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短歌作品

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#塔

ある中華街(2016年7月)

うれしいときみが言ったらうれしいな 太陽がひっくり返っても

ナチュラルアメリカンスピリット喫いながらこの世の続きはどうなるのかしら

500円玉が財布に2枚あるちょっとうきうきする大通り

降りそうな7月の朝 目を閉じてあなたのかなしみをめぐらせる

海岸通りをあなたと歩く 商店街をあなたと歩く 記憶はずっと

神戸なら神戸のなかに心なら心のなかにある中華街

くちびるに味付け海苔を貼り付けてへ

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においで醒めた(2016年1月と2月)

御社、って口にするとき恥ずかしい 高価な服を着てるみたいで

参拝の帰りにいなり寿司を買い駅のホームで食べれば冬だ

憎しみは輪郭を得て憎しみは奔馬となってぼくを出てゆく

 *

一時間すわったままで聞いていた話のオチがおばあちゃんかよ

寝転んで就活のこと考えてきょうのアルバイトはさぼりたい

友達が最低な夜、飲んでたら最高な夜 まちがってゆく

使いきるだけなのにただ難しいひとりぐらしのココ

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吸わないけれど(2015年12月)

3年ぶりにメールを送ってきたひとの、枯木立がぎしぎし鳴っている

自転車の空気を入れて漕ぎ出すとけやき並木が明るんでいた

バイト帰りにお店の前でファミチキを食べる A very Merry Xmas!

噴水のたまたま止んでいる池に建物の灯りは落ちてから揺れる

河原町三条六曜社地下店の吸わないけれど好いマッチ箱

ステファンさんに渡邉と間違えられて渡邉として返すほほえみ

(初出:「塔」201

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