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淡乃晶
2018年12月7日 23:45
汽車が、揺れる。どこまでいくかわからない。だけど、私は乗っていた。旅支度は簡単に。荷物は最小限に。身一つで飛び乗った。窓から見える冬の街。白いシーツのように柔らかい景色を見ながら私は、深緑色の椅子に背中を預けた。汽車の中は、静かだった。乗客はふたりがけの椅子にみな、ひとりしか座っていない。かく言う私もそうである。みな、ひとりだった。だから話すこともない。ジュー