離島暮らし8年目の財産目録づくり
利尻島というところに住み始めて、満7年を迎え、8年目に突入した。正直、島に来た時、こんなに長く住むとは思っていなかった。20代から30代になり、パートナーと出会い、子どもが生まれ、淡濱社という事業を始め……利尻島に来てから人生イベントが本当に多い。それから転機も。
30年ちょっと生きて、それなりの経験と知識が(偏っているにしても)身について、集まったもの、たまったもの、持っているもの、そんなものに思い馳せるようになった。
自分は何もできていない、自分は何も持っていないように感じる時もあれば、自分にとっては何でもないこと、普通にしていることでも、実はほかの人からすると持ち得ない何かであることもある。それをひとつひとつ思い返したり、整理したり、明らかにしたりすることで、これからやりたいことやできること、自分が持ち合わせているもの、それを活かす方法が見えてくるかもしれない。
というわけで、自分を振り返るためのZINE『INVENTORY』の制作をはじめた。〈inventory〉は「棚卸」の意味がある。ゲームの持ち物欄にインベントリと表示されていることがあるのでなじみがある。
invent(発見する)+ory(もの)から成り立っており、inventarium(死亡時発見された財産目録)というラテン語に由来する。
死亡時に発見された財産目録──この意味にとても惹かれた。自分という存在が死んだとき、それが自分で在ったという証になり得るものが〈inventory〉なのかもしれない。
そんなわけで『INVENTORY』と名付けたZINEでは、あるテーマを掲げてエッセイや本の紹介、気になった事柄を取り上げていく。定期的に制作をしたい所存ではいる。でも無理はしない。
もう一つ、今作では「対話」という部分も大切にしたいと考えている。これは時に他者であることもあるし、物事や事象である場合もある。多くは私の中にある複数のアイデンティティとの対話になるかもしれない。自分自身との対話だ。
私自身を取り巻くさまざまな情報を書き残して保管し、それを眺めながら自分の中にあるさまざまな「顔」と対話をする。そこから導き出される何かをすくいあげて、行動に移してもいいし、解決したとして忘れてもいい。それを繰り返して、積み重ねて、自分にとってより良い在り方を模索する。そして、私が死んだとき、これが「私が在った」という財産目録のようなものになり得るかもしれない。そんな制作意図をここに残しておこうと思う。
すでにVol.1は制作済でオンラインショップにて販売をしているので、気になる方がいましたらお手に取っていただけたら嬉しいです。
noteではZINEの中に収められなかった内容や、制作後に書きたくなったこと、テーマに関わるような近況など、プライベートも淡濱社の活動も、書き残しておきたいことは何でも。財産目録の断片になりそうなことを書き留めておこうと思う。