
Norther 『Death Unlimited』(2004)
1996年、フィンランドはEspooで結成されたメロディックデスメタルバンド。
当初はRequiem という名前でPetri Lindroos、Roni Korpa、Toni Hallioの3人を中心に活動していたが、名門Spinefarmから声が掛かり、バンド名をNortherに変更して、2002年に『Dreams of Endless War』でデビュー。
これがメタル激戦区である母国フィンランドチャートで17位という快挙を成し遂げ、一気に知名度が上昇。
2003年には『Mirror of Madness』をリリースし、Dimmu BorgirやHypocrisyとのツアーを経て、さらにワールドワイドに活動の幅を広げる。
サウンド面で同郷の先輩であるChildren of Bodomと比較され、フォロワーと評される事は多々あるもの、バンドメンバーの演奏、アレンジスキルはかなり高く、ライブパフォーマンスでも高いレベルを常に見せつけていたため、星の数ほどいるCOBリスペクト勢の中でも一目置かれる存在だった。
本作『Death Unlimited』は2004年にリリースされた彼らの作品の中でも屈指の名盤で、これ以降も、いくつか高品質なアルバムをリリースするも、結局2009年にバンドの顔であったPetri Lindroosが脱退すると急速に勢いを失い、惜しくも2011年に解散となってしまう。
ある意味一番脂の乗っていた時期の一枚。

約20年前にChildren Of Bodomが示した、In FlamesやSentenced、Carcassとは異なる爽快感や疾走感、透明感のある暴虐性といった側面をもった北欧デスメタルの方向性が一つの完成系であるならば、彼らは間違いなくそのジャンルの厚みを加えるのに必要な存在だし、それを強烈に主張したアルバムだと思う。
メタルの一つのジャンルの広がりは、似たような音楽をやりつつ、お互いをリスペクトしながら、どれだけ個性を出せるかだと思っているので、その意味で、「チルボドのフォロワー」や剽窃といった誹りはもはや全く意味をなさず、逆にこの手のサウンドは「チルボドっぽさ」が一つの褒め言葉であり、評価の基準になると思う。
——
* Petri Lindroos − Harsh Vocals and Guitar
* Kristian Ranta − Guitar and Clean Vocals
* Toni Hallio − Drums
* Jukka Koskinen − Bass
* Tuomas Planman − Keyboards and Synthesizers
——
■Nightfall
アルバムの開幕を告げるインスト
■Deep Inside
クッキリとした音像に切り取られた鋭利なリフに導かれるメタリックなチューン。
彼らの中に流れるチルボドの血が曲の隅々にまで行き渡っている事を高らかに、包み隠さず主張している。
上昇フレーズ多用のギターソロが滑らかでキーボードとの掛け合いも実に華麗。
■Death Unlimited
ハーシュボイスを撒き散らしながら疾走するPetri Lindroosの吐き捨てデスシャウトが冴え渡るスピードチューン。
ヒステリックなダミ声で絶叫するPetriの「Fuck you and die!」が、ありし日のアレキシを想起させ、冬の寒い今こそ聞きたい一曲。
■Chasm
冒頭からのゆったりとした歪みアルペジオが徐々に軽快に刻みはじめ、曲全体に緊張感を与える。
コーラスに入るとリズムを落とし、中盤では荒涼感溢れる寒々しいキーボードがブリブリ唸るベースと合流し、より北欧の世界観を確固たるものにしている。
■Vain
涼やかなキーボードとグルーヴィでゴツいベースラインが曲の背骨を支える。
キーボードソロは、アルバム中盤にしてやっと存在感を見せてきたかというほど待ち焦がれていたものだが、その音数の多さと火の出るような滑らかなフレーズは実に圧巻。
■A Fallen Star
「A Fallen Star〜♪」のバッキングコーラスがなんか可愛さを感じてしまうメタル。
この曲もキーボードソロがJanne愛が溢れてて思わずニヤけてしまう元Hate Crueが世界中にたくさんいた事でしょう。
■The Cure
極寒の吹雪を思わせる荒涼キーボードと、「敢えて外す」ディソナント感溢れるギターワークが相互にねじれあい、絡まりあって不思議な昂揚感を生み出している。
Petriの声も悲哀があって良い。
■Day Of Redemption
ミドルテンポで寒々しい北欧の荒野を思わせる音像が堂に入っているモダンデスメタル。
中間部で、ピアノとギターでメランコリックにロマンチックに展開するフレーズには堪えていた感涙が思わず流れ出し、そしてら流れ出した涙をまた一瞬で凍らすようなChillyな展開に感情が追いつかない。
■Beneath
薄く張った氷の上を滑りゆくようなピアノのインスト
■Hollow
雄々しく太く刻んだギターリフから、ノンブレーキで疾走し出すメロディックスピードチューン。
アレキシ兄貴直系の高速アルペジオで滑らかに紡ぐギターソロは華しかない。
■Nothing
スローに粘っこく進むメタルチューン。
ギター&キーボードフレーズの美しさはますますキレ味を増し、振っていた頭を思わず止めて聞き入ってしまうほど。
■Going Nowhere
狂気と透明な暴虐性、そして華麗な旋律を惜しげもなく振り撒きながら全方位にハイテンションを宣言していくスピードチューン。
どことなくRPGのボス戦のようなBGMにも聞こえるが、アルバム最後というのに問答無用で高揚感を掻き立ててくる。
■Tornado of Souls(cover)
Megadethのカバー。クオリティは高いがギターソロはキーボードじゃなくてギターで弾いて欲しかった。
総合満足度 86点