上海渡航大作戦日記②ガイド本がない!
にーはおにーはお。
蒼子です。
さて、前回
勢いに任せて上海行きを決めて、
航空券を押さえて、ホテルを押さえた私だったけど、飛行機とホテルが決まればいよいよ旅行の中身を考えなければならない。
「で、どこ行きたい?」
と、具体性のかけらもない質問を韓国人の同行者に聞くと、
「うーん…、てか上海って何があるの?」
と言うこれまたどうしょうもない答えが返ってきた。
「え、、まあそりゃあれだよ。
上海って言ったらさあ…」
え?待てよ上海って何があったっけ?
豫園、、はまず行っとくべきだし??
あとは、やはり外灘から見る夜景は絶対見た方がいいし。。
それから、やっぱり中国初めてなら寺とかみたほうがいいなら、、
玉仏禅寺………とか??
初めて上海に訪れたのは遥か昔のこと。
その時は、典型的な観光をしたけれど、
何回か上海に通った後は、上海はどこかへ行く通過点としてとりあえず空港に降り立ったら次の街を目指すようなことが常習化していた。
なので、よく考えてみたら私が上海を純然たる目的地として訪れるのはもはや七年ぶりくらいになるのだ。
七年経ったら全てが変わる。
ただでさえ変化の速度が速い中国で、7年前に賑わっていたとしても、今どうなってるのかは全く予想がつかない。
例えば、
私は2018年に南京に行くために上海を訪れた時に、田子坊というところによった。
ここは、雑貨屋さんやおしゃれなカフェなんかが集まる当時は上海で洒落たエリアとして多くの観光客や若者で賑わっていた場所だ。
しかし、2023年の年末に訪れた時には人もまばらでお店も閉まっているところも多くすっかり変わり果てた様子になっていた。
私の家にあったガイド本は、2018年のもので、これではお話にならないものである。
てなわけで、私は中国版Instagramという説明がしっくりくる、「RED」というアプリを使っている上海の観光情報を集めて、彼に送りつけていたものの、思わぬ返事が返ってきた。
「やっぱりガイド本欲しいよ」
「ええ?なんで!ガイド本で手に入る情報なんてたかが知れてるし、そんなのよりも中国現地のアプリとかサイトで見た方が情報もたくさん手に入るんだよ?」
というと、
「ううん、それはすごくありがたいし感謝してるけど。僕だって自分で上海のこと調べたいし、
上海にどんなものがあって、どれに行ってどれに行かないのかの判断に参加したいよ。
だって、旅行って航空券とホテルを買うんじゃなくて、その楽しみにどこに行こうかなって考えるワクワクした時間も含めて一緒に買うものでしょ?」
という答えが返ってきた。
ぐうの音も出ない。
そりゃそうだ。
「僕は中国語わかんないし、韓国語の本なんて日本にはないだろうから、せめて日本語のガイド本が欲しいなあ。」
と、いうことで本屋に向かうことになった。
ところが、
大阪の梅田の紀伊國屋、ジュンク堂、難波のジュンク堂、天王寺の大型書店。
次から次へと大きな書店を巡っても巡ってもどこにも上海どころか中国の2019年以降のガイド本は見つけられなかった。
じゃらん、まっぷる、地球の歩き方さえないのである。
数軒まわって、なにもなくて
「もういいよ、諦めよう。」
という彼を黙らせて、書店巡りを続けた。
ここで諦めたら男が廃るってもんだ。
(男じゃないけど)
それに、まさか一冊もないなんてことはないだろう、、。
そう思って、ヘトヘトになってヤケクソで訪れた最後の一店舗で2019年の売れ残りの上海るるぶを手に入れた。
「くそ。あっても2019年版かよ」
と、毒吐く私をよそに、
「うん、でもあってよかった!
これがあれば、僕でも上海何があるかわかるし、
行きたいところがあったら蒼子さんが中国のサイトで調べてくれたらいいよね。」
「う、うん。。」
大切そうに上海の本を抱えて、レジを通り、
待ちきれずにエレベーターで開いている彼を見ていたら、なんだか私も不思議な気持ちになった。
行ったことがある、豫園や外灘の美麗な写真たちが所狭しとひしめき合うガイド本を眺めていると私までなんだか楽しみで仕方がない気分になる。
「うーん、どこにいこうかなあ。
うちの国が日本に占領されてた時に上海に臨時亡命政府があったらしいんだけど、その建物見に行きたいけどガイド本に乗ってないなあ」
んん???
「あと、なんか日本軍と国民党が激戦繰り広げた四行倉庫ってとこも行ってみたいんだよねー。」
んんんんん????
「あと北朝鮮レストランも行きたいなあ。
上海にもあるんでしょ?観光本に載ってるかなあ」
なんだそれは!!!!
どうしようもねえな!これだから軍事オタクは!
ほんで行きたいところ全体的にうちの国の負の歴史の香りが漂ってるところばかりやんけ!まあええけどな!あと、北朝鮮レストランはお前が行ったら韓国の公安にしょっ引かれるんちゃうんか!おおん???
この韓国人は、大の国民党ファンで、怪しげなサイトで国民党の軍服やヘルメットを個人輸入して一人で自室でコスプレして自撮りをしているヤバいタイプのオタクである。
四行倉庫も、国民党が大活躍した戦いの舞台であるために行きたいのはなんとなく理解できる。
あと、韓国の臨時政府の建物もそりゃわかる。
北朝鮮レストランも、、まあギリわかってやる。
だけどな!そんなものるるぶに載ってる訳ないだろ!!もう一回表紙を見てみろ!
「フォトジェニック都市!未来とレトロが出会う」
だぞ。
そんな、臨時亡命政府やら、国民党の戦争の舞台やら、北朝鮮の国営レストランなんて載ってる訳ないだろ。
ていうか、そんなところに行きたかったならそれこそ中国のサイトでよかったじゃないかよお…。
「観光本を求めて歩いた私の休日の時間を返せー!」
と絶叫する私に、
「まあまあ。」
と押さえ、適当にあしらいながらも。
「地下鉄、、うわ上海の地下鉄ソウルより複雑かも。これはコピーして手持ちで持ってかなきゃ」
「うわー。このカニがどさっと載ってる麺はなんだろう。めっちゃおいしそう。
あ!この焼き小籠包ってやつ絶対に食べたいなあ」
見たことがないものが次々と出てくる観光本を嬉しそうに
ゆっくりゆっくりめくっていく姿を見て、
やっぱり観光本は偉大だなあと思った。
白紙の状態でなんにもわからないところに、最低限の知識をくれて。
そこからさらにディープな旅にしたいなら自分で掘り返し、
観光本を辿る気楽な旅でいいならそれをそのまま旅をする。
観光本って、実に楽しく基礎的な知識を与えてくれるものだと思った。
あんまりに楽しそうに観光本をめくっているから、
私も次の日仕事帰りに韓国の観光本を買ってしまった。
夥しい情報と散りばめられた写真の中から、最終的に彼が何を選び取るのか。
私たちの旅がどうなるのかはまだわからないけど、確かに旅の準備のワクワクとしたキラキラした時間は何物にも変え難い。
大冒険前夜のように、真剣な顔して上海の情報を頭にインプットしたりメモとして控えたりしている姿を見ていたら私までなんだか行ったことがない街に行くような気持ちになって、ワクワクしてくるのだ。
渡航までもう2ヶ月を切った。
上海が私たちを待っている。
優しい顔して待っている。
こんなにワクワクした気持ちで上海を訪れられることを、この世の全てに感謝した。
そんなやさしい気持ちで今日はおしまい。