BTS【花様年華】⑫新たな不幸と救済の代償
お互いに助け合うことで、また一緒にあの海に行くことが出来たyear22.05.22からの約3ヶ月間、7人はそれぞれに出会いや別れを経験し、徐々に自分自身と向き合えるようになっていきました。
しかし、疎遠だった7人がホソクの呼びかけによって久しぶりに集まることになっていたyear22.08.30の花火大会の日、ソクジンが想いを伝えようとしていた女性が目の前で事故に遭ってしまったことで、終わったと思っていたタイムリープが再び起きてしまいます。
ソクジンは彼女を失うことになった事故を防ぐため、year22.04.11からの約4ヶ月半の出来事を一つひとつやり直していくこととなります。
これまでに何度も何度も繰り返し経験して来たように、ソクジンが6人の身に降りかかる不幸を防いでyear22.08.30へと向かっていく中で、テヒョンが見続けている悪夢とナムジュンの身の回りに、今までのタイムリープでは起こらなかったとある出来事が起こり始めます。
これまでのタイムリープの中でテヒョンが見ていた悪夢の内容は、どれもソクジンが書き変えた”本当の現実”で起こった出来事でした。
しかし今回のタイムリープが起こる直前、テヒョンは実際にはまだ起こっていない、ソクジンが想いを寄せている女性の事故を暗示する予知夢のような悪夢を見ています。
そしてその事故が実際に起き、ソクジンが再びyear22.04.11に目を覚ましたこの日、テヒョンはコンテナ街で火災が起き、その火災によってナムジュンが命を落としてしまう、実際にはまだ起こっていない出来事の悪夢に魘されていました。
テヒョンが不穏な悪夢に魘され続ける一方で、田舎に家族を置いて単身でソンジュの街へ戻り、コンテナ街で過ごし始めて数ヶ月が経ったナムジュンは、時折コンテナ街でひとりで過ごす幼い男の子の姿を見かけるようになりました。
その男の子は常に薄汚れた同じ服を着ていて、一目見るだけで彼を気に掛けてくれる大人がいないことが明らかでした。そんな彼を気にしながらも、家族や友人の心配はおろか、自分自身の生活自体でいっぱいいっぱいになっていたナムジュンは、いつも見て見ぬふりをして通り過ぎます。
ある日、ナムジュンがガソリンスタンドでのバイトを終えて深夜に帰宅すると、薄明りの灯るコンテナ街の暗がりにうずくまる男の子を見かけます。時刻はすでに23時を過ぎていて、自分がこのままコンテナへ入ってしまえば、幼い彼がどうやって夜を明かすのかを想像するのは簡単でした。
ナムジュンは、自分のコンテナにはもう残り一つの即席ラーメンしか食材がないことを覚えていましたが、この日だけはどうしても彼を無視して通り過ぎることが出来ず、初めて声を掛けます。
そして7人はかつて辿った出来事と同じように、ソクジンに救済されながら、それぞれに新たな出会いと別れを経験していきます。
前回のタイムリープのきっかけとなった彼女の事故が起こった花火大会の日、これまでに幾度となく複雑な6人の不幸な出来事を回避してきたソクジンにとって、単に外的な要因が重なって偶然起こっただけの彼女の事故を未然に防ぐことは容易く、その要因のひとつを取り除くことで、簡単にタイムリープを回避することが出来ました。
year22.08.30のタイムリープを難なく回避した後も、テヒョンが予知夢のような悪夢に魘され、ナムジュンがコンテナ街でウチャンと過ごすようになったこと以外、これまでと何ら変わりない日々が続いていきました。
そんな中、ソクジンはジョングクの退院パーティを欠席したyear22.07.24に半強制的に参加させられた会議で話し合われていた、ソクジンの父親が主導するソンジュの街の再開発事業に携わるようになります。
ある日、ソクジンは父親の書斎に置かれたままにされていた再開発事業の計画書の中に、とあるリスト見つけます。
そのリストには〈撤去開始予定日〉という文字と共に、撤去地域に含まれるコンテナ街で生活をしている人々の名前が並んでいて、もちろんナムジュンの名前もありました。
そして、計画書に記されたコンテナ街の強制撤去の実行日は、ソクジンがこのリストを見つけたまさにその日でした。
再び予期せぬタイムリープによってyear22.04.11へと戻されたソクジンがようやく辿り着いた2度目のyear22.09.30、ソクジンがコンテナ街に駆け付けると、そこには炎に包まれたコンテナと逃げ惑う人々、暴徒と化した人々で溢れ、まるで地獄のような光景が広がっていました。
そしてコンテナを焼き払う黒尽くめの男たちの帽子には、ソクジンが会議の席で目にしたマークがありました。
その後、ソクジンが何度タイムリープを繰り返しても、コンテナ街の火災を防ぐことは出来ず、コンテナ街の火災が起こるたび、ソクジンは何度も何度も目の前でナムジュンの死を目撃し続けました。
ソクジンは、繰り返し起こる意図しないタイムリープによって何度もyear22.04.11に戻ってしまうことに加え、自分の父親が主導しソクジン自身も関わっている再開発事業の犠牲となったナムジュンの死を何度も目の当たりにしたことで、ひどく憔悴していました。
それでもコンテナ街の火災を防ぐことは出来ず、ソクジンはその後も何度もタイムリープを繰り返します。
失意のどん底に堕ちたソクジンは、かつてタイムリープの力を授かったあの海を訪れます。
このままナムジュンを救うことは出来ず、永遠にタイムリープをし続けるのか。絶望に打ち拉がれて涙を流すソクジンに、どこからともなくまたあの不思議な声が聞こえます。
ソクジンの前に姿を現したのは、初めて訪れたyear22.05.22に、ソクジンにタイムリープの力を与えたあの”猫”の姿をした不思議な生き物でした。ソクジンは、藁にも縋るような想いでナムジュンを救済する方法を尋ねます。
「”魂の地図”を探せ。そうすれば全てを終わらせることができる」
”魂の地図”という聞き慣れない言葉に困惑するソクジンに、”猫”は続けてこう言い放ちます。
「手がかりを与えてやったから、その代償を払わなければならない」
”猫”の言う代償とは、タイムリープを終わらせるために必要な”魂の地図”の存在を知ることと引き換えに、幸せな記憶を失うことでした。
そしてその代償として奪われた、ソクジンにとっての幸せな記憶とは、7人がいつも一緒に笑い合って過ごした、あの大切な【花様年華】の記憶だったのです。
これまで、どんな状況であっても絶えずソクジンを突き動かしてきた「また7人が一緒に笑い合って過ごす」「一緒なら笑うことが出来る」という強い想いは、幸せな【花様年華】の記憶があるからこそ生まれるものでした。
原動力である【花様年華】の記憶そのものを奪われてしまったソクジンにとって、この後のタイムリープで6人に起こる不幸な出来事は、単に”タイムリープのトリガー(きっかけ)”として認識されるようになります。
この”猫”との再会をきっかけに、ソクジンの全ての行動の目的が「みんなを救って幸せになる」ことから「タイムリープを終わらせる」ことへと変化してしまうのです。
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7人で笑って過ごした幸せな【花様年華】の記憶を失ったまま、再びyear22.04.11に戻ってきたソクジンは、「タイムリープを終わらせる」ため、感情を捨て、とにかく効率よく出来事を修正していくようになります。
〈次回〉
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