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羽あるもの 夜伽一卷

■ 感想

羽あるもの 夜伽一卷」吉田篤弘(平凡社)P144

日本版・千一夜のように、芳しい幻想譚が語られていく吉田篤弘・新境地の物語。

時は戦の時代へと移り行く前夜といった頃。都のはずれにある庵に暮らす、わたし。生まれ以って見えないものを捉えてしまう<わたし>は淡い光を纏って現れる者たちと想いを通じることができた。書院の隅に立っている光を纏う者は<わたし>の悲しみの化身であるという。その悲しみの正体とは、羽あるものが意味することとは…。

傀儡女だった<わたし>は、我が身を護る手立てとして、夜通し物語ることで幾つもの夜を超えた。語れども語れども尽きせぬ物語は母からの賜物らしい。さる尊い方の侍女として閨に侍り、夜伽に物語る逸話が大層気に入られ、来る日も来る日も語ることをせがまれていた母。

千一夜を想起させる幻想の夜は多くの謎を孕みながら、羽あるものを巡る美しい物語を紡いでいく。夜の沼から立ち上がる虹、紙面からほろほろと文字が零れ落ちた本、壮健で弁は立つが、酒ばかり酌んでいる破戒僧と、名も無き若狐の野狐。

さらさらと清流に広がる絵巻のように流麗な物語は静かに心に落ちてくる。しじまの先に待つ羽は一体どこへ運んでくれるのだろうか。

■ 漂流図書

羽あるもの 夜伽一卷>漂流図書

■ガラン版 千一夜物語|(翻訳)西尾 哲夫

読もう読もうと思いながら後回しになってしまっていたガラン版千一夜。

断片しかしらない千一夜の世界を幻想的なエキゾチックを味わえるであろうガラン版で今こそ堪能したい。

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