キャリア教育施策の「目的」を見失うなという話
4月に行ったイギリスの視察と
その後の「報告会」の準備プロセスを経て、思ったことがあります。
文化や社会的背景が全く違うから、そのままマネすることはもちろんできない。でも、それでも、マネすべきだと思ったのは「目的から考える」ということでした。
視察の主な目的は、イギリスで運用されているギャツビーベンチマークという、学校のキャリア教育の取り組みを評価する指標と、それを運用する機関や仕組みについて学ぶことでした。「指標」も、日本にもあったらいいんじゃないか、と、わかりやすい方法にも見えます。入り口はそんなところでした。
しかし、教育省(Department of Education)で「戻りどころはここ」と言われた、2017年に出されたキャリア戦略を見ると、その一文めには、「私たちは、どんな背景の人であってもすべての人がその能力に気づくことができる、強く公平な社会をつくりたい」というところから始まっていて、教育の話かと思いきや、どんな社会にしたいかから語るのか!とびっくりしました。指標も仕組みも、施策はその目的のためにある。ゆえに、指標の運用方法や仕組みも、とても合理的にできているのです。
私たち、「方法」に飛びつきがちなんだと思う。
例えば、麹町中での工藤先生の取り組みも、「定期テスト廃止」とかの方法だけがクローズアップされていたけれど、工藤先生が言っていた本質は「目的を明らかにすること」だったんです。
確かに「方法」はわかりやすい。
少し話は飛びますが、静岡大学吹奏楽団の顧問でいらした角替弘志先生の著書を読みました。生涯学習がご専門と認識していたのですが、若い頃はイギリスの教育制度を研究していたということを、この著書で知りました。(ほんと、いまさらです、すみません。著書も1999年に出されたものでした。)
拝読してびっくりしたのは、
日本の高校進学率が90%を超えていたころ、
イギリスの16歳就学率が30%以下だったという数字。
1980年のデータだそうです。
必要なキャリア支援も、日本とは全く違ってくるはずです。海外のキャリアガイダンス研究が「進んでいる」と言われるのですが、それが必要となった背景が、全然違うわけです。もちろん学ぶべき理論や実践はありますが、日本の現状や課題はなんなのかを抜きにして語ることはできないなー、と。
私たちは自分の暮らす社会をどれだけきちんと「見て」いるのか?
例えば、職場体験、インターンシップ、職業人講話、探究型のプログラム、PBLプログラム、地域との連携、産業界との連携、教科との連携。これらは「方法」であって、例えば職場体験は全国の中学校の9割以上で実施されているというけれど、「目的」を達成しているのかどうか。そもそも「目的」はなんだったのか?キャリア教育コーディネーターとしては目の前の支援・実践も本当に大事なのだけれど、その一方で、社会を見る視点も持っておかねばならないと思ったのでした。
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