応援団のユニフォーム「学ラン」とは
応援団員は他の生徒の模範的存在であることを目指している。
もともと応援団とは学生が始めたものであり、当時は学生服を着用することが当たり前だった。
従って、応援団のユニフォームなるものを強いて挙げるとするならば、学校指定の制服をそのままユニフォームとして捉えることができよう。
学校の伝統を体現するために、現在では使用されていない学生帽を蘇らせる場合もある。
ちなみに学生服のことを「学ラン」と呼ぶが、もともとは「学蘭」と書いた。
「蘭」とは衣類を意味する江戸時代の隠語であり、「オランダ」→「ランダ」→「ラン」に由来する[1]。
応援団の学ランといえば、高い襟に長い丈(長ラン)、太いパンツ(ボンタン・ドカン)といった変形学生服をイメージするかもしれない。
これらは、高い襟はうつむかないようにするため[2]、長い丈は礼をしても尻を見せないため、もしくは動きを大きく見せることで応援効果を高めるため、太いパンツは演技の激しい動きによって破れるのを防ぐため、といった理由が挙げられるようだ。
いずれももっともらしい理屈に聞こえる。
しかし私個人としては、応援団員は学校の規則に従った、生徒として相応しい身だしなみであるべきと考える。
応援団によっては、長ランと呼ばれる丈の長いものや、弊衣破帽(へいいはぼう)と呼ばれる先輩より受け継いだ伝統の古い服装を着用しているところもある。
着こなし方も学校によってそれぞれだが、まずは校則に照らし合わせるべきである。ボタンを外したり、だらしなく着たりすることが応援団らしさだと勘違いしてはならない。
また、羽織袴を着用する場合も見受けられるが、世間で和装が日常的ではなくなった現代であればこそ、なお一層注意が必要である。
正しい着付け方法はもちろんのこと、羽織の色に袴の種類、紋の数と格の違いといった基本的な礼装の知識に加え、応援団にはよく見られる長尺の羽織紐の意味や、そもそも学生服ではなく敢えて和装を用いる必要性についても、正しい理解に基づいて着こなすことが求められる。
*ここでの「応援団」とは、「生徒・学生による伝統的な応援の精神を基調とした学校公認のクラブ」のことを一括して表現しています。
注
[1]ろっきプロ『六大学花の応援団 ガクランに敬礼』(ノラブックス・1984年)143頁によれば、〈ラン〔蘭〕着物。衣類。〔←オランダの上略語ランダの下略語。最初ランダは洋反物・洋服に使われていたが、ランと略されてからは、元の意味が忘れられて和服の場合にも使われるようになった〕〉とある。
[2]重松清『あすなろ三三七拍子(上)』(講談社・2014年)46頁によれば、〈顔を下げると、襟が喉や顎に食い込んで痛いだろう。学ランの襟は、これを着ているうちはどんなことがあってもうつむかないぞ、胸を張って前を向くぞという誓いの証なんだ〉とある。また、NHK総合のバラエティ番組「チコちゃんに叱られる!」第65回(令和元年10月4日放送分)では、学生服のモデルと考えられる18世紀ヨーロッパの軍服は〈首にしっかりとした襟があると顔が下がらず 堂々と男らしく見〉せるために詰襟を採用した、と紹介している。