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フランスから、食関連ニュース 2020.03.10

フランスにおける旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。

1. 今週の一言

コロナウィルスが世界を恐怖に陥れています。ヨーロッパでは、ここ最近まで「対岸の火事」ほどにとらえていた向きがありましたが、イタリアを始め、ここ隣国フランスでも、それどころではない状況になってきました。経済への影響も甚大で、黄色いベスト運動、年金改革に対するストライキに続き、コロナショックが社会を襲い、レストラン関係者も悲鳴をあげています。

毎朝カフェでひと仕事するのを日課にしているのですが、今週は月曜日に入ってから、カフェに訪れる客も極端に目減りしていますし、そうかと思えば、カフェの従業員がただならぬ咳をしていたりもし、パリがイタリアのように閉鎖されない前から、さまざまな行動範囲をさらに自粛した方がいいのではないかと思う今日この頃です。フランスでは政府から、手洗いの徹底に加えて、握手も挨拶のキスもするな、マスクはない場合は肘で抑えろ、などのお達しが出ていますが、挨拶のキスを習慣としているラテンの人々の皆が皆、咄嗟に守れる訳もなく、肘でクシャミを何度も抑えている人を見れば、あの肘の汚れをいつ洗うのだろうかなどと、公衆衛生に対する意識の違いを今更ながら感じさせられてしまいます。

先週、フランス外務省で4月16日に開催される第6回「Goût de France」のプレス発表会がありました。「グード・フランス」とはフランス語「Goût de France(フランスの味覚)」と英語「Good France」を掛け合わせた造語。フランス外務・国際開発省と料理界の巨匠アラン・デュカスの提唱で始まったイベントです。ユネスコ無形文化遺産に登録された「フランスのガストロノミー(美食術)」を世界各国で祝い、フランス式ディナーを楽しむ日として設定しました。この日を通じて、フランスのガストロノミーで世界を繋ぐだけでなく、食を通して、世界の環境や文化の未来を考えようという機会にもなっているのです。今年は、フランスのガストロノミーがユネスコ無形文化遺産に登録されて10年という記念すべき年。昨年は南仏料理を「Goût de France」のアンバサダーとしていましたが、今年はロワール地方に。プレス発表会では、外務大臣秘書官のジャン・パティスト・ルモワーヌをはじめ、アラン・デュカス氏はもちろん、エリゼ宮料理長のギヨーム・ゴメス氏、今年のスポークスマンとなるロワール地方の二つ星であるクリストフ・エイ氏など、多くの要人やトップシェフが参加していました。4月16日には、世界156ヶ国の数千のレストランのそれぞれが、食の未来を考えるメニューを、自分の店でお客に提案する日となりますが、それとは同時にシャンゼリゼ大通りの一角で、ロワール地方をテーマにした200名のディナー会が開催される予定。昨日、政府から、コロナウィルス 対策のため、国レベルで1000人以上が集まる会合を禁止するとの発表がありましたが、その期限は4月15日まで。スタッフも加えると1000人近くの集まりが予想されるディナーも、その期限もギリギリの設定となり、食の国力に重きを置く、国の思惑とも交差するようです。また、6月3日には、「Goût de France」傘下で、今年初めてのフード・フォーラムが開催されます。レストランの現場からサステナビリティを考えるというもの。

先日、フランスのある地方でのレストランでのことです。ディナーに訪れていたカップルが急に気分が悪くなり帰っていったのをオーナーの娘が不可思議に思い調査したところ、その後、病院に運ばれて、コロナウィルス に感染していたことが発覚。その店は夫婦が経営する店で、奥様の方がサービスに出ていた。しかし奥様は心臓に問題を抱えていたので、キッチンに立っていたご主人は、奥様を大病院の救急に、自分は地元の病院で診断を仰いで検査。結果は陰性でした。それと同時にご主人は、そのディナーにいらしていたすべてのお客に電話して事情を伝え、検査をすすめるとともに、店を一定期間休業することに決めたそうです。こうした時だからこそ、個人がどんな判断をして、誠実に行動するか。サステナビリティとは、難しいことだけでもなく、一つ一つの誠実な対処こそがそれに繋がるのではないかと思いました。

2. 今週のトピックス【A】アラン・デュカス、ゼロウェイトレストランをオープン?【B】公式のナチュラルワインラベル誕生。【C】三つ星シェフ、マオロ・コアグレコ、マントン市長選に出馬?【D】ブランジュリー「ルドルフ・ランドゥメンヌ」、エシカル・ベジをコンセプトにした新店を開始。3. 今週の日本@フランス【A】ROBATAもフランス語に。

2. 今週のトピックス

【A】アラン・デュカス、ゼロウェイトレストランをオープン?

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