ビジネス・フレームワークという思考停止ツール (131/365)
4P、3C、SWOT分析、5フォース分析、ビジネスモデル・キャンバス、いわゆるビジネス・フレームワークは数多くあります。
社内でも、事業提案資料を作成したことのある方なら、ひとつやふたつ使ったことがあるのではないでしょうか?
これらのフレームワークの多くはコンサルファームで考案されたものです。使い方によっては極めて効果的なものですが、もともとの出自を考えなくてはいけません。
まず抑えなければいけないのは、これらのツールは、
無から有を生み出したり、意外な気付きを与えるものではない
ということです。どちらかと言えば、
直観的に分かっていることを客観視して整理したり、他人を説得する
ためのものです。なぜなら、もともとコンサルファームでは、クライアントの幹部を納得させるためのものですし、大学教授なら、自説を説得力あるものにするためのツールだからです。
もうひとつの注意点は、これらのツールは関係性のある瞬間を捉えたスナップショット、すなわちスタティックな視点ですが、実際の事業では関係性や状況は絶えず動いている、ダイナミックだという点です。
ここを見逃すと、いかに有効な戦略であってもすぐに陳腐化します。
これらの注意点をわかって使う分には、ビジネス・フレームワークはとても優れたツールです。
しかし、いつもの目的と手段の取り違えで、フレームワークを埋めれば仕事が終わったと思う人たちがいます。直観や仮説、意図のない状態でフレームワークを埋めても何も生まれません。
経験談を話します。
ある企業で、新事業の社内コンペがありました。主催者の幹部が、
「必ず、SWOT分析、5フォース分析を実施すること」
と提案書に条件を付けました。
私は事務局にいたのですが、ある領域で極めて類似性の高い2つの提案がありました。どちらの提案も甲乙つけがたく、同じ機会に着目しているものの、実行プランは全く異なりました。
そのときの幹部の発言を忘れません。フレームワークを取り違えた典型的な発言だからです。
「どちらもよい着眼点だと思うが、同じフレームワークで分析したのに結論が違うのはおかしい。指摘して再提出するように。」
驚きです。事業提案は答え合わせできるようなものではありません。もっとクリエイティブなものです。ましてや、違う人間の提案なのですから、同じフレームワークを使ったからと言って、結論が異なるのは当然です。
まず、仮説があって、フレームワーク分析によって提案を強化する。その過程では当然担当者の個性が出てしかるべきです。
工場の定型作業の効率化とは訳が違います。いや、工場の効率化でさえ、何通りもの改善策があるはずです。
多様性とか、個性尊重、とかいう割には、社内でも最も創造的であるべき事業開発の現場で、いまだに、このようなメンタルモデルが横行していることに驚きを禁じえません。
こういう人たちは、受験の勝ち組かもしれないけれど、着想から計画、実行、振り返りまで一通り何かを生み出すことを経験していないのではないかと考えています。それが何であれ、体験したことがあれば、こんな発言にはならないはずです。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。