あわいにインタビュー③ イラスト 根本祐杜さん
────根本祐杜さんと小松菜々子さんはもう結構長い付き合いなんでしょうか?
根本:知り合ったのは2、3 年前だと思いますね。共通の友達がいまして。小松さんが京都で暮らしていたとき、アーティストが集まるホテルみたいなところに住まれていたんです。僕の友達で、写真家の三保谷将史(みほたに まさし)さんっていう方がいるんですけど、そのお家に遊びに行ったときに、小松さんに最初に会ったと思います。
▼ 公演に寄せて三保谷将史さんからいただいたコメント
────このフライヤーの裏側に使っているイラスト(下の画像)、こちらも根本さんですね?
根本:それは去年ですね。小松さんが渋谷で「1e48(ワンイーフォーティーエイト)」というダンスグループで活動していまして、その時のイメージ・イラストです。体が結合するイメージみたいなものをもらって書いたものですね。
────今回の公演のメインビジュアルの制作は、どのように進められましたか?
根本:今回のイラストは、小松さんが色々考えていることや、イメージみたいなものを言葉でもらいました。ディスカッション的なことをして、考えていきましたね。
────体の中に、アトリエKOMAがあったり、漁港や、猫、お地蔵さんがいたりと、街がありますね。
根本:ほったて小屋みたいなところ(アトリエKOMA)からダンスボックスまでの街の風景を写真で送ってもらいました。それらが、人の体のなかを通過するイメージで書きました。
────人の体の中を通過するアイデアは、どういう所から来たのでしょう?
根本:結構前からこのフライヤーのイラストのお願いをされていて、初めのほうは、釣竿のイラストを描いてたんです(下の画像)。
根本:そのあと、要素がいろいろと変わってきて、書き直す必要があるなという感じで、公演の概要が明確になっていったタイミングで、このイラストを描きました。
────最後、dBからうんこ出てます?
根本:それは、うんこというか、どうなんですかね? そのうんこの部分の絵は、すごく昔に書いていたものです。たまたま最後のところをどうしようかなと思っていて、昔あった絵と今回のために書いた絵を組み合わせたような形になりました。自分はダンスボックスの劇場に行ってないので、本当にイメージでしかないのですけど。劇場っぽいイメージ、客席があって壇上にライトがあってみたいな、すごくシンプルなイメージを組み合わせてみました。
今回のように、自分の絵がフライヤーになるみたいなのは初めてですね。趣味的な感じでは描いていたりしますけど。僕は普段は彫刻をやっていて、ダンスや演劇的なところに携わる機会があまりなかったです。
────彫刻作品の写真をホームページで拝見しました。あの、めっちゃでっかいうんこみたいな・・・
根本:そうですね、それはキャラクターというか。
『NEW SHIT PRESIDENT』っていうタイトルで、うんこに埋まってしまった禿げたおじさんなのです。見方がいろいろあって、うんこっていう物質に、有用性を与えたいというか、うんこ自体の価値を反転させるみたいな見方もあると思いますし、あとはキャラクターとしても。ずっと作りたかったんですよね。
────「うんこ自体の価値を反転させたい」、それはどういうことなのでしょうか?
根本:うんこってとても彫刻的な物質だなと思っていて、言ってみれば、全人類が持っている造形ですよね。腸の形をトレースして、それがそのまま排出されるのは、ある意味でいうと無意識の彫刻というか。そして、当たり前のことなのかもしれないですけど、水で流されて、存在的にはなかったことにされていくというのがあって・・。でも、江戸時代では、畑の肥料に使われていたことがあったわけで、その時代背景によって有用性が変わっていきます。うんこを有効活用しようということが言いたいのではなく、一個のメタファーとして設定しています。
あのうんこおじさん自体が、僕の中だとアーティスト・マインドをもった高尚な存在という、そういうイメージがあるんですよね。まぁ、うんこおじさんの話は書かなくて全然いいですので、菜々子さんの話を……。
────いや、めっちゃおもしろいです(笑) 小松さんの公演とも繋がっているような気もしないでもないです。
ちなみに、小松さんが根本さんに送った写真群の中で一番気になった所や、実物を見てみたいと思った場所ってありますか?
根本:絵では書いてないし、道中にも多分出てこない場所なんですけど、公共の彫刻みたいなものがあるらしくて。
────三国志ですかね?
根本:いや、もっと抽象的な……。
────なんやろ?
根本:みんなのベンチというか……勝手に彫刻の有り様が、人によってカスタマイズされているような場所が神戸にあるらしくて(編集註:阪急神戸三宮駅前のさんきたアモーレ広場)。その場所の話をよく聞いていましたね。だから何かが気になったというより、小松さんの視点が自分の中ではポイントとしてありますね。
あと、小松さんから送ってもらった写真のなかで、自転車の写真が多かったです。今回、自転車は書いてはないのですけど、自転車が好きな人が多いのかなというイメージがありますね。
────この街では自転車マストですね。みんな自転車で商店街も乗りまわして、結構、高速に。そんなところです。
根本:最初に話をもらった時は、小松さんが京都の鴨川での道のりを自転車で走っていたときの話を聞きました。釣り人のおじさんが鴨川にいて、ほかの人たちはその鴨川の風景を見てるはずなのに、なぜかそのおじさんのところに視線が一点集中して、その一瞬だけおじさんが主人公みたいになる瞬間があったという話です。なんかそういうことをやりたいんだってことを聞いて、それで釣竿の絵を書いたんですよね。だから自転車は街を移動するツールとして、非常に身近な存在なのかもしれないですよね。
────先ほど、根本さんがおっしゃっていた公共の彫刻のこととも繋がるのかもしれないのですけど、小松さんの今回の作品の作り方が、いわゆるダンスのテクニックを持ってない人たち、踊ることが日常的ではない人たちとも“ダンス”を共有するあり方を探っている感じがしています。誰もがダンスを見つけたり、踊る種を持っているのでしょうが、それがいわゆる「さあ!みんなで踊りましょう!」っていうようなことではなく、例えば歩くという行為や、街の中のあるものを観察することなど、そういった行為の中からダンスを探っていきます。先ほどお話された、彫刻のもつ意味合いが人々によって勝手に作り替えられていく事例と、小松さんが今回探っている方法が、繋がってくるなって感じています。
根本:そうですね。その場所にずっとあるものなので、彫刻自体は変化しないですが、人の有り様が変化して、使い方や用途が変わってくるっていうのはありますよね。
────根本さんの作品も、人の関わりによって用途が変わっていくことを望まれていたりしますか?
根本:僕は、ずっと屋外に置いておくことを前提に作っている作品はあまりないので、何とも言えないですけど。でも、うんこおじさんのミニサイズ・バージョンが実家の駐車場というか道路脇に置いてあって、それが幼稚園のお散歩コースのルートにちょうど重なっていて、撮影スポットみたいになっているんですね。
────やばい(笑)めっちゃいいですね。
根本:僕のアトリエがそのすぐ近くにあって、声が結構聞こえるので、その風景を遠くから見ている感じですね。でも嬉しいですよね。勝手にそういう場所になっているのは。
────子供たちはその上に乗ったりするのですか?
根本:上には乗ってないですね。そんなに大きくないし。集合写真ですよね、修学旅行の。真ん中におじさんがいて集合写真みたいになっていて。
────彫刻をされている中で、小松さんのダンスはどんな風に見られてますか?
根本:彫刻ってまずアウトプットするまで時間がかかりますよね。作品が作者本体ではない、作品とどこかで繋がっている部分もあるとは思うのですけど。ダンスって小松さん自体が作品になるというか。どこでも、どの場ででもできるわけで。だから自分の身体自体がそのまま素材になることは、ダイレクトな表現方法だなと思って見ています。
────踊ってみたいなって思うときはありますか?
根本:いや〜自分はあんまりないですよね。周囲の目を気にしてしまうとか。
────今日はありがとうございました。めっちゃ面白かったです。
根本:大丈夫ですかね、めっちゃ自分の作品の話しちゃいましたけど・・・
────大丈夫です。すごく繋がっていると思います。
公演情報
DANCE BOXアソシエイト・アーティスト 小松菜々子 単独公演
『あわいにダンス』
日時:2023年2月4日(土)・5日(日)
集合場所:アトリエKOMA(兵庫県神戸市長田区駒ケ林町2丁目2−3)
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