見出し画像

AWESOME Choices Issue no.010 「研究と社会の架け橋がしたい」と科学コミュニケーター、のち大学の理学系研究科の教員というキャリア

よしこさん

大学院を卒業後、大学で行われている研究活動と社会の架け橋をしたくて、これまで9年ほど働いてきました。具体的には、科学館での科学コミュニケーター、国立大学・私立大学での研究推進・支援専門職員、そして現在は国立大学の理学系研究科で産学連携・社会連携担当の教員として働いています。この仕事の面白さは、新しいことに挑戦できるところです。 学生時代は、埼玉大学理学部物理学科、東京大学大学院理学系研究科で原子核物理学の研究をしていました。

現在は国立大学の理学系研究科で産学連携・社会連携担当の教員をされているとのことですが、高校時代の進路選択の時のお話について聞かせてください

理科は好きでしたが、分野により得意・不得意がありました。電圧と電流の関係のオームの法則が好きで、一見複雑に見えることも、シンプルな関係式であらわされることに感動した覚えがあります。それと、母親の影響か、推理ドラマやサスペンスが好きで、算数の証明問題なんかは自分が刑事になったつもりで、証拠を集めて、整理して、犯人を割り出す作業のようで楽しいなと思っていました。逆に、暗記して覚えることは苦手だったので、何となく理系の教科の方がいいのかなと思っていました。物理学を選んだのは、それまで教科書で見てきたような物理的な実験をしてみたいなと思ったことと、基礎的なことを勉強して理解できれば、その後の応用は自分なりにできるのかなと勝手に想像していたからです。なので、大学ではなるべく基礎的なことをたくさん学びたいなと思っていました。

大学では、仕事と直接関係する知識やスキルではなく、大学でしかできないような実験や大学でしか学べないような基礎知識や考え方を身につけたいと考えていました。将来仕事はしようとは考えていましたが、パートで働ければいいかな、くらいの考えだったこともあり、むしろ大学時代は本当に自分の好きなことができる最後のチャンスだと思って、好きなこと・やりたいことを優先させようと思っていました。
高校の授業で物理を選択する女子は少なかったのですが、私自身、それほど自分自身の能力が高いわけでもないので周囲と同じようなことをやっていても勝ち目はないと思い、女の子があまり選択しない物理を選択することもあまり抵抗なく決めた気がします。

先を見据えてというよりも、その瞬間にフォーカスして大学に進まれたことがとてもよくわかりました。

では、大学で理学部に進まれた背景について聞かせてください

自分では理学部かなと思っていましたが、高校の担任の先生や親からは反対され、代わりに教育学部を勧められました「教育学部で理科教育などを通じて物理に触れればいいのではないか」と言われて、そうなのかなとも思い、教育学部も受験しましたが、そこでの雰囲気が「自分がやりたいことはできなさそう」と直感で感じました。私は基礎的な物理実験がやりたかったので、それができるのはやはり理学部だと思い、結局理学部に入りました。学部生のときにも実験はできたのですが、もっと深くやってみたいと思い、大学院に進学しました。その時にも、親には就職できるのかなど心配されていたと思いますが、自分としては好きなことができる最後のチャンスだと思っていたので、仕事はどうにかなるだろうと楽観的に考えて、とにかく大学はやってみたいことにとことんチャレンジしました。

親や学校の先生のアドバイスにも耳を傾けつつも、最終的にはご自身の「直感」に従って理学部の門をたたき、歩まれた様子がよくわかりました。

では、現在までに経験したお仕事を選ばれた理由について教えてください

大学院に進学して研究活動をしてみると、先生方が会議や書類作成などで年々忙しくなっていくのを目の当たりにしました。研究者が一般向けに、研究内容や成果をわかりやすく伝えるアウトリーチ活動も、社会とつながる重要な活動ですが、なかなか時間が割けずに、先生方も苦労されているようでした。そこで、アウトリーチ活動など社会とつながる橋渡しが仕事にもなるのではないかと思い、そのとき探した仕事の中で私にもできるかもしれないと感じた仕事の一つが“科学コミュニケーター”でした。応募したところ、幸運にも採用していただき、2年間科学館で科学コミュニケーターとして勤務しました。科学館で働く中で、来館者の方々とお話しながら、一般の方がどのように科学技術や大学での研究活動をイメージしているかを知ることができましたが、研究者の魅力や研究活動の面白さを伝えきれていないなと感じ、次は大学の研究者により近いところで仕事をしたいと思うようになりました。

その時に、URA(University Research Administratorの略)という、研究者が研究に専念できるように研究推進を担う専門人材が存在することを知りました。アウトリーチ活動だけでなく、研究マネジメントや研究活動を活発化する企画・提案なども業務内容は含まれていて、まさにやってみたいと思っていたことだったので、応募しました。国立大学の理学系研究科のURAとして採用していただき、5年ほど勤務しました。この仕事の中で、書類作成支援やプレゼンテーション資料作成など色々なスキルを身につけられましたが、さらに新しいスキルや考え方を吸収したいと思い、そのためには働く環境を変えるのが一番早いと考え、私立大学のURAとしても勤務しました。その後、今は国立大学の理学系研究科で産学連携・社会連携の担当をしています。これまで経験してきた仕事は、理系で物理学を学んでいなければ就けなかった仕事というわけではありませんが、理系で学んだスキルや考え方が様々な場所で働く時に基礎力として、とても役立っています。

科学コミュニケーターもURAのお仕事も、研究の現場に深く関わられていたからこそ出会うことができた仕事だということがとても良くわかりました。

では、「理系を学んだこと」や「リケジョ」に対して何か思うことなどあれば、教えてもらえますか?

理系で学んだことは、単に理系の仕事につながるだけではなく、たとえ直接的に将来の仕事とつながらなくても、物の考え方や、誰もやったことがないことに対して、どのように考えて、計画をたてて進めていくか、また自分一人ではできないことをどう協力を得ながら進めていけばよいかなど、様々な仕事に適用可能な能力だったんだと思っています。私もリケジョなんだと思いますが、自分を「リケジョ」と認識することは、ほとんどありません。

理系での学びは、実はどんな仕事でも求められている能力ですね。専門だけではない理系での学びの重要さは昨今のSTE(A)M教育で言われている部分と共通すると感じています。

では最後に、これからの進路を考える女子中高生や理系学部で学んでいる学生の方などに向けて、ぜひ一言アドバイスをお願いします。

将来就きたい仕事を具体的に考えている方も、自分の興味があることがあったら、将来仕事につながるかどうか気にせずにまずは進んでみてください。もしかしたら、それは理系や文系といった分類ができないかもしれませんが、いま存在している枠にとらわれずに進んでほしいと思います。私自身、将来こういう仕事がしたいと考えていたキャリアプランの通りになったことは一つもありません(笑)
自身のキャリアを考えることは大事ですが、答えがあるものではないので悩むこともあると思います。時には少し力を抜いて、自分が楽しいと思うことに没頭してみると、新しい道も見えてくるかもしれません。

周りの人と少し違う道であっても、みなさんが、みなさんらしく生き生きと輝いていける道をぜひ進んでほしいです。

最後に

将来の仕事に囚われるのではなく、今の自分の興味にまっすぐに向き合う中から自分が携わっていきたいところを見つけて、キャリアを歩んでこられたのがとても良くわかりました。
今のお仕事にたどり着くことができたのも、「物理についてもっと学びたい」という気持ちを大切に大学に進まれたところがあったからだなと感じました。
よしこさん、貴重なお話ありがとうございました。

理学ナビ、知っていますか?

よしこさんは、国立10大学理学部が立ち上げた「理学ナビ」の事務局もされています。

「理学ナビ」は、理学の魅力を伝えるウェブサイトです。理学部でのキャンパスライフや卒業後のキャリアパスなど、先輩達の体験やメッセージをまとめて掲載しています。皆さんが感じている不安を少しでも解消し、みなさんが興味をもったことや好きなことを楽しめるよう私たちはサポートしています。ぜひ、一度サイトをのぞいてみてくださいね!

あとがき

いかがでしたか?
AWESOMEでは、理系で培ってきた強みを活かして、さまざまな業種や職種で活躍する女性の「選択(Choices)」から見えてきたストーリーを紹介していきます。
ぜひ、マガジンのフォロー、よろしくお願いします!

AWESOMEは理系やリケジョに関する情報やイベントなど、随時開催しながら、リケジョたちとともに私たちがありたい未来に向けての事業を進めていっています。
関心のある方は、まずは公式LINEからお友達登録をお願いします!