BTS【花様年華】⑧互いに助け合う7人
やっとの思いで迎えたyear22.05.22に起きたテヒョンの予想外の行動で、ソクジンはまたしても振り出しに戻ってしまいました。
カーテンの間から差し込む光で目を覚ましたソクジンは、展望台の上にひとりで立つテヒョンの姿を思い出します。テヒョンが展望台から飛び降りたのは、ソクジンが漸く辿り着いた長い長い旅の終わりの、全てが解決されたと思ったその瞬間の出来事でした。
次に訪れたyear22.04.11では、どういうわけかこれまでと状況が大きく変わっていました。
ホソクから、ナムジュンのコンテナに行く予定があると連絡を受けたユンギは、全く乗り気ではありませんでしたが、ふと7人でいた日々を懐かしんでいたジョングクを思い出してコンテナに行ってみるかと誘いました。
ホソクがツースターバーガーで食事を用意してコンテナへ向かうと、すぐにユンギとその少し後ろを歩くジョングクが揃ってやってきました。誘ってみたものの本当に来るとは思っていなかったホソクは大げさに喜び、照れくさそうに笑うジョングクに抱き着きます。
その後、ナムジュンが警察に捕まっていたテヒョンを引き取ってコンテナへ帰ってきて、5人は久しぶりに再会したのです。
偶然にも、本当の現実で起きていたジョングクの転落事故は、4人がこれまでとは違う行動をとったことで回避することが出来ました。
警察から逃げて破れたTシャツを着替えるテヒョンの背中に大きな痣があることに気が付いたホソクは、息を呑んでナムジュンを見上げますが、ナムジュンはテヒョンがグラフィティをして警察に追いかけられた話をして話題を逸らしました。
そんな様子を見ていたユンギは、【花様年華】の時代を過ごした空き教室のアジトを思い出し、ソクジンとジミンは今頃何をしているのかと思いを馳せていました。そんな自分を自分らしくないと感じながら、初めて来る場所なのに不思議と心が楽になっていることに気が付きます。
そしてコンテナの外には、そんな5人を眺めるソクジンの姿がありました。
ソクジンはタイムリープのたびに日付や場所の変わるユンギの焼身自殺に細心の注意を払っていて、この日もいつでも中に飛び込めるように作業室の扉を少し開けてユンギの様子を伺っていました。ユンギが床に灯油をまき、今にも火をつけようとしたその時、窓の外から小さな鳥が迷い込みガラスに衝突して墜落しました。それを見ていたユンギは、ふとライターをいじる手を止め、その場に座り込みます。
その日の夜、ソクジンがユンギの立ち去った作業室に忍び込むと、羽から血を流して怯える小さな鳥の前に、少しの水とパン屑が置かれていました。怪我を負って飛んで逃げることも出来ず、ユンギに生死を預けることになった小さな命によって、ユンギは自殺を思い留まったのです。
ソクジンはこの一連の出来事をみて、ユンギの自殺衝動の原因の全てがユンギの内側に存在するものであるなら、そのうちの何か一つを外に引き出すことが出来れば、問題を先送りにすることなく根本的な解決が叶うのではと考えます。
そして、本当の意味で全員を救済するには、自分ひとりが全てを変えていくのではなく、それぞれの行動を少しずつ変えて助け合わせることが大事だと気が付いたソクジンは、今度はユンギの焼身自殺をジョングクが、ホソクとジミンがお互いを救い合うように計画を立てます。
両親によって精神科に強制入院させられているジミンは、無理に扉を抉じ開けて外に出ようとする同室の患者と揉め事を起こし、一時的に外科病棟へと病床を移されていました。
そして同じ時期、テヒョンはまた悪夢に悩まされていました。ナムジュンのコンテナで魘されながら夜を明かし、「夢にみた光景が現実で、今が夢なのではないかとさえ感じる」とその余りにも生々しい悪夢の内容を打ち明けます。
ジョングクを誘導してユンギの焼身自殺を防ぐことは、一筋縄ではいきませんでした。ジョングクを苦悩するユンギと向き合わせることは、その分ジョングクを必要以上に傷付けてしまうことでもあり、時にはジョングクがユンギを見限り、それがきっかけでユンギが焼身自殺をしてしまうこともありました。
何度目かのタイムリープを経て、再びユンギが焼身自殺を起こそうと作業室に籠っていたその日も、ジョングクはソクジンの誘導によってユンギの元を訪れていました。そして二人は口論になり、ユンギは作業室を飛び出します。ここでジョングクがユンギを追いかけなければ、またユンギを救済することが出来ずにタイムリープが起きてしまう。作業室の外では、ソクジンが祈るような思いで二人を見守っていました。
ソクジンの想いが届いたのか、しばらくしてユンギを探そうと作業室から出てきたジョングクを、今度はユンギが逃げ込んだモーテルに辿りつけるように誘導しました。
モーテルに入り、燃え盛る炎の中にいるユンギをみたジョングクは「僕たち、また一緒に海に行こうって約束したじゃないですか」と泣き叫びながら、ユンギの身体を引き摺り出して病院へと運びました。
その夜、ジョングクはふらつく足でナムジュンのコンテナへ向かい、散らばった洋服をかき集めて眠りました。
熱にうなされて目を覚ましたジョングクは、優しく頭をなでるナムジュンに「僕は兄さんみたいな大人になれると思いますか?」と問いかけます。家族を捨て、テヒョンのことも見てみぬふりしている自分に罪の意識があるナムジュンは、何も答えることが出来ませんでした。
こうしてユンギの焼身自殺を食い止めることに成功しました。
その1週間後、ホソクは親代わりになって自分を育ててくれた養護施設の先生が病気になり、助かる見込みのないことを知ったショックで大量の睡眠薬を服用しました。そしてそのまま街をふらつき、橋の上で倒れて病院へ搬送されます。
目を覚ますと、隣のベッドには一時的に外科病棟に移されていたジミンがいました。
ホソクが橋の上で倒れることを知っていてあえて行動しなかったソクジンは、ホソクとジミンがお互いに助け合ってくれると信じて、静かに病院の窓を見上げていました。
翌日、ホソクは非常階段で母親によく似た後ろ姿を見つけて咄嗟に追いかけます。階段から足を踏み外して転倒しそうになったとき、偶然通りかかったジミンがホソクの手を引いて事なきを得ました。
過去のトラウマに縛られているジミンのように、自分もまたいなくなった母親の存在に固執しているのだと気が付いたホソクは、一緒に病院を出ようとジミンに提案します。ジミンはすぐには答えを出すことが出来ず、ホソクは「迎えに来る」とだけ伝えて退院しました。
その3日後の深夜、病室で眠っているジミンがかすかな物音で目を覚ますと、ベッドの脇には退院したはずのホソクが立っていました。ホソクは驚くジミンに手を差し出し、小声で「みんな一緒に来たよ」と伝えると、迷って動き出せないジミンの手を強く握り、決して離しませんでした。
談話室に集まった他の5人は、ソクジンとナムジュンが辺りを見張りながら時間を稼いでいました。テヒョンとジョングクがエレベーターを呼ぶと、ホソクに急かされたジミンがやってきて、ユンギは怪しむ看護師に誕生日会だと嘘を吐きました。
「大丈夫だ、ジミン。走れ!」
ホソクのその言葉を合図に7人は一斉に走り出します。これまで何度も出て行くことを想像した非常口に続く廊下で病院着を脱ぎ捨て、ホソクに手渡されたシャツに着替えたジミンは、自らの手でその扉を開けたのです。
病院から抜け出した7人は、そのままナムジュンのコンテナで夜を明かし、ジミンの退院パーティをして再会を祝いました。
両親の元へ帰ることが出来ないジミンは、ホソクがひとりで暮らすアパートに身を寄せることになり、アパートの窓からソンジュの街を眺めます。
ホソクは勇気を出して大きな一歩を踏み出したジミンに、自分の抱える本当の病気がナルコレプシーではなくミュンヒハウゼン症候群であることを打ち明けました。
この頃、テヒョンはソクジンがタイムリープを繰り返しているという事実にこそ辿り着かないものの、ソクジンのどこか自分たちを誘導するような行動や既視感のある光景が、自分を苦しめている悪夢と少なからず関係があることを疑い、ソクジンに本当のことを話して欲しいと思っていました。
ソクジンの部屋を訪ねたテヒョンは悪夢の内容を話し、「兄さんも分かっていますよね?」と問い詰めます。
2年ぶりに病院の外へ出たジミンは、何も覚えていないと嘘を吐き続け、隠れるように暮らしていた自分を変えるため、過去の記憶と向き合わなければいけないと感じていました。
バス停に行き、プルコッ樹木園行きのシャトルバスに乗り込むことが出来ないまま3本のバスを見送った頃、ユンギが寄り添うようにジミンの隣に腰掛けました。
「やることがなくて退屈だから」ユンギはそう言って、世の中に対して何も心配事がないかのように意味のない雑談を続け、次のバスがやってきてドアが開くと、ジミンはユンギに「一緒に来てくれますか?」と尋ねました。
同じ日、テヒョンはまたグラフィティをして警察に捕まり、取り調べを受けていました。
釈放されたテヒョンを、今度はソクジンではなくホソクが警察署まで迎えに行きました。ホソクはかつてコンテナでテヒョンの身体の痣を見たとき、誰も何も言ってあげられなかったことを思い出し、自分ですらこんなにも沈んだ気持ちでいるのに、テヒョンの心は一体どれだけ傷付いているのだろうと胸が圧し潰されるような思いを感じていました。
「ひとりで大丈夫です」と笑顔を見せるテヒョンは誰がどう見ても大丈夫ではありませんでしたが、それを認めることは、テヒョンにとって強がることよりももっと酷なことであると理解していたホソクは、黙ってアパートの薄暗い廊下を歩いていくテヒョンを見送りました。
テヒョンと別れてすぐ、ホソクの携帯にソクジンから「みんなで海に行こう」と連絡がありました。そして、テヒョンの家まで行って直接テヒョンを海へ誘うようにと頼まれたのです。
ホソクがテヒョンの元へ戻ると、空の酒瓶を手に取り、今まさに父親に飛び掛かろうとしているテヒョンの姿がありました。
こうして初めて、テヒョンが起こす事件を食い止めることに成功しました。
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次回の記事では、漸く全員を救済したソクジンが再び7人であの思い出の海に行った日に起きた出来事を整理します。
〈次回〉
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