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『イパネマの娘』カタカナで読む歌詞 [日本語訳あり] [Garota de Ipanema]

今し方、『イパネマの娘』のポルトガル語歌詞の振り仮名を
カタカナで書いていらっしゃる方の記事を見つけました。
ご本人は、誰かの役に立って欲しいというポジティブな目的で記載していらっしゃるようでしたが、
正直、ポルトガル語の読み方が全く違いました。
私が常々申し上げている「教科書でよくある日本語表記」
(アクセントの「ー」や「ッ」が入っていない)
ならまだよかったのですが、
本当に、単語の意味も含め、
ポルトガル語の勉強を何ひとつなさっていない方のようでした。

二重音字(lhaは「リャ」と読むなど)の理解もなく、
発音しなくてはいけない箇所(ほとんど聞こえないrの音など)にもカタカナ表記がありませんでした。
そのカタカナ1文字の欠落が、音楽にとってどれほど致命的であるか、
もちろん知る由はないと思いますが、
それにしても、ただのカタカナ表記でこれだけ間違ってしまっていて、
それを発信してしまっているのは
問題だと思います。

とても焦りました。
これが広まってしまって、間違った発音で歌ってしまう方が増えてしまうと、
ボサノバの良さ、本質を伝えることなく広まり、
日本におけるブラジル音楽の発展の妨げになってしまいます。

趣味で歌っていらっしゃる方も、
ポルトガル語の細かい音声学(発音)の知識などまで学ばないにしても、
せめて正しいカタカナで歌ってください。
本当は発音を学んで、正しい音楽を奏でていただきたいのですが、
(発音は、リズムと密接に関係しているので、音楽に大きな影響を与えます)
せめて、せめて、カタカナであっても正しく発音してください。

緊急ですが、正しい発音のカタカナ表記を載せます。
もしボサノバを歌っていらっしゃる方、お知り合いで歌っていらっしゃる方がいらっしゃったら、
こちらを広めてくださると大変助かります。
どうぞ参考にしてください。

追記:
私が書いた日本語訳も追加で記載しました。
解釈が分かれる内容もあるかと思いますが、
見当違いな翻訳をしていらっしゃる方も見受けられますので、
参考まで、よかったらお読みください。

Garota de Ipanema
ガローッタ ヂ イパネーマ

Olha que coisa mais linda
オーリャ キ コイザ マイス リーンダ
Mais cheia de graça
マイス シェイア ヂ グラーッサ
É ela menina
エー エーラ メニーナ
Que vem e que passa
キ ヴェーン イ キ パーッサ
Num doce balanço
ヌゥン ドーッスィ バラーンソ
A caminho do mar
ア カミーニョ ド マー(r)

Moça do corpo dourado
モーッサ ド コールポ ドウラード
Do sol de Ipanema
ド ソゥ ヂ イパネーマ
O seu balançado é mais que um poema
オ セウ バランサード エー マイス キ ウーン ポエーマ
É a coisa mais linda
エー ア コイザ マイス リーンダ
Que eu já vi passar
キ エウ ジャー ヴィー パッサー(r)
Ah, por que estou tão sozinho?
アー, ポ(r) ケ エストウ タォーン ソズィーニョ
Ah, por que tudo é tão triste?
アー, ポ(r) ケ トゥード エー タォーン トリースチ
Ah, a beleza que existe
アー, ア ベレーザ キ エズィースチ
A beleza que não é só minha
ア ベレーザ キ ナォーン エー ソー ミーニャ
Que também passa sozinha
キ タンベーィン パーッサ ソズィーニャ

Ah, se ela soubesse
アー, スィ エーラ ソウベーッスィ
Que quando ela passa
キ クァーンド エーラ パーッサ
O mundo sorrindo se enche de graça
オ ムーンド ソヒーンド スィ エーンシェ ヂ グラーッサ
E fica mais lindo
イ フィーッカ マイス リーンド
Por causa do amor
ポ(r) カウザ ド アモー(r)

イパネマの娘/ 仮名:愛マリアンジェラ
Garota de Ipanema/ leitura de kana: Ay Mariângela

イパネマの娘

見て、何て可愛らしくて
気品に溢れているんだろう
彼女は
甘美なスウィングで
海に続く通りを歩いている女の子

イパネマの太陽を浴びて
金色に輝いた肌の女の子
彼女の歩くリズムはどんな詩だって敵わない
僕が今まで見てきた中で最も美しい

ああ、どうして僕はひとりなんだろう
ああ、どうして全てがこんなに虚しいのだろう
ああ、あの美しさは、存在しているんだ
あの美しさは僕のものだけではないし
その上、ひとりで通り過ぎてしまう

ああ、彼女が通ると
微笑んだ世界が喜びに満ち溢れて
そしてこの愛のおかげで
より美しいものになるのだということを
もし彼女が知っていたらなぁ

イパネマの娘/ 翻訳:愛マリアンジェラ
Garota de Ipanema/ traduzido por: Ay Mariângela

表記に関して

・閉口音、開口音、鼻母音、lとr、r[x]は、やむを得ず日本語で最も近い表記にしました。
閉/開口音 … 区別なく「エ」「オ」
鼻母音 … 日本語の「ン」(本当は喉の息の道を閉じない)
lとr … どちらも日本語の「ラ行」
r[x] … 日本語の「ハ行」(本当は喉の奥の上を息で擦って出す音)

・(r)は、「『ル』まではっきりと発音しないけれど、rを言う分の拍は残しておいてほしい」という意味です。実際のポルトガル語は、口の中ではrの舌を作っていますが、ほとんど息だけで単語末のrを発音する場合が多いです。その息すら省略してしまうと、音符の拍とずれてしまうのでご注意ください。

・カタカナのアクセント表記において、二重母音や鼻母音の箇所には「ー」は発生しませんが、日本語話者の鼻母音は発声の時間が短く、正しく発音できない場合が多いです。そのため、意図的に鼻母音の箇所にも「ー」を入れてある単語もあります。

・最小限の表記ですが、最低限の発音ルールでもあります。
本来であれば、閉/開口音や鼻母音はもちろん、音声学のリズム論や弱母音など、伝えたいことが山ほどあります。
もし気になる方がいらっしゃれば、私の他の記事、Kindle、YouTube動画無料体験レッスン(30分)などでポルトガル語の発音に触れてみてください。(最後にリンクがあります)

カタカナでポルトガル語の歌詞を読むときのコツ

・閉口音と開口音の区別はつけましょう。知らない方は、ご自身で調べてみてください。
ポルトガル語は「エ」と「オ」は閉める音と開ける音の2種類あり、これらを区別しないと、別の単語を発音していることになってしまいます。また、開口音は、きちんと開かないとポルトガル語の「言葉のリズム」がずれて、メロディにも影響を及ぼし、気付かないところで歌がずれていきます。

・冠詞のoを「ウ」と発音なさる方がいらっしゃいますが、誤りです。

O mundo sorrindo
× ウ ムーンド ソヒーンド
⚪︎ オ ムーンド ソヒーンド
しかし、冠詞oが「ウ」に聞こえてしまう気持ちもわかります。何が起こっているのかというと、音声学的にこのoは弱母音と呼ばれるもので、「ウの口でオ」と発音するものなのです。これは単語末のoにも現れますので、mundoのdoも、d+「ウの口でオ」で発音することが正しい音につながります。
「ウ」と「オ」しかない日本語話者である私たちは、その間の音を知りませんので、勘違いしていらっしゃる方も実際に多いです。しかし、oはoです。uだけが「ウ」と発音します。
日本で出版されているポルトガル語の教科書にはおそらくどこにも書いてありませんが、音声学上、ポルトガル語のoは3種類ありますので、それを区別して発音できるようにしてみてください。
以下にYouTubeの動画を載せておきますので、参考にしてみてください。

・歌っていると(メロディーラインを辿っていると)、「ー」や「ッ」が邪魔になって省略してしまう方が非常に多いです。「ー」や「ッ」があるとメロディーに遅れてしまうと思い、無意識に省略してしまいます。ですが、それは絶対にしないでください。私が「歌詞の朗読」を勧めているのは、そのためです。
ブラジル音楽は、言葉にメロディーを入れていくものです。ポルトガル語のアクセントを叩き込んでからでないと、本来、ブラジル音楽は攻略できません。
「ー」「ッ」は、そこにアクセントがあるから配置されています。それを省略してしまうということは、アクセントを無視すること、つまり「訛って歌う」ことを許すことになってしまいます。
日本人の方でも、「日本語の歌でメロディーも同じなのに、関西弁を喋る方が " 関西弁のイントネーション " で歌詞を歌ってしまう」ことがあります。それと同じで、ポルトガル語のアクセントを無視すると、訛って歌ってしまうことになります。
また、メロディーは、ポルトガル語のアクセントに合わせて作られているので、そのアクセントを守らないということは、作曲者の意思に反してしまうこと、つまり、楽曲を正しく表現できていないことだと思ってください。
ポルトガル語のアクセント(強弱アクセント/日本語は高低アクセント)を維持しながら歌うことはとても難しいと思いますが、挑戦してみてください。

ボサノバ発音本を作っています

ちょうど今、ボサノバ楽曲のための発音の電子書籍を作成しています。
その中にこのGarota de Ipanemaも載せる予定です。
日本語訳、カタカナ表記、発音記号、文法解説、歌のコツなどを載せて
初学者でも基礎的な発音を学べる本にしたいと思っていますので、
よろしければそちらも楽しみにしていてください。

追記:
出来ました。長くなったので、1曲ずつ分けて作りました。
Kindle Unlimited会員の方は無料で読めます。

『「イパネマの娘」発音・文法・歌い方解説』

♡ ••┈いつもご覧くださりありがとうございます┈•• ♡
私のレッスンでは、
・発音矯正
・音声学に基づいた「日本語のクセ」と「ポル語の特徴」の解説
・「ポル語グルーヴ」のブラジル音楽への落とし込み方
などを教えています。
YouTubeでミニ講座を投稿している他、オンライン無料レッスンも行っています。
ご興味がある方は是非YouTubeチャンネルHPをご覧ください.*˚✩
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✼••┈ A sua professora ┈••✼
꧁愛マリアンジェラ꧂

著書
『日常ポルトガル語会話ネイティブ表現』(出版: 語研)
※共著

電子書籍 (すべてKindle Unlimited対応)
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話』
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話2』

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