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日本の未来を憂う②〜見知らぬ人達とおじいさんを保護した編〜
我が家の3歳児のピックアップのため保育園に向かっていたある日の夕方、道の端を進んでいるのか進んでいないのか、よくわからないほどのペースでよたよたと歩いているおじいさんを見かけた。右手に杖、左手にはなぜか子供用の傘。え、子供用?なぜ?と思ったけど、それよりも何よりもそのおじいさん、プルプルしながら壁にそって牛歩してた。スーツを着ておめかしされていた。
大丈夫かなあ?気になったけど、一旦そのまま保育園に向かった。その日の朝はハロウィンだったのに仮装させるのをすっかり忘れて登園させてしまい、同じような境遇のお友達数名と「一般人っぽい人」という仮装を楽しんだ我が子。先生にお詫びの旨を伝えたら、「大丈夫ですよー!たー坊くん、仮装したみんなとお散歩に行き、公園に着いた頃にはお面も帽子も靴も靴下も何も着てませんでしたからー!」とケラケラ。先生のざっくりな対応にほんと心救われる、ありがたい。しみじみ思いながら、自転車に装着した我が息子をみると、彼は右手を宙に掲げてスラスラと鉛筆で描くジェスチャー。そうだ、今日火曜日は彼が大好きな公文の日。
クモン行こっか!と声をかけたらにんまり笑顔の我が子。その瞬間、思い出した。先ほどのおじいさん、大丈夫だったかな。何となく気になったので、まあ、無事にいなければそれはそれでいい、ときた道を戻ってクモンに行くことに。
そしたら何とほぼほぼ同じところに同じおじいさんを発見。しかもよく見たらさっきよりも全身プルプル震えているご様子。20分近く経過してこれはまずいでしょ。おじいさんの先には壁の終わりと十字路の交差点。時間は18:30ですでに真っ暗。万が一にもひかれたりしてしまっては大変。思わず声をかけてしまった。
でも、おじいさんは無反応。あ、余計なお世話かな、あまり声かけない方が良いかな・・と思ったけど、とにかくプルプルしてたから、勇気を振り絞って「大丈夫ですか?何かお困りですか?」と肩をトントンして顔を覗き込んでみた。
おじいさん、耳が遠いみたいであまり会話にならなかったけど。でも、どうやら出かけて帰ろうとしたら急にしんどくなってしまい家に戻れなくなってしまったとのこと。お家がどこか聞いたら左前方を指差してこの5軒先くらい、と。おぶってあげたいけど自転車もあるし、何より自転車にはたー坊先生が。かといって歩けない彼を1人にできないし。おじいさんに「後ろに乗せてくれませんか?」と言わたけど、これ自転車なんだよね、無理だよね。。「無理ですよね」と言われた私も途方に暮れてふと顔を上げた先に目に入ったのが床屋さんだった。ここだ!反射的に飛び込んだ。
「すみません!そこでおじいさんが辛そうで困っていて、私1人じゃ助けられないので助けてもらえませんか?」と。
でも、中から出てきたのは想定外におばあちゃんだった。しかも、「ちょっと待ってね、私もリュウマチですぐ動けないのよ」って。
床屋さんって勝手にガハハ的なおじさんがいるイメージだった。何度もひたあやまりしつつ事情を伝えるも、おばあちゃんだって何もできない。
なので、おばあちゃんにはたー坊先生が乗った自転車を見てもらいながら、私は私で困り果てすぎて、思わず目の前を通った車を慌てて呼び止めた。完全無意識。人は必死になると自分が想像しないことすらやってのけるらしい。
若い女性の運転手さんが止まってくれて、「どうしました?」と窓を開けてくれた。「おじいさんが倒れそうになっているから助けたいんだけど、私だけでは助けられず、一緒に助けてもらえませんか?」と大声で伝えたらすぐ路肩に車を停めて出てきてくれたお姉さん。よくみたら車には「リハビリセンター〇〇」の文字が。なんと!業界のプロの方でしたか!
お姉さんのおじいさんへの声の掛け方ややりとりが本当に素敵だった。半ば強引に「7軒先らしいので車に乗せてもらえませんか?」と私が押し切るとお姉さんは困惑しながらも「いいですよ、あなたも一緒に乗ってくれますか?」と。
なので、おじいさんを車に乗せて、シートベルトを締め、リュウマチのおばあちゃんのところに戻り、たー坊先生だけピックアップして自転車は一旦置かせていただくことに。「うちも19時でしまっちゃうのよねぇ・・」というブツブツは聞こえなかったことにして、助手席にたー坊先生を抱っこして飛び乗った。「シートベルト、閉めてね」と冷静なお姉さんの的確な指示の元、無事に関係者が車に乗り込んだ。誰もお互いを知らないという実に不思議な空間。安心したのか寝そうになるおじいさんとよくわからない子持ち女性に若手敏腕介護士さん。知らない人が見たらさぞ奇妙な光景だったに違いない。
おじいさんのお家を探すこと3分。おじいさんの的確な指示のもと無事にご自宅に到着。お姉さんがピンポンをしてくれておじさんを下ろしていると、中から年配の女性が出てこられた。何か独特な雰囲気でしかもめちゃくちゃ怪訝そうな顔をしているではないですか。
そりゃそうだよなあ、いきなり自分の家族が加入した覚えのないデイサービスの車から降りてきて、なぜか横には子供を抱っこしたよくわからない女性までいるなんて驚くのも無理はない。でもこの後驚愕したのはむしろ私たちの方だった。
その年配女性、怪訝な顔して「何でしょうか?」と聞くので、事情を説明し、引き渡そうとした瞬間。
「おいくらですか?」
えっ。。お姉さんが慌てて「いや、通りかかっただけなので、お金はもらえません。」と何度も念押ししていた。
そして傍らでは、家の中に入ろうと急にシャキーンとした不思議なおじいさん。真っ暗に日が暮れても帰ってこないおじいさんを心配する風でもなく、中に入ろうとするおじいさんを労るでも手を差し伸べるでもなく、ただただ無表情でたたずむおばあさん。
何かとてつもなく悲しい来たる日本の未来を垣間見た気がした。
何とも言えぬ心地のまま、20分遅刻でクモンに辿り着いた我が家のダウン症児。いつも自我の塊でキーキーいう彼だが、本当に心底肝心な時は借りてきた猫みたいに超絶おとなしく気配を消してくれる息子に心から感謝だ。そして、彼が生きていくであろう未来を前に何だか複雑な気持ちになった。
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