淡原 鳳珠
詩篇をまとめて
文芸及び文明批評
断片掌説 諸寓話
その他 企画等
ソネ(ソネット)をまとめて 代行者 戯れ 四肢に 息巻く 漆黒 城塞の装飾 時間を 隠す 再び其処にと 視姦の桎梏 軛を断つのは 踊りの拍数 名指す 掟による 影縫いが 切除の愛誦 踵に 口付け 家畜の形骸 轡を 釣り上げ この朦朧へ 外傷告げ 発つ 代行者 腹上を這う 幾その蝮 懲罰の果てまで 恥を知らず 彼女を還す 悠久 こそが鐙と 肉欲の膨張 削ぎ落とし かつ 簡素な線で その炯眼 無縁な 代行者を 造り変える 疎遠に 三文役者 官能 溶け込む 瀝青
似非三韻句法 常に他者である独白 寄絃渡し この懊悩 の白き 尋問の果てに 疑い応え 揺れ輝く 鉄鎖は 風下 亡霊の様な 枷を逃れた 劃定に 灰汁に 身を浸して 渡した 私を 仕事として 裂く事は波 の未了 抱き合わせで 冒瀆された 形の 御足を払い除けた 厳しい思考 その計算の 及ばぬ処へ 遁げた 名も無い 虹彩の不在 への移行 話さなければならない 癒えた それら責苦を散らす 私を 介し 独白 その毀損は 定めの 贄だ 調伏した 柘榴の 薄まった 髪に 生
「囮」をソネ集に追加。https://note.com/awahara_auch/n/nd1b2cb3d756a
※常時校正中 網膜的な芸術と観念的な芸術についての考察 聞き飽きた疑問詞を用いた呼びかけを根と定め、それらの変奏を根と調和するように重ね合わせて復唱してみよう。 「芸術とは何か?」 「芸術とは何処か?」 「芸術とは何時か?」 「芸術はどのように為されるか?」 「芸術は何故に為されるか?」 「芸術は誰によって為されるか?」 この様な問いかけは応答を想定しているのだろうか。恐らくこの問いかけに直接答える様なものは何も無い、漠然と応えられるだけであろう。誰によって?誰でも
「冬の為に」をソネ集に追加。 https://note.com/awahara_auch/n/nd1b2cb3d756a
弁証法についての歩き書き(粗推敲) 荷造り 我々は我々の為す事である行為を直接観察することができない。それは常に何かしら対象への働きかけであり他動詞的だ。何ものかに媒介されるのは自動詞的な行為でも同じで、謂わば自身を媒介として自身に働きかけている他動詞という形でその行為を被るのだ。行為主体(便宜上行為主体と呼ぶ事にしたが、それはある個人ではないし、誰でもない行為自身だ)の働きかけが自己自身に作用し回帰するのだとしても、そういった単純な表記の底には必ず媒介が隠されている。行
幽霊 凡ゆる都市の仕事が止んでる空白には幽霊が潜んでいるのだとという。潜んでいるというのは我々の表現であって、彼等からすると其処に、言うなれば底に、留保付きとはいえ存在している。開闢当初、凡ゆる身体は朽ちて地表の経済に飲み込まれ循環していた。身体として在ったものの殆どは追跡しようもないくらいに地表と混交されてしまった。それはもう手出しすることのできない自然だ。そして其処から手を替え品を替え地表やそこに聳える忙しい文明となったのが、その中でも墓が出来てから事情はだいぶ変わ
魚の缶詰 僕は釣り上げられてすぐに内臓と別れさせられ缶詰にされた。海だか川だかを泳いでいた時の事は何一つ覚えていない。僕は今になってやっと間違いなく明晰に語ることができるようになった。生きていた事など丸っ切りすっかり忘れてしまっているが、幸か不幸か僕はまだ完全に無という訳ではないらしい。僕は死に損なった。僕はこの出口のない自らが放つ悪臭と同居しながら、鼻声で何かを語っている。語ると言っても喋っている訳ではない。ただ溶けているだけなのだ。僕がありもしない独語をやめて何かし
不問 宣 う 反故に 至る 毀ち 来る 処の 喪たる 呵す も架す 帆 が唸る 賭 場の女巫 が浸る 日の 横 撓むのは 淪歇の 期待 綰結 丹闕の底 言わねば ならぬ 何処の懐 叱言 囚われ 仕事を 死と 馳る 隔絶の戸 瞻る 矍鑠 亦 赫灼 と 泳ぐ 護衛も 無しに 幽姿 その 玉肌 游溶 を 言うよう 讃え 降る 禍機が 今に 矧ぎ 穿つ 空隙 迄 解送する 望断し 薇帳が揺れ 燻る 嫣香なり 夢なり 骨子 を拒絶し 玉玦の あの 未だの時へ 迎える
この作品は邦家で最もよく親しまれているという。ここで用いられる親しみやすさというはどれだけ世間へ浸透しているかという尺度でしかない。この様に一見冷酷で性急に見える仮定は独断や個人から発し個人へと戻る判断ではなく、寧ろそういった個人の裁量に待ったをかけ、性急な判断を留保し、ある程度の考えを、考える猶予を与えてくれる。そこでは忍耐が働いているし、知性のせっかちな清掃活動をその中で明晰に捉える事ができるようなる。 個人の感覚から離れ自由になる為には先ずこの様な暫定的で容易に処
決断する時が来たのだ。彼は招集された。科されただけの使命によって、自らの選択によって死ぬ為に呼び出された。彼の狂客人生は打ち止めになる。彼は決断を先延ばしにしていた。それは彼が奇妙な形で所属していた――というよりも惰性で関係していたに過ぎない――ひとつの組織共同体にとっても同じことだった。その組織共同体もまた起源と未来との間に位置しており、彼にとって最も身近なものであったが――やはりそれでも異質なものであり――単純な外圧によって消し去られようとしていた。彼は純粋な組織の部分と
頌 蛇体による 断絶 の渦中 奪取された 死に 沈む頸 吐出され 大地を 厭うと 痙攣した 暁の 媾い 時に 孵る 屈辱は 艶かしい帯: 絶たれ 孤絶の 厳しい 肌 然れど 波濤の 破片たる: 貴女の 潤んだ 虹彩の程 焚き 臥せて 説き伏せて 宛ら 滝津瀬 留めぬ 限り 否 絶え間なく 飢え 続け 拘う 別の 離隔で 酔えど 臍 匿うは 行為の 未熟に 眼 は差さず 裡に 一重の 追放の令 放った 火-陰へ 貴女の 分れ身 秤 の如く 吊られ 動かぬ その 逍遥 偉
数多の仲間達が斃れた。直接面識のない仲間達が死んでゆくのを感じた。生き急いで手脚をもぎ取られ、死ぬことも出来ずただ蒼穹を仰いでいる彼のことや、使われずに埋められた兵器の在処についての噂が生温い風に乗って俺のもとまでやって来る。俺は死ぬことができるのか。立派に役目を果たすことができるのか。 俺達の役目とは制覇することだ。未知なる敵を全て従えることだ。全てを一つの名の元に集結させるという目的から発した制覇せよという至上の命令に従うこと、それが俺達に与えられた唯一無二の使命だった
《使者の到来を夢見ている》
手を 編む 前迄 発って 此処を 経た だが 未だ 過ぎ 鐫る 懊悩の 白い 贖えない あの 不幸な… と口籠り 遅疑 胸の前で 契り 来ない 期待 を延べ へ据え 額を晒し 媚態を通し 観音開き の 小窓に 翳す手 償い 倦ねて 降り注いでいる 実芰答里斯 等を 摘み; 児戯 在り 栖にと 損ねた 宣誓 一つの 代わりに 還らないと 遅延を 由に 外地へ 逗留する旨 を 供えた この頃 骨壷から 撒かれ 積もり散る 日々の裡 底の方 懐かしい 典礼の 書の背 の
直ちに降下せねばならぬ。もはや考えている暇はない。俺は使命を与えられた。それを遂行せねばならぬ。その使命とは主の意向を伝える事だ。俺が主の使者として主の思考を把持し、主の思考の一切の要約として人々に前に顕れなければならない。俺が下界に降り立てばそれは完了する。 時間がない。俺は俺の卑しい存続や地位をかなぐり捨てて、この恩寵――人々はそう呼ぶことしかできない――の圏域を離脱し、一つの球体へと身を投げる。行き先は恐らく決まっている。俺が体を放り投げれば忽ち下界に固有の法則が、重力