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成功者の教え #4 -憧れと嫉妬-
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うまくいっている人を見たり聞いたりするだけで悔しいけど、どうせ自分の夢なんて叶いっこないさ。結局僕は平凡なままだ・・・。
あ、今日は仕事が終わったら彼女と食事をする日だったな。
あともう少しで仕事も終わるから、一気に片付けちゃおう!
仕事を終わらせて待ち合わせの場所へ向かった。
彼女と美味しいご飯に舌鼓をしている時、彼女がふと聞いてきた。そういえば、紳士の人との話ってどうなってるの?
え?な、何?
思わず聞き返してしまった。
だから、、、以前にある紳士の人と会えるかもしれない!ってすごい喜んでたじゃない。これで何か変わるかもって。その後会えたの?ずっと気になってたのよ。
彼女の不意な質問に、行き詰まっている自分を思い出してしまい、美味しい料理が急に味がしなくなったかのように感じた。
あ、ああ。
(し、しまった。その後は話をしていなかったのか、、、紳士に会えたけどその後自分の思ってたのと違う!みたいなことを言えるわけないよな。)
ねぇ、どうしたの?なんか話しずらいことでもあるの?
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いや、そういうわけじゃないんだけど・・・
(確かにあれだけ会いたかったわけだし、会えた時は身体中から喜びが溢れ出していただろうな。。。今思えば恥ずかしい。流石に黙ってやり過ごすわけにはいかないよな。)
ああ、実は会えたんだよ。
ええ!そうなの!よかったじゃない。それでどうだったの??
前のめりな彼女に溺れそうだ。。。。
うん、会えたのはよかったんだけど、なんか僕の気持ちをわかってもらえないというか。
え?どういうこと?
いつもの話なんだけど、この先の自分のキャリアも見えてきたし、このままでいいんだろうかと不安が込み上げる時があるって話をしたじゃない?それについて、色々話して、将来社長みたいになって、自分の好きな車がゆとりを持って買えるようになれば、彼女も喜ぶし、自分も大満足かもしれない。と夢のような話をしたんだ。
うん。うん。それで?
そう、そしたら、じゃあその夢を目指さないのか?って聞かれたんだけど、いやぁ、平凡な僕には難しいです。って思わず言ってしまったら、じゃあ、平凡のままを受け入れたいのか?なんて聞いてくるからさ。そんなわけないじゃん?
・・・それで?
まぁ、それで話が終わっちゃって、バツ悪い感じで帰ったわけよ。紳士は僕の置かれてる状況なんてわからないんだよ。
何それっ!!
いや、だってそうじゃ。。
(こわっ!何?!急にそんなに怒ってんのよ。)
話途中で彼女がまた話し始めた。
じゃああなたは今のままでいいってことなのね?
いや、だからそうは言ってないでしょ。
今のままじゃ不安だって言ってるじゃないか。
ますます分かってないみたいね。あなたが変わりたいという内なる声に紳士は問いかけたんじゃない!今すぐにどうにかなるなんて紳士だって思っちゃいないわよ。そりゃ私だってすぐにどうにかなるなんて思えないわよ。
それに、変わりたいのは紳士ではないし、紳士には何も徳なこともないのよ。なのにすぐに否定して、しかも紳士がわかってないだなんて。
わかってないのはあなたじゃないのよ!
そこまで言わ・・・。
また話途中に彼女が話し出した。
そもそも、あなたは今のままじゃ嫌だから変わりたい。そう言ってたわよね?でもどうしたら良いかわからなくて、Aさんが紳士に出会って変わったって話を聞いときに、僕も運命が変わるかもって大喜びだったわけじゃない。
それを何?念願叶ってようやく会えたと思ったら、紳士がわかってくれなかったからって?それじゃ何も変わるわけないじゃない!
紳士はあなたが変わろうが変わらなかろうが関係ない人なのに、誠実に話を聞いてくださってるわけでしょ?自分の態度に少しは恥ずかしいとは思わない?
う・・。
(そ、そこまで言わなくても・・・)
すっかり楽しい食事も急に変な空気になってしまって、二人は帰ることにした。
私なら自分のした態度を改めて、紳士にまた会ってもらって、謝るべきだわ。
そう言って、彼女は帰っていった。
頭を抱えながら自宅に帰った。
(ふぅー。こんな話になるなんて思ってもいなかったな。僕がおかしいのか?何が・・・。 ああぁ、今日も疲れた。明日はせっかくの休みだから少しゆっくりしよう。疲れた・・・)
う?朝??しまった。
お風呂も入らずに寝てしまったようだ。
ふと昨日のことを思い出した。
(これまであんなに怒った彼女を見たことはなかったな。紳士が変わりたいのではなくて、僕が変わりたいんだよな。確かに。何を僕はムキになっていたんだろう。まぁ、紳士からつかれたことが図星すぎたのかもしれない。少し頭を冷やさなきゃ。)
重い腰を上げてお風呂場へと向かっていった。
今日という1日をどう過ごそうか。昨日のこと、彼女に謝りたいけどまだ怒ってるだろうな。それに、何を話して良いかも分からない。くぅー。とりあえず外に出て散歩でもするか。
外に出てみると、まさに散歩日和だった。そのお陰か今朝の体の重さは幾分軽くなっていた。何も考えず歩いているとふとあのカフェの前にいる自分に気がついた。(あれ?僕は一体?無意識にここにきてしまった。。。せっかくだから行くか?いや、紳士に一体どんな顔をして会えばいいんだ。)
カフェの入り口で行ったり来たりしている僕の姿は、きっと周りから見たら怪しくて異様だっただろう。
そのとき、声をかけられた。
おや、来ていたのだね。
へっ?!
心の準備ができていないのにあの声が聞こえた時は、全身の血の気が引くのを感じた。
あ、あの。
まぁまぁカフェに入ろうじゃないか。
あ、はい。
不意を突かれて頭の中が真っ白になって、はい。と返事したことさえあまり覚えていない。言われるがままにお店へと入っていった。
先日は申し訳なかったね。予定の時間が来てしまって途中で席を離れることになってしまったね。
あ、いえ。とんでもありません。こちらから押しかけて色々と自分の話をしているものですから、むしろ謝るのはこちらです。あのときに、何でやらないのか?と聞かれたときについムキになってしまいました。結局、何もしないで言い訳ばかりしている自分を見透かされたようで、そして自分が問題であることを再認識したことへの怒りというか。
そうだったんだね。そういった気持ちに向き合えたのは良かったと思うよ。
はい。しかも彼女にもこっぴどく怒られました、、、初めての経験です。
わははは。そうだったか。なかなかこたえたようだね。それで、今はどのように考えているのか話してみてくれるかな?
はい。あれから何か具体的になったことはないのですが、わかってきたのは、自分が変わりたいなら、自分が決めて、自分が行動を起こさなければ、いつでも誰かのせいにしたり、本屋で見た社長に憧れを持ちながらも嫉妬したり、変われないことを指摘されてムキになったりするだけで現状から何も変わらない。ということです。
ほう。それでは。自分が行動に起こすとすると何ができそうかな?
そうですね。夢を実現する以前に、彼女と結婚も考えているんです。急に社長になる。って言い出したら彼女もびっくりするでしょうし、色々と巻き込んでしまいます。彼女を喜ばせるつもりが彼女を困らせるようでは仕方ないですから、自分が漠然と感じている夢のようなものは彼女に話してみたいと思いました。
そうだね、とても大事なことだ。他にもありそうかい?
そうですね。。。。今を変えるには何か行動をしなくちゃならない。と感じています。それをもう少し具体的に考えていくことから始めたい。と思えるようになりました。
そうかい。素晴らしいね。それじゃあ、具体的に考えることができたらまた聞かせてくれるかな?
はい!もちろんです。聞いてくれたら嬉しいです。
わはは。じゃあ、また会おう。
ありがとうございました!
お礼を言って席を立った。
帰る時の体はとても軽かった。いや、むしろ空を飛べるような気持ちさえした。
なんだろう。この感覚。1日でこんなに体って変わるものなのか?良く分からないけど、やる気が出てきた。彼女にもきちんと話をしよう!改めて彼女に話したいことがある。と伝えて会うことになった。
やあ。
うん。
(うぁ、彼女まだ怒ってるかも。ちょっとそっけない)
簡単な挨拶をして、ファミレスに入った。
あのさ、この間はご、ごめん。
・・・・。
あれから、紳士に痛いところを突かれて、ムキになった自分を反省したし、紳士にも会って謝ってきた。
あ、そう。それで紳士は何を言ってたの?
いや、特に何も言ってない。というより、僕が何か行動をしなくちゃいけないと思ったってことを伝えたんだ。
それで?
うん、驚かせてしまうといけないと思って言うかどうか迷ってたんだけど、自分が何かを行動に起こすなら、キミにも自分の考えていることを伝えておかなくちゃいけない。と思えたんだ。
え、ううん。
彼女はその言葉に少し構えたようだった。
紳士に助言をもらった時、本屋さんにいったんだ。そしたら、僕も社長みたいになって、自分の好きな車がゆとりを持って買えるようになりたい。と思ったんだ。そして、キミも喜ばせたい。と思ったんだ。
社長?確かに聞いたことなかったかも・・・
そうだよね。でも何をやりたい。いつからやる。とかはまだ具体的なものはないよ。でもそういう気持ちが芽生えたことは伝えておかなきゃ。って思ったんだ。よく分からないけど、社長って成功してるって感じじゃない?なんか漠然とだけど僕も成功したい。って思うようになったんだ。
成功?
彼女が聞いてきた。
そ、そう。そうだね。成功。
(成功?あれ?自分がそう言ったのかな?自覚ない・・。でもそう、成功かもしれない。)
少し反応がぎこちなかったかもしれない。
よく分からないけど、いいね、その響き。ふふふ。
急に彼女がぷっと息を吹き出しながら言った。
真面目に話したことだけど、なんだか二人はその響きに笑ってしまった。
おいしかったね。
うん。
今日の夕食は特に美味く感じた。
家に帰ってお風呂に入ってふと思い出した。
僕は「成功」したいと思っていたのか。自分がふと言った言葉にびっくりした。なぜそう思ったのかと考えていたら、ふと頭の中に浮かんだ人物がいた。
あ、紳士!
そうか、僕はあの紳士を見ていつ間にかあの人のようになりたい。と思っていたのかもしれない。うん、そうだ。僕はあの人のようになりたい。そういう人に巡り会えたんだ!
具体的に何をやるか決めていなかった。でも、僕は改めて紳士に会いたいと思った。
よっしゃ。今度の休みに会いに行こう!
こんなに次の休みが来るのが楽しみになることがあっただろうか。クリスマスプレゼントが待ち遠しい子どものような気持ちになった。
待ちに待ったお休みの日。僕は興奮してあまり寝れなかったが、朝早くに起きて身支度をしてカフェに一目散に向かった。
紳士はいつものようにゆっくりコーヒーを飲んでいた。見つけるや否や声をかけた。
おやおや、どうしたんだい?今日は随分と元気だね。何か良いことでもあったのかい?
はい、伝えたいことがあって急いできました。
ほう。そうかい。では聞くとしましょうか。
ありがとうございます!思ってもいなかったことだったんですが、僕は成功したいです!!!
・・・。
少しの間が空いて、紳士の顔が少しずつ綻んだ。
わっはっはっは。それはいい!面白い!!
いや、真面目です。真面目に言ってますっ!
あー、いやいや、冷やかしたつもりはない。そう感じたとしたらすまなかったね。とてもいいんじゃないかな。また、どうして成功したいんだい?
あー、そこまで深くは考えてはないんですが、あれから彼女と話をしていた時にふと「成功」という言葉が出てきたんです。
成功が何であるかは分からないんですが、自分はその言葉に力を感じていますし、彼女も喜んでくれたのがなんだか嬉しくて。
そうかそうか。じゃあ、「成功する」という目標を持ったのだね?
はい、そうです!目標です!!成功する方法を教えてください!
私が、、、かい?
はい、もちろんです。あなたしかいないです!!
私が成功していると?
はい。え?違うのですか??
わっはっはっは。成功というのは、人それぞれ違うものだよ。だから、皆が言う『成功』はこういうものだ。というのは私には分からないのだ。
そ、そうなんですね。でも、あなたのようになりたいです!
わっはっはっは。わかった。では、キミが描く成功者のイメージに合うかどうかは分からないが、私の考え方や経験なら話はできそうだね。それをキミがどのように受け止めるかは任せるということで良いかな?
ありがとうございます。よろしくお願いします!!
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