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あわふじ
2023年10月12日 20:40
「一昨年も去年も飢饉だった、また今年も飢饉になると? おばあ、いい加減にしてくれよ」村一番の長老で、「おばあ」と呼ばれる占い師。おばあの占いの結果に、村の長である男がため息をついた。「嘘ではない。水害の星が出ておる。川は氾濫し、田は駄目になる」「川の氾濫? あの川が氾濫なんてするのか?」「昔は大きな氾濫があった。すっかり忘れ去られてしもうた。忘れられた頃に、災害は繰り返されるものよ」
2023年10月14日 23:27
「お姉ちゃん!」岩屋の戸を開けた日和。中では朔夜が布を織っていた。「あら、お疲れ様。大変だったでしょう?」「ううん、お姉ちゃんこそ。……あれ」「あぁ、お客様よ」ちらと岩屋の奥を見た朔夜。朔夜と同じく布を織っているのは織姫。彦星が、そんな織姫を見てにやけていた。「織姫様と……彦星様」「何で間がある? 俺がいるのそんなに嫌か?」「日和、ごめんなさいね」申し訳なさ
2023年10月24日 10:26
お姉ちゃん、と私を呼ぶ声が好きだ。純粋無垢でまっすぐな瞳も、安心しきっている笑顔も、妹のすべてが好きだ。でも、私は妹とは根本的なものが違う。『朔夜』夜風にあたるために、外へ出たところだった。私以外には誰もいないはずの闇から声が聞こえる。「また来たの?」『何度だって来るさ。朔夜が俺たちの里へ来るまでな」「何度来ても同じよ。私はここを離れるつもりはない」空気が揺れている。