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MELECHESH 『Enki』(2015)
イスラエル出身のスラッシュ/ブラックメタルバンド MELECHESH。
イスラエルは実は隠れた(?)メタル大国で、ORPHANED LANDやSalem、Amasefferといったバンドが有名だし、最近ではThe Fading、Her Last Sightといった若くて才能があるタレントが出てきている。
このMELECHESHは、実は活動歴自体は長く、1996年に『As Jerusalem Burns...Al'Intisar』でデビューすると、イスラエル出身のバンドとしては初めてアメリカのレーベルと契約し、VoのAshmedi以外はメンバーが頻繁にチェンジするも、その後コンスタントにアルバムを出し続け、今までに6枚のフルレングスをリリースしている。
イスラエル出身だが、現在はオランダのアムステルダムをベースに活動しており、中東の風を感じるサウンドをベースに、ヨーロッパの哀愁メロディも時折混ぜてくるエクストリームオリエンタルメタル。
アルバムタイトルも『Djinn』(2001)や『Sphinx』(2003)といった中東のメソポタミア文明に纏わるワードが多く、しばしば海外のレビューサイトではMesopotamian Metalと紹介されている。
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本作『Enki』は2015年発表の、現在までの所、彼らの最新作。
Nuclear Blastからのリリースということもあり、安心のクオリティと激烈オリエンタルサウンドを堪能出来る一枚となっている。
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Ashmedi – lead vocals, guitars, sitar, keyboards, piano
Scorpios – Bass, vocals
Moloch-Guitar
Load Curse-Drum
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■Tempest Temper Enlil Enraged
冒頭からエキゾチックな香りを漂わせながら激走ブラストをかますスラッシーな一曲。
ギターやグロウルシャウトの響き的にも初期のArchEnemyの影響を色濃く感じる。
■The Pendulum Speaks
ジャギっとした刺々しい歪みを纏いながらオリエンタルな調べを奏でるミドルテンポチューン。
■Lost Tribes
スラッシュ&疾走系パワーメタル。
荒ぶるギターサウンドで曲全体の輪郭を描きながら鮮やかな音の粒をぎっしりと詰め込んでいく。
中東の香りはすると言えばするが、どちらと言えばやはりこれもArchEnemyの『Doomsday Machine』や『Rise of the Tyrant』あたりに入っていそうな空気感。
■Multiple Truths
ゴリゴリに歪みを効かせたディストーションフランジャーサウンドに先導されるグルーヴィーなミドルテンポチューン。
■Enki - Divine Nature Awoken
異国情緒溢れる旋律と共に絢爛豪華で神々しいトレモロが滑るように流れる。
8:00超という長めの尺に目眩く光輝燦然の絵巻が展開されるプログレッシブな一曲。
■Metatron and Man
中東サウンド全開でザクザクリフオリエンティッドな疾走曲。
確かなスキルに裏打ちされた手数の多い音の塊が押し寄せる。
■The Palm, The Eye And Lapis Lazuli
怪しく繰り返す東洋の調べを刺々しいディストーションで和えたリフが支配するメソポタミアンメタル。
■Doorways To Irkala
長尺のイスラエル民族音楽。
ちょっと飽きる。
■The Outsiders
緩やかにスローテンポで始まり、次第に様々な楽器の総動員、ピロピロギタータイム、激烈ブラストビートなど色んな手練手管を見せてくる全部入りプログレッシブチューン。
色んな音は入っているものの、長尺でやや起伏に欠けるためこれも聴き切るためにはちょっと覚悟が必要。
総合満足度 79点(聴くと縁起が良くなりそうなレベル)