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ディレクター須賀真之WS〜レポート報告〜


avenir’e 2nd create『大人の付き合い』/『紙風船』の稽古に付随して、また8月に予定している作品の前段階の共有のために、ディレクター須賀真之さんのワークショップを行いました。
 『俳優の身体』をテーマに身体を通したコミュニケーションを考える時間になりました。
 そんな時間を少しでもみなさんと共有できるよう、拙いながらもレポートにてご報告できたらと思います。

オリエンテーリング


 まずは俳優陣とのオリエンテーションとして「今日の体調」についておしゃべりするところから始まりました。
 須賀さんから今日の体調を「10段階(10が一番良い)」で段階をつけてみましょうとガイドがあって、みんな今日の体調を数値化していく。
・「6」だったけど自転車できたら「3」に下がった(髙橋)
・夕べ寝落ちしてたけど、カラオケに行ってアップしたら「7」になった(三浦)
など、自分の体調を数値化していく。
 そうすることで、自分の身体の把握して意識的な管理の役に立つことや、他人の体調も意識できることが一緒に創作するのにいいなど発見があったようだ。

哲学対話

続いて哲学対話のルールを用いてのシェアの時間。(哲学対話のルールは「哲学対話」で検索するとすぐ見れます)
対話のテーマは
『俳優の身体について~良い身体とは~』
やはり俳優部はみんな身体については思うところが多いようで実にたくさんの意見が交わされた。中でも「癖」や「自意識(見られている身体・見せようとする身体)」の扱いについてはそれぞれいろんな思いがあるようだった。
それぞれの経験から効果を感じたワークについてのシェアも自然と行われる。
・ダンサーのメソッドからの4つの要素(土・水・空気・火)を身体に取り込む。
・マスクや描いた絵に入って行くワーク。
・獣のワーク。
 対話をしながら聞いているこちらも自然と身体についての意識が高まっていくのを感じる。
●須賀さんの共有(良い身体に近づくために)
・アンテナの感度
・身体を制御するノイズを減らす
・身体の語彙(自分とは違う人の動きなど)を持つ
 全員でシェアしたものを持ちつつ、休憩を挟んで実際にワークをしていく時間へ。

ワーク

カウントアップゲーム

<ルール>円になり1~20の数字を順番に言っていく。誰が言ってもいいが、同時に言ってしまったら1に戻る。誰もかぶらずに20まで言えたら成功。

 簡単そうで、やってみると意外と難しいゲーム。
 互いに互いの様子をうかがいながら積極的にカウントしていく。ゲームに集中していくと、みんなの意識が場に集中していくのが分かる。
 さらに目を閉じた状態でやってみる。より場への集中が必要になることでみんなのアンテナの感度を上げていく。徐々に集中が上がっていくことで、それぞれの身体からノイズ(無駄な動きが)減っていっているのが見ていてはっきりと分かり面白い。
 アンテナ感度を上げた状態で次のワークへ。

空間を歩くワーク

 それぞれ部屋を歩き回りながら、その空間から感じとれる拾えるものを言語化(口に出さなくてもいい)していく。窓が見えたら「窓」、黒いバッグが見えたら「黒いバッグ」など。場のことをよく知っていく作業をしていく。
 須賀さんが手を叩くとその場で止まり目を閉じる。その上で須賀さんが言うものがどこにあるのか指さしてみる。「禁煙の張り紙」「ペットボトルの水」など。そうやってより自分とその場とをチューニングしていく。
 チューニングした上で今度は歩き方を変えていく。
≪後ろ向きに歩く→中腰で歩く→歩く速さを2倍にする→そのまま後ろ歩き≫
変わるごとに感じる変化をフィードバック。
『名言』 「後ろ歩きは宇宙船みたい」

二人組で相手を連れていく


<ルール>二人組でそれぞれ1番と2番を決める。1番の人は手の平を上に向け目を閉じる。2番の人が1番の手の平に触れている状態では1番は立止まり、2番は方向転換できる。手を離すと1番は歩き出す。2番は1番を安全に部屋の中を移動させる。

 見ていてもとても面白いワーク。興味深かったフィードバックは、目を閉じている1番は一度そこに壁があるかもと想像してしまうと身体が反応してしまうというもの。『想像したものはそこに在る』。確かに見えている人からするとそこに危険はなくても目を閉じている人が怖がる瞬間があるのが分かる。
●身体についてのワークを行いながらも、とても会話やコミュニケーションを行っていることが分かる。見えている者と見えていない者。場に対しての価値観の違う人間同士が手の平の接触を通しながら進んで行く。言葉だけではないコミュニケーションを文字通り肌で感じる時間になっている。

〇ビューポインツを使ったワーク
<ビューポインツは
1. 空間 2.形 3.時間 4.動作 5.感情 6.物語
1~4がそろうことで⑤が生まれ⑥が見えてくるという考え方>
円になり素の状態で立つところから始まり、次に時計回りに歩き出す。
 同じ速度、同じ間隔を保ちつつ歩く。
 そこに同じタイミングで進行方向を変えるということが足される。言葉は使わずに。
 さらに一緒に止まるという選択肢も足される。さらにはジャンプ。高さもそろえる。

 次は空間全体を使ってやってみる。
 3人づつやってみる。歩き方も合わせていく。そこから生まれる感情。
 見ていると妖精の儀式や縄張り争いから芽生える友情など物語のようなものを感じ取ることができる。
 再び全員で歩く。そこに音楽が流れると全員の身体が一瞬で変化するのを感じる。
●音楽は上記の1~6を持つものだが、人間の身体も同じようになれる。音楽に支配されずに音楽と共演することを目指す。

彫刻作り


<ルール>ペアを組んで一人がもう一人の身体を動かして彫刻のように形を作っていく。手を叩いたら作られた側はその身体からイメージする状況で動き出す。

 動かす側が細かいニュアンスが付けられるほどイメージが伝わりやすい印象だった。須賀さんのフィードバックで印象に残ったのは「身体は物語を記憶している」というもの。形作られた身体の記憶に身を委ねてみる感覚を感じることができるワークだった。

最後に

 須賀さんがよく座組で行う稽古の締めを行う。
円になって互いの左隣の人の今日良かったところを伝える。照れくさいが褒める褒められるという事に慣れる良い締めだと感じた。最後に今日の一言を選んでみんなでその言葉を宙に飛ばす。選ばれた言葉は「側転」。休憩中に家入くんが見せてくれたキレイな側転が選ばれました。笑

今回のセッションをしてもらったことで、早速『大人の付き合い』/『紙風船』の稽古に良いフィードバックがあった。
作品は会話劇だが、感情が生まれる前に身体が反応している感覚や言葉ではない部分のコミュニケーションが稽古のフィードバックやシェアの語彙を増やしてくれている。
今後の稽古も楽しみになりました。
みなさんにも楽しみにしてもらえたらと思います。

(文責:大原研二)


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