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自転しながら公転する/山本文緒
ずっと読まずにいた「自転しながら公転する」を読了した。
初めて山本文緒さんの著書である「恋愛中毒」を読んだ時、主人公の複雑な心理描写をうまく表現した巧みなストーリーテリングに驚き、久しぶりに小説の世界にどっぷりと浸れる一冊に会えた…..と感動しながら徹夜して読み終え読後2日は物語の余韻に浸るほどだった。なので今作は買ったまま読まずに落ち着いた時に読もうと思い大切にとっておいたのだ。
東京のアパレルで働いていた都は母親の看病のため茨城の実家に戻り、地元のアウトレットのショップで店員として働き始めるが、職場ではセクハラなど問題続出、実家では両親共に体調を崩してしまい……。恋愛、家族の世話、そのうえ仕事もがんばるなんて、そんなこと無理! ぐるぐる思い惑う都の人生の選択から目が離せない、共感度100%小説。
【読んだ感想】
・結末が気になって気になって時間を見つけては読むの繰り返しだった。
・人間誰しも同じ’’幸せ’’を求めているとは限らない、この本を読んで必要最低限の幸せを本当の幸せと思える人間になりたいと思った。
・ある程度社会人を経験していると理想ではなく現実を見なければいけない事は頭では理解するが、都(主人公)の夢見がちなまま年老いていく事の喜びや幸福感を味わいたいという感情もわかるなぁとなった。
・「自転しながら公転している」….予期せぬ状況にあたふたしている自分を感じるとこの言葉を思い出しては’’私だけじゃないんだよ’’と言い聞かせる事ができる言葉に出会た気がした。
ーこの作品を要約すると(ネタバレ)ー
自分に自信が持てず人を羨ましいと思ったり、自分には分不相応だと踏み出せなかったりといったような人生に迷う人々が出てくるお話。
迷い考えグルグル自転しながら、世間の中を公転していく、そして公転は同じ場所を通ることはないし戻ることはないというのがこのタイトルの意味。
作者である山本文緒さんは「人に頼ったり、羨んだりしていても何も変わらない。結局自分に自信が持てないのが原因であれば、自分が頑張るしかない。でも一人で悩み抱え込むことはない。人に頼ってもいいし甘えてもいい。しっかり進もう」ということを伝えたいのかなと感じた作品である。
【読後インタビューを読んで】
・PickUPインタビューにて山本文緒さんが作品について「男女が付き合うということは侵略しあうことでもあって、必ずしもいいこととは言えない気がします。今は一人で生きて一人で死んでも寂しいわけではない、という価値観もありますし。〝この人がいないと生きていけない〟という考え方も素敵だけれど、〝この人がいなくても生きていける〟という結論を一回出してから始まることもあると思うんです」と仰っていてこの考え方が自分の価値観と同じで驚いたとともにやはりこの方が書く小説は素敵だなぁと改めて気づいた。
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