双極性障害の私が司法試験に合格する話(380)口笛を吹きながら仕事をする。
年末年始は、海外で過ごした。
私の行った場所で働いていた人たちは、みな、口笛を吹きながら、軽やかなステップを踏みながら、鼻歌を歌いながら、仕事をしていた。ホテルのウェイターさんも、ドライバーさんも、CAさんも、関わる人みんなみんな、軽やかにニコニコ、肩の力を抜いて仕事をしていた。
日本じゃあり得ない。むしろ、失礼にあたるのかもしれない。だけど、私は、全く、嫌な気持ちせず、むしろ、気分良く、過ごせた。
日本に帰って、さあ、勉強だ、あれをしなきゃこれをしなきゃ、せねばせねば、すべきすべき、と新年の気合いも相まって、頭の中がいっぱいになり、早々に1日、寝込んだ。身体が全くいうことを聞かなかった。たっぷり眠ったので眠たくない。だけど起きたくない。ベッドの中で、ギュッと目を閉じると、海外で働く人たちの姿が浮かび上がった。
あんなふうだ、あんなふうでいたい、あんなふうでいよう。
目を開けたら、身体が動く。私は、深呼吸でさえも、こうでなきゃ!と肩肘張って、いつ深呼吸をするか、タイミングまで決めていた。それをぜーんぶやめた。朝起きる時間を決めるのもやめた。1日ぐらいお風呂に入らないことをいちいち気にすることをやめた。勉強のガチガチのノルマもやめた。家事をきっちりやるのもやめた。マイルールを、ドッカンとひっくり返した。
そうしたら、机に座って、気づいたら、3時間、勉強に集中していた。なんか、ワクワクした。わからない問題に苦しんだりしない。わからないなら、一旦飛ばして、次の問題へ。軽やかにステップするように。文字を書くのは、鼻歌を歌うようにサラサラと。
日本の軍隊的なキチッキチッとしたのは、やっぱり、私には合わない。昼間から、酒飲んで、歌いながら仕事をするような、海外の雰囲気がどうも好きだ。とは言っても本音はピシッとした日本的な形には、憧れる。だからこそ、自分をそこに当てはめようと必死にやってはできなくて自分を責めたけど。もう、それは無理。諦めよう。ダメなら次へ、軽やかに。感覚的に。それでいい。
いい世界の空気を吸えた。こんな大事な時期だけど、思い切って、海外へ行ってよかった。世界は広い。いつかどうせ死ぬのだから、楽しく生きたい。いつか、ではなく今。楽しく楽しく。受験時代は地獄だ、という声を山ほど聞くけど、私はそんなの嫌だ。すでに振り返れば地獄なのだけれど、もう地獄は抜け出す。ルンルンしながら、生きていく。
もし、その先に、合格がないのなら、もう、それでもよし。気にしない。私は今日の私をルンルンに生きることにした。
期待しない、見返りを求めない、全ては、いつかなくなるし、手に入れたと思ったものも、それは私のものじゃない。
だから、何かを手に入れることに、将来への期待に、固執せず。ただ、今を、楽しく生きる。
そうすることにした。