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新しい出会いがたくさんあった月ー読書記録2024年11月 全10冊ー

 今月は10冊読めました。読了日順に振り返りをした後、今月のベスト3を発表します。

今月読んだ本(読了日順)

私の個人的な好みで5段階評価しています。
 ★5ーめちゃくちゃ良かった!再読する可能性大。
 ★4ー再読はしないかもしれないが、かなり良かった。
 ★3ー面白くなくはない。
 ★2ー部分的には良いところもあった。
 ★1ー私には良さがわからなかった。

11/2『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策(日経BP)』今井むつみ

評価: ★4
 「人間の脳の容量が1GBしかない」ということに驚いた。そりゃあ忘れるよね、となった。つらいことをずっと覚えているのはもっとつらいことだから、忘れるのは生きていくうえで本当に必要な機能だと思う。私はわりとすぐ夫に「前も言ったやん!」などと小言を言ってしまうので、反省反省。
 とにかく、私と相手は別々の人間なのだから「伝わらないかも」という前提で、伝え方を考えることが大事だと思った。
 全体として、タイトルに相応しくめちゃくちゃ分かりやすく書かれていた。著者の伝え方の上手さによってさらに説得力が増していた。ただ、具体的な伝え方の技術にはそこまで触れられていないので、技術的なことを求めている方にはおすすめしない。

11/7『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くした オックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方(ディスカバー・トゥエンティワン)』島村華子

評価: ★4
 元教員ということもあり、基礎的な「動機づけ」に関わる部分は既知の内容であったが、再確認することができた。
 「大切なのは、大人の子どもを愛しているという納得感ではなく、子どもが愛されていると感じられるかどうか」という点については、実際に自分が子育てをするとなったら、見失ってしまいそうなことだと思ったので気をつけたい。
 I messageはよく言われることだが、その4つのポイント(行動、感情、影響、提案)が具体例とともに示されていて参考になった。
 子どもとつながる7つの習慣&ぶつかる7つの習慣が、子どもとだけではなく、人間関係全般に言えることだと思った。肝に銘じようと思ってスマホのロック画面に設定した。
 私の、2歳の息子がいる妹は、読んで泣いていたので、きっと現在子育て中の方にはより刺さると思う。

11/8 『対岸の彼女(文春文庫)』角田光代

評価: ★4
 角田光代さんは初めて読んだが、読み終わった後に心がふわっと明るくなるような感じで、優しくて、良かった。
 立場の違う二人が、その違いですれ違いながらも、最終的には固い絆で結ばれているのが良い。読後が爽やかで、明日から私も頑張ろう!という気持ちになれた。
 大きなテーマは「女の友情」だと思うが、「子育てと仕事の両立」ということに対しても示唆があるように思う。主人公小夜子の娘が引っ込み思案で、2人が「公園ジプシー」をしているというところから始まる。小夜子が仕事を始めるにあたり、そんな娘を保育園に預けるのだが、義母がそれに対して嫌味を言うというシーンがある。その義母との確執や泣きながら保育園に行きたくないという娘の問題も、最後には一つの答えが示されている。きっと、仕事と子育てを両立されている方には刺さる部分があると思う。

11/11『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しか出てこない(ディスカバー携書)』三宅香帆

評価: ★5
 非常に勉強になった。
 「自分の感想を書く前に他人の感想を見ない」「読者を想定して書く」という部分が、私がまだできていなかったことだったので、読み終わってから実践している。あとは「書き出しが大事」ということで、ということはタイトルも大事だなと気付き、書き出しの際のポイントをタイトルをつけるのに応用している。
 詳しい感想は下記のnoteに書いております。

11/19『そして、バトンは渡された(文春文庫)』瀬尾まいこ

評価: ★4
 角田光代さん同様、瀬尾まいこさんもこれまで読んだことがない方なので、本屋大賞を取って一番有名だと思われるこの作品を選んだ。さすが本屋大賞、という感じで、とても優しくて読後が清々しい作品だった。テーマは「家族」。
 なんとなく、主人公である優子のちょっと変わっている感じは、次に挙げる「成瀬」と重なるところもあった。でも「成瀬」と違うのは、優子の人格を形作ってきたこれまでの境遇を、読者が知ることができるところだ。
 第三者が勝手な判断・見方をすることに対して、本当のところは本人にしかわからないよ、勝手に決めつけるな!というようなところは、後で挙げる『流浪の月』と重なるし、「食事」の描写が多く、暗に「食事が家族を作る」と言っているところは吉本ばななの『キッチン(角川文庫)』にも通ずる。
 最後はほっこりできる作品。

11/20『成瀬は信じた道をいく(新潮社)』宮島未奈

評価: ★5
 今年の本屋大賞である前作『成瀬は天下を取りにいく(新潮社)』を先月読み、面白かったので続編である本作も読んだ。私は前作よりも本作のほうが好きだった。前作は「THE エンタメ!」という感じでとにかく楽しく読んだのだが、本作はぐっとくる台詞も複数あり、エンタメだけではない、メッセージ性も感じたからである。
 主人公の成瀬が周囲からとても愛されていることにほっとする。また、成瀬が変わっていることによって、図らずも助けられる人もいる。心底嫌なやつ、というのが出てこないので、平和で嫌な気持ちにならずに読める作品である。
 前作もそうだが、とにかく読んでいて笑顔になれる。元気になれる。また明日も頑張ろうと思える。素敵な作品である。
 読んでいる最中に、どうしてもにやにやしたり、思わず笑い声が出そうになったりするので、電車やカフェで読むときは注意。

11/20『星を掬う(中公文庫)』町田そのこ

評価: ★5
 町田そのこさんの名前は『52ヘルツのクジラたち(中公文庫)』で知っていたのだが、その作品が虐待を扱っているということで、なかなか勇気が出ずに読めないでいた。今回、本作を手に取り、今までどうして彼女の本を読んでいなかったのだろう、と後悔するぐらい良かった。
 主人公千鶴の成長に胸を打たれる。何度もあふれてくる涙をぬぐいながら読んだ。主人公が私と同年代の設定ということも、深く刺さった要因の一つだと思う。
 扱っているのは「DV」「認知症」「介護」。特に「DV」を扱っているので、経験のある人はつらくて読めないかもしれない。ただ、重たいテーマを扱っているわりに、全体としては希望の持てる、暗すぎない感じなので、怖がらずに手に取ってほしいと思う。「認知症」や「介護」というのも、私たちアラサーには少し早いテーマかもしれないが、いずれ必ずぶち当たる問題だと思うので、その前にこの作品を読めていて良かったと思う。
 詳しい感想は下記のnoteに書いております。

11/26 『流浪の月(創元文芸文庫)』凪良ゆう

評価: ★3.5
 100万部突破記念の特別カバーが、とっても素敵なグリーン&水色の箔押しで、別に好きな色でもないにもかかわらず、一目惚れしてお迎えした。いわゆる「ジャケ買い」である。凪良ゆうさんも有名なのに、これまで読んだことがなかったので、ちょうどよかった。
 正直なところ、私はこの本の良さをちゃんと理解できなかったと思う。『そして、バトンは渡された』のところでも触れたが、本当のところは本人たちにしかわからない、勝手に決めつけるな!ということが何度も言われている。また、「DV」を扱っていたり、無知な優しさが人を傷つけることがある、というのは『星を掬う』と重なるところがあると思う。伝えたいであろうメッセージの部分には、気づかされることもあるし、共感するところもあるが、ストーリーになかなか納得して読むことができなかった。「誘拐犯とその被害女児」とされている2人の関係をすんなりと読むことができなかったのは、もしかしたら私も、本作に出てくる勝手に2人の関係を想像してあれこれ言う世間の人のひとりだからかもしれない。私自身がもっと成長出来たら、この作品の良さがわかるかもしれない。
 作品自体はあまり好きにはなれなかったのだが、自分の成長に期待するとともに、とにかくこの特別装丁が美しすぎるので、表紙が見えるようにして本棚に飾っておくことにする。

11/26 『まず良識をみじん切りにします(光文社)』浅倉秋成

評価: ★4.5
 TikTokで有名なけんごさんのInstagramをフォローしているのだが、そこで紹介されていて気になって読んだ。浅倉秋成さんの本もこれまで読んだことがなかったのだが、大変面白かった。
 少し朝井リョウみがあるように思った。いや、全然違うのは違うのだが、なんというか人間の醜い部分を深く掘り下げるところが似ていると感じた。
 一編目はなんか胸糞であまり好きにはなれなかったのだが、一編目以外は好きだった。決めがたいが、一番を決めるとしたら、最後の五編目『完全なる命名』である。二編目の『行列のできるクロワッサン』もそうなのだが、はたから見たら些細な、本当にしょうもないことで主人公たちは悩んでいる。それがある意味滑稽に描かれているので、二編目を読んだときは、些細なことで悩む人たちを馬鹿にしているのかな?とも思ったのだが、最後の五編目を読んでそうではないと気付いたからである。この五編目に出てくる主人公のように、作者の浅倉さんは妄想(空想)好きで、些細な部分からどんどん妄想を膨らましてしまうタイプだから、そんな自分を笑ってくれ!というようなことなのかなと思ったのである。
 短編集で読みやすかったので、私のように浅倉さん初めてという方にもおすすめである。

11/27 『ここで唐揚げ弁当を食べないでください(実業之日本社)』小原晩

評価: ★5
 タイトルに惹かれたのと、尊敬する又吉直樹さんがYouTubeで紹介されていたことから、面白そうだと思って読んだ。そもそも自費出版で一万部以上売れるって…すごすぎる。興味を持たないわけがない。
 本当にめちゃくちゃ良かった。エッセイってこんなに自由に書いていいんだなと思ったし、彼女みたいなエッセイを書きたい!と思った。でも、作家やお笑い芸人の方もそうだが、視点が違う。世界の見え方が違うのではないかと思う。そして、それを適切に言語化できる。私にはその「視点」がないと思う。くじけそうになる。でも、諦めずに文章は書き続けようと思う。
 初めて読む著者の本だし、本屋にないかもしれないと思って中古で購入したのだが、これはちゃんと著者にお金を払いたい!と思って、新品を買い直したほどである。詳しい感想は下記のnoteに書いております。

 このnoteを書いた後の後日談として。本作を読んでから、小原晩さんのXとInstagramをフォローし、もう一つの作品『これが生活なのかしらん(大和書房)』も読みたい本リストに登録し、Xを見ていたら小原さんのWeb連載記事を二つ見つけて全部読むなど、完全にファンである。新品で改めて買おうと思って、とりあえずネット注文したのだが、なんと、近くの本屋にサイン本がまだ残っていたので飛びついた。ネット注文分はキャンセルして、そのサイン本を大事に家に連れて帰りました。こんな本の買い方をしたのは初めて。本当に本当に嬉しくて、帰りはスキップしたい気持ちでした。みなさん、最近スキップしたいと思ったことありますか?私の喜びがどれほどのものだったか、わかってもらえると思います。

今月のベスト3

 では、今月のベスト3をさらっと発表してしまいたいと思います。

第1位 『ここで唐揚げ弁当を食べないでください(実業之日本社)』小原晩

第2位 『星を掬う(中公文庫)』町田そのこ

第3位 『まず良識をみじん切りにします(光文社)』浅倉秋成

 第3位については、評価は本作よりも高くつけた作品もあったのですが、新しい出会いとその面白さに対する衝撃から、選びました。

今月のまとめ

 こうして今月読んだ10冊を振り返ってみると、今月は今まで読んだことのない作家さんの作品に挑戦してみる月だったなと思います。新しい出会いがたくさんあって嬉しかったです。積読(約30冊…)があるので、来月は新しく本を購入するのは控えようと思っているのですが、また来年、今月出会った素敵な作家さんのほかの本を読んでいきたいと思います。もしよろしければ、みなさんのおすすめの作品や作家さんを教えてください。
 今月読んだ本はタイトルの知られた有名な作品も多く、おすすめできる作品ばかりでしたので、気になる作品がありましたら、ぜひ読んでみてください。
 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。また来月の振り返りをお楽しみに。