸の火事のように扱っていました。今、考えていることなど未来では通用しない、ということの典型的な例を突きつけられた思いでした。
今週のトピックス【A】1つ星『エチュード』山岸啓介氏、夏限定でシネアクア内『Taïsho』の料理長に。【B】フランス料理継承機関『コレージュ・キュリネール・ドゥ・フランス』、ウェブで推奨店紹介。【C】レストラン予約サイトLa Fourchette、レストラン支援ツール搭載。【D】人気ブラジル人女性料理人アレッサンドラ・モンターニュ氏、この秋、新店を移転オープン。
今週のトピックス
【A】1つ星『エチュード』山岸啓介氏、夏限定でシネアクア内『Taïsho』の料理長に。
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