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@ヴェルサイユ庭園 フランスの食関連ニュース 2021.07.21
今週のひとこと
ヴェルサイユ宮殿の敷地内、宮殿への通路も備えた歴史的建造物が、客室14室を備える5つ星ホテル・スパ「ル・グラン・コントロール」に生まれ変わって6月1日にオープンしたことは、ちょっとした話題になっていました。最近ラデュレも買収したグループとアラン・デュカス・グループが組んで、なんともラグジュアリーな18世紀を再現したしつらえと雰囲気に。食卓のサービス係も、18世紀の装いで登場。宿泊客には、アレクサンドランで会話をしたり、ドアはノックするのではなく、引っ掻くように音を立てるなど、当時のプロトコールを守ったサービスをしているというのですから、驚きです。直接ヴェルサイユ宮殿の庭園にアクセスできるので、庭園の散歩を楽しんできましたが、豊かな水場には驚くばかり。ルイ14世が莫大な費用と歳月をかけて実現した、フランス絶対王政の象徴的な宮殿と敷地。水なき地に水を引いて、あらゆる噴水や池を可能にした、その水場には宮殿以上に労力を費やしたことでも知られており、いまでも憩いの場であるだけでなく、造形的に作り上げたあらゆる噴水の形からは、絶対的な富の力が、当時はどんなに大きかっただろうと想像します。
豊かな水に囲まれるということは、なんて贅沢なこと。水の豊かな日本ではあまり意識してきませんでしたが、乾いたフランスの土地に住むと、ありがたさを感じます。「ル・グラン・コントロール」のレストランのテラスでは、噴水があちこちに取り付けられており、水の流れを感じながらの食事も贅沢ですが、水が豊富にないからこその演出で、日本のししおどしとは対照的です。ししおどしは、もともとは鳥獣を追い払う農具だったそうですから、狩猟を愛する王族たちには不向きでしょうか。
2050年には世界中の少なくとも40%を超える人々の間で、水に関するストレスが高まるといわれている現代。世界の水ビジネス企業のうち、世界1、2位を占めていたのは、フランスの企業ヴェオリア、スエズだったというのは驚きでしたが、さらに先の5月に、前者が後者を飲み込み合併。ヴェオリアが、世界的に圧倒的な力を握ったというのは、水に対するフランスの執着も感じさせられます。水道事業を進めるためナポレオン3世の勅令で設立されたという歴史を持つヴェオリアは、上下水道事業、廃棄物、エネルギー管理と3本柱で取り組んでおり、世界の産業が抱える環境課題解決を目指すという意向。また、もちろんヴェオリアは世界最大の企業となりましたが、主要な水ビジネス企業20社のうち、中国企業が半分以上を占めているという現状で、欧州の立ち位置を示した合併でもあったようです。SDGsの17つの目標の1つに「安全な水とトイレを世界中に」が掲げられていますが、こうした企業がどこまで貢献できるのか。水をめぐる争いは、今後の地球の未来を左右していくでしょう。
今週のトピックスは今週のひとことの後に掲載されています。ご笑覧ください。【A】Caviar House & Prunier Group、 ボートのAirbnbで成功したOlma Luxury Holdingsが買収。【B】チーズメーカー「Bel グループ」、ビーガンライン開始。【C】ラングドック地方20のワイナリー、オンラインプラットフォーム誕生。【D】ポルトガルに地中のホテルが登場。
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