春を感じる山菜~主な種類と食べ方~

山菜は、古来から日本の山野に自生する植物です。ハマボウフウのように海浜に自生する食用植物も「山菜」に含まれ、ノビルやヨモギなど、平地の土手や畔道に自生する植物で食用になるものは山菜とは区別し「野草」と呼びます。

縄文時代の三内丸山遺跡からは「たらの芽の種」が発見されましたが、日本最古の歌集『万葉集』にも27種もの山菜が登場します。縄文時代や奈良時代より人々が様々な山菜を食べていたことが伺えます。

江戸時代には、飢饉で米や野菜が不作となった時、山菜が多くの人々の命を救ったという記録も残っています。20世紀になっても、戦時中や戦後の食糧難の時期には、やはり多くの人々が山菜に救われたのです。

一般的に「野菜」は品種改良を重ね、味がよく収穫量も安定し、多くが季節を問わず流通しています。一方、山菜はアクや苦みがあり、収穫量は少なく出回る季節も限られますが、独特の風味や季節を味わう楽しみを感じ、古くから人々に愛されてきました。


人気の山菜8選

近年では、スーパーなどの売り場でもさまざまな山菜を目にします。200種以上はあるといわれる山菜の中から人気の高い8種について、特徴や食べ方をご紹介します。


①たらの芽 (3月~4月初旬・山間部は6月頃まで)
「山菜の王さま」として人気があり、道路脇や林道などひらけた明るい場所を好みます。栽培ものは天然ものより少し早い2月~3月から店頭に並びます。

■おいしい食べ方
天ぷら(葉が少し大きくなった状態が香り高く美味)、和え物(ごま和え、味噌和えなど)、炒め物、肉巻き、パスタ、シチューなど

はかま(根元の固い皮)をはがし、天ぷらなどには洗ってそのまま使い、おひたしや和え物は熱湯でさっと茹でてアク抜きを。沸騰させた2%の塩水(水1Lに対し塩20g)で2~3分茹でて冷水にさらします。

■成分・効能など
山のバターといわれるほど良質なタンパク質と脂質を含みビタミンも豊富。カリウムやβカロテンが豊富なほかマグネシウム、リン、鉄分などのミネラルも含みます。


②ふきのとう (2月~5月)
早春、雪融けの頃に土中から顔を出す春の使者。冬眠から目覚めた熊が一番初めに口にする食べ物といわれています。

■おいしい食べ方
天ぷら、みそ汁、フキ味噌(細かく刻んで味噌と和えたおかず味噌)、炒め物、パスタ、グラタン、アヒージョなど

つぼみがまだ硬く閉じている小ぶりのものが美味。クセになるような強い苦みが特徴。沸騰させた2%の塩水で3~4分茹でて冷水にさらしアク抜きを。天ぷらはアク抜きせずにそのまま揚げます。

■成分効能など
カリウムを豊富に含みます。苦味成分はアルカノイドとケンフェノール、香り成分はフキノリドというもので、健胃効果があると言われています。


③うど (4月~5月初旬)
大きく成長すると食べられない(使いものにならない)ことから「うどの大木」などと言われますが、若芽は香り高くみずみずしく、深みのある味わいと仄かな苦味、シャキシャキ感のある歯ごたえが魅力です。

■おいしい食べ方
天ぷら、酢味噌・ごま味噌和え(香りと歯触りを楽しみます)、炒め物など。採れたての薄色のウドは、皮をはがし味噌などをつけて生で食べるのも美味。

栽培ものが出回り身近な山菜となりましたが、やはり天然ものが断然風味豊か。皮の近くにアクが多いため、厚めに皮をむき酢水にさらす下処理を。アクが抜けて美しい白色に仕上がります。

■成分・効能など
クロロゲン酸という抗酸化作用を持つ成分を含み、日焼けによるメラニンの抑制などの美白効果があると言われます。豊富に含まれるアスパラギン酸は、疲れに効果的です。カリウムも豊富で、葉酸の含有量も多めです。


④わらび (4月~5月)
「五月わらびは嫁に食わすな」という諺があるほど昔から日本人に愛され、全国各地の山に自生する身近な山菜。独特の形と歯ごたえが特徴。地下茎でつくるわらび粉を使ったわらび餅も有名です。

■おいしい食べ方
炒め物、ナムル、お浸し、天ぷら、パスタなど。

茎がしっかりとしていて産毛が多いものが新鮮。首が上を向いてないものが柔らかくて美味。おいしさの決め手はアク抜き。重曹と熱湯を入れた鍋にわらびを入れて一晩置き、ゆで汁をすてて半日ほど水につければアク抜き完了です。

■成分効能など
ビタミンB2と葉酸が豊富。低カロリーで糖質も低いためヘルシーな山菜です。乾燥わらびにすると栄養価が高まり、カリウムや鉄分は生のものより10倍以上も増えるといわれます。


⑤こごみ (5月~6月・青こごみ)
ワラビやゼンマイと並び人気の高いシダ植物。アクやにおいが少なく下処理の手間いらず。収穫量が少ない赤こごみと異なり、青こごみは全国各地でとれ比較的身近な山菜。

■おいしい食べ方
天ぷら、和え物(ごま和え、酢味噌和え、白和えなど)、お浸し、サラダ、パスタ

先端がよく巻かれ茎がしっかりした状態が新鮮。アクが少なく採れたてのものは生食も可。優しい歯ざわりがおいしく、生のまま天ぷらにしたり、軽く茹でて和え物、お浸しもおすすめ。和え物やお浸しは独特のヌメリが美味です。

■成分・効能など
抗酸化ビタミンのβカロテン、ビタミンC、ビタミンEをバランスよく含みます。葉酸も豊富なうえ、不溶性の食物繊維が豊富なので整腸作用も期待できます。


⑥ふき (4月~6月)
「ふきのとう」は「ふき」の花芽になります。山菜シーズンには茎が細くて短い「山ふき」が出回ります。平安時代には既に栽培されていたほど日本人にとって馴染み深い山菜です。

■おいしい食べ方
煮物、佃煮、炊き込みごはん、きんぴら、サラダなど

香りと苦味、シャキシャキの食感、うまみをいかす煮物が美味。「ふきの青煮」は代表的料理。調理前は葉と根元の硬い部分を取り、まな板に並べ塩をふって転がす“板ずり”を。香り良くするため葉も一緒に茹でてアク抜きします。

■成分・効能など
食物繊維とカリウムが豊富。ふきは水分が96%近くあるため際立って高い有効成分はありませんが、ポリフェノールなどの機能性成分を多く含みます。


⑦ぜんまい (4月~5月)
独特の風味と歯ごたえのある食感が魅力の山菜。「生ぜんまい」の中で天然ものはわずかで、出回るものの多くが栽培もの。惣菜などに使われるぜんまいは「乾燥ぜんまい」を水で戻したものがほとんどです。

■おいしい食べ方
お浸し、和え物、煮物、ナムル、炒め物、きんぴら、炊き込みご飯など

産毛が多く葉が広がっていない10~20㎝くらいの新芽が食べごろ。茎が太くしっかりしたものが美味。綿毛を取り除き、重曹を加えたお湯で緑色に変わるまで茹でてアク抜きを。茹でた後そのまま水に浸して冷蔵庫で保管し、毎日水を替えれば1週間ほどもちます。

■成分・効能など
ビタミンC、ビタミンAが多く、食物繊維も豊富。βカロテンのほか、カルシウムの吸収を助けるビタミンK、葉酸、鉄や銅も豊富。乾燥ぜんまいには、たんぱく質とカリウムが多く含まれます。


⑧せり (1月~4月
春の七草として馴染み深い早春の山菜。全国各地の山野に群生します。たくさんの新芽が競い合って生える様子から「競(せ)り」という名前がついたとか。シャキシャキした歯ごたえと強い香りが大人気の山菜。

■おいしい食べ方
鍋料理、和え物、お浸し、汁物、サラダ、薬味など
お浸しや和え物は沸騰した2%の塩水でさっと茹で冷水に放しアク抜きを。薬味や鍋料理は洗ってそのまま使い食感を楽しみます。東北では昔から“せり鍋”に、秋田では郷土料理“きりたんぽ鍋”に欠かせない食材として親しまれています。

■成分・効能など
漢方・生薬としても有名。青々とした葉や茎にはβカロテンがたっぷりと含まれて、食物繊維も豊富なので、腸の働きを整える効果も期待できます。特有の香りにはオイゲノールが含まれて、抗菌・殺菌作用、鎮静作用があると言われます。

⚠️山菜採りの注意点

鮮度が高いほど風味のよい「山菜」。自分で収穫したものは格別ですが、山菜採りには気をつけるべき注意点が数多くあります。まず採取が許可されている場所かを必ず確認しましょう。

次に帽子や長袖、長ズボンなどの装備や服装、山道の下調べ、天候の急変、通信機器の不具合による遭難の危険への備え、害虫や植物毒、野生動物への対策も不可欠です。

食べる部分を食べられる量だけ採り、常に環境に配慮するのが山菜採りの基本ルールです。山菜と似た毒性植物の誤食事故も多いため、経験豊富な人に同行してもらうのが安心ですね。

▪️参考文献
<WEBサイト>
ウィキペディア(Wikipedia)
マイナビ農業
山菜屋ドットコム など

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?