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「はじまりへの旅」

原題: Captain Fantastic
監督:マット・ロス
製作国:アメリカ
制作年・上映時間:2016年 119min
キャスト:ヴィゴ・モーテンセン

 邦題は全くセンスがない、やはり「Captain Fantastic」。仮令、見合った邦題が探せなくともそもそもこの映画をchoiceする時点でこの程度の原題は解る人が観客の筈だ。映画配給関係者には一考してもらいたい。

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 冒頭は一家の生活舞台である森風景、それも迷彩メイクから始まる。予告等でこの森から母の葬儀がなされる教会への2400km移動をロードムービーと紹介されるがロードムービーという程には細かい移動に合わせてはいない。ロードムービーに惹かれて観ると若干期待がズレる可能性がある。

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 寧ろ途中立ち寄る妹一家での文化、生活習慣の相違さ、裕福な暮らしをする母方実家を対照的に丁寧に描いている。映画らしくかなりデフォルメされていて笑いを取るあたりがコメディと分類されたのだろう。決してコメディ映画ではない。デフォルメされているが実際は保守的な母方実家の生活を映画を観ている大半の人がしている。一方主役のベン一家は絵空事のように描かれているが人々は憧れはしてもそれを取り入れることは出来ない「自由だが自己責任を越えた強さ・能力」が必須のハイクオリティの生活だ。

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 どちらがいい悪いの描き方がされていないところが心地良い。実は私も両親が清潔スキで添加物キライであった為、未だ縁日での屋台を未経験であるし添加物は苦手。映画のファストフード店シーンでコーラって何?の父の即答「poison drink」には苦笑してしまう。

 生きることの根本を徹底的に6人の子に教え込むベン。知性だけでは生き抜けない。それを宿す躰そのものの能力がまた生活のクオリティに関わる。
 映画では極端に右に左にと振れて話を進めるが、実際私たちの生活も思想をはじめ左右にブレている。

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 難解書をいとも簡単に読む子ら、六か国語は当たり前。森でも学ぶことが出来ているのは、そこに指導者がいるからだと描く。此処では父がオールマイティに対応できるハイスペックさの元に展開される。両親が頭が良いことはさりげなく映画でも触れてはいるが、肝心なことは教育が「ブレてはならない」ことなのだろう、と考えて観ていた。いずれこの6人の子は成長し自分で価値観を択ぶ時が来る。それまでは愛情とブレない教育が子らを育てていく。

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 ヴィゴをはじめ、6人の子らの演技がとてもよかった。愛する母の死は辛くてもせめて母が願う生のお終いを整えようとする健気さにこころ打たれる。
*ノーム・チョムスキー氏を崇拝する家族のお陰で彼の存在を知る。
★★★★

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