見出し画像

熊野三山と伊勢詣歩き旅 3日目

前回からの続きです。


旅の朝はいつも早い。
6:20 川湯温泉を出発しました。

しんと冷えたキャンプ場の夜明け、遠くの光があたたかそう。よい雰囲気


前日の道迷いをふまえて、この日は古道にこだわらず、徒歩で熊野三社をめぐることを第一に計画を立て直しました。
(自分を甘やかしたとも言う)

熊野川と並走する国道沿いに出て、まずは熊野速玉大社を目指します。

本日のゴール、那智までは56kmかあ
和歌山県田辺市本宮町の鳥はオオルリらしい。かわいい橋


単調にも思える舗装路の一本道が30km以上続きますが、美しい熊野川がすぐ隣を流れる景観はいくら見ても飽きることがありません。

隙間から差し込む光がいい

素晴らしい朝の空気を堪能しました。なんて贅沢なんだろう。

歩道があるのは基本的に序盤のみで、温泉街から離れるとともになくなりました。ただ、交通量は少ないです。

前日までに無駄に食べすぎた懺悔も込めて、このときは固形物を摂らずにキロ8分前後までペースを上げて歩きました。
(やはり、ある程度ペースを上げると歩くことに集中できて気持ちいいですね。大晦日を控えた、カロリーと煩悩を滅する懺悔ウォークと名づけました。)

進行方向が同じ新宮駅行きのバスに何度も抜かれたり、途中で心配して?新宮まで送ってくれようとしたトラックのおじさんとの出会いがあったりもしつつ。
それでも、歩いて行くことに意味があるわけなので。

道の駅その1
道の駅その2

前日は自然のなかで内省の沼に潜りましたが、多少なりとも神経を尖らせて歩く必要のある山中よりも、安全な単調コースのほうが気兼ねなく没入できますね。

前者ではただ目の前にあるものだけに全神経を注いで、五感が鋭敏になっているからこそ得られる気づきがある。
(マインドフルネス的な、いわゆる「今ここ」に集中するとは、”現実”や”身体”に目を向けて思考から解き放たれることである、と言います。)
後者は、反対に、感覚をシャットアウトして”思考”に集中することも可能。

どちらの状況も内省に適したものではありますが、体感できる効果はだいぶ変わってくるのかな、などと。

・・・話が逸れました。

約35km歩き、『熊野速玉大社』に到着しました。

本宮とは異なる、あざやかな朱塗りの社殿が目を引きます。
こちらは山奥ではなく市街地に位置することもあり、参拝者の雰囲気もまた違った印象。

雄大な熊野川を背にして鎮座する熊野速玉大社は、
水の動きを神格化したとされる熊野速玉大神と熊野夫須美大神の夫婦神を主祭神とし、十二柱の神々が祀られています。


熊野三山でしか購入できない熊野名物『もうで餅』に心惹かれつつも(熊野本宮大社では、茶屋の営業時間に間に合わなかった)、5個入でひとりで食べるには少し多い。
ということで、ひとまず、川原家横丁の100%せとかジュースでエネルギーチャージします。

日本酒の『熊野三山』もずっと気になり続けていた(未購入)


ここから先も、熊野那智大社が鎮座する那智山付近までは海沿いの平坦な舗装路を歩いていきます。
歩行ペースはもう頑張りません。


雄大な熊野灘を望み、古道らしさ感じる石畳を歩ける『高野坂』は登らずに先を急ぎましたが、歩けばよかったなあ。

手作り感溢れる看板もある、かわいい
無人販売所は魅力的かつ安いですが、持ち歩くには多いかな…
道の駅 その3


那智山に至るまでの間も古道を通らず、舗装路の坂を登りました。

大門坂』の碑があります。

素通りしてそのまま舗装路を直進していくと、いつの間にか那智山に。
そして、大門坂の入り口が現れました。

老杉に囲まれた全長約500m、高低差約100mの石畳道に迎え入れられます。この大門坂から熊野那智大社へ向かう道は古道の面影を色濃く残した人気コースとのことですが、これまで訪れた場所とはガラッと変わり、神秘的な空気が漂っています。

私は霊的なものはよくわかりませんが、どことなく、取り巻く空気の質の違い(重み?)を感じました。ああ、聖域に足を踏み入れたのだなと。


サクサク登るには少し急な石畳を抜けると、表参道へと出ます。

看板の手作り感、好き

さらに467段の石段を上っていくと、『熊野那智大社』の鳥居が現れました。
こちらも美しい朱塗りで、自然に囲まれてより一層その色味が引き立っています。

熊野那智大社は、那智山の中腹・標高約500mの地点にあり、周囲の山々と眼下に見下ろす集落を含めた景観が"山あいにある秘境"の印象を強く与えます。
(比較するのもおかしな話なのですが、個人的には、1ヶ月前に見た超観光名所『清水寺』の本堂(清水の舞台)から望む景色以上に美しい眺めだと感じ入りました。)

薄曇りの天気がなんとなく霧がかって見えて、より一層神秘的な雰囲気を感じます。

写真右奥に流れ落ちるのは、落差133mと日本一の落差を誇る『那智の滝』(那智御瀧)です。
熊野那智大社の起源は、この那智の滝を神聖視する自然信仰であるとされています。

この句牌、空間によく馴染んでいるのと響きが私の好みに刺さりました。いずれ紅葉の時期にまた来たい。


帰りのバスがちょうど来たため、今回、那智の滝は遠巻きに眺めるのみでした。こちらもまた今度。

熊野三山のなかで観光客が最も多いのは熊野那智大社でしたが、それでもなお厳かな空気が漂っていますね。



郷愁を誘う夕焼けとともに、バスで紀伊勝浦駅へ。
あとは、電車で新宮駅付近のホテルに向かいます。


この日の熊野三山めぐりは歩きでつなぎましたが、やはりオール徒歩だと満足度が違いますね!

ただ観光名所を散策するだけなら、公共交通機関を活用してテンポよく回るのも好きです。旅初日の奈良とか。
ただ、古道歩きのように"歩くこと"そのものが大きな意味を持つ場合は、なるべく徒歩のみでこなせる計画を立てるべきだと改めて痛感しました。

熊野那智大社の雰囲気に呑まれてなかなか現実に戻ってこられなかったことと、この日の達成感と満足度がピークで、正直なところ、私の”歩き旅”はここで終わってしまった感がありました。
ここ三日間無理のない行程にしたことで全体を通して達成感は持ちづらく、翌日の伊勢神宮に対するモチベーションも高くありませんでした。

ただ、そもそも達成感を得ることがこの旅の、ひいては歩くことの目的なのかというとそうでもなく。
それに、このコースはやはり伊勢神宮を参拝してこそ締まるものでしょう。

伊勢神宮でしっかりと旅の成功を報告して、この感謝を伝えて終わらなければ。 

いいなと思ったら応援しよう!