「アントマン&ワスプ:クアントマニア」ビッグかつスモールな目的
あのキャシーがこんなに大きくなって…(親戚のおじさん目線)
アントマンは言わずもがなマーベル・コミックにおける最古参のヒーローであり、蟻のサイズまで小さくなったり、時には大きくなったり、自分のサイズを変化させることができる能力を持つ。それに倣ってと言うべきか、映画では"大きい"と"小さい"が要素として散りばめられており、本文でもこの点で映画を見ていきたいと思う。
次の”アベンジャーズ”に向けた"壮大な"スタート
いろいろな媒体で宣伝もされている通り、今作はマルチバース・サーガにおけるフェーズ5のスタート作品である。なおマルチバース・サーガはフェーズ4から始まり、フェーズ6の「AVENGERS:THE KANG NYNASTY」(原題)「AVENGERS:SECRET WARS」(原題)といった2作品のアベンジャーズへと繋がる一連の括りを指す。(ちなみにインフィニティ・ストーンを巡るサノスたちとの戦いを描いたフェーズ1から3はインフィニティ・サーガと呼称される)タイトルにもある通り、サノスの次にアベンジャーズに立ちはだかるスーパーヴィランがカーンだ(おそらく)
なお、カーンについては原作でもかなりややこしいキャラクターであるので、いろんな解説記事を読まれることをおすすめ。ジョジョ的に言うと、ヴァレンタイン大統領のD4Cみたいに多元宇宙から別の自分を連れて来れば、実質的に死なない最強の人(ジョジョ未読の人には伝わらない文章)
MCUにおいて、実はカーンは二度目の登場となる。前回はドラマ「ロキ」のシーズン1で”在り続ける者”として、TVAの黒幕として登場した。彼は時間軸を管理し、他時間軸にいる変異体である"自分"を封じ込めているという。とある出来事によって、さまざまなカーンが解き放たれることになるのだが、今作のカーンはその一人かもしれない。しかしどちらかというと、他カーンと対立しているという点で”在り続ける者”と立場は近そうだ。そのやり方は、結局は”征服者”として自分がそれぞれ管理するという思惑に駆られている点でロキやスコットとは対立する。"在り続ける者"は思想にその狂気を感じられたが、今作のカーンはそれに加えて量子世界を軍隊を組織して征服し、そして単独でも反乱軍を抑える力も魅せている。特にジョナサン・メジャースによる普段は冷静で品のあるようだが、キレるとヤバそうな演技がよりカーンの恐さを表現しているように思える。
今作ではカーンやMCUの”大きな”展望が明らかになり、今後もMCU作品でカーンがどう関わっていくのか、また新しいアベンジャーズたちはどう立ち向かうのか楽しみである。
家族という最小単位のコミュニティ
と、この映画の”大きい”部分についてここまで述べてきたが、次は”小さい”話をしていきたい。今作の主人公は最小のヒーローであるアントマン&ワスプだ。今作では1作目から続いてハンク・ピム(マイケル・ダグラス)、前作で救出されたジャネット・ヴァン・ダイン(ミシェル・ファイファー)、そして成長したキャシー(キャスリン・ニュートン)が加わる。そして彼ら家族が量子世界へ迷い込む、といったストーリーになっている。ここで特に良かった点として、全員が活躍をしていたことを挙げたい。ワスプことホープは前作に続いてキレッキレのアクションを見せながら、しっかりといい場面でスコットを手助けする。そしてハンクは未来アリ軍隊を引き連れてドヤ顔で逆転する。今作ではハンクがイライラしてない感じがいい。キャシーにおじいちゃんと言われて、もはや好好爺といった感じで丸みを感じ取れる。また、今作で本格的にストーリーに参入し、キーパーソンの一人でもあるジャネットが魅せるアクションは娘さながらすごくカッコいい。そういえば彼女も初代ワスプでありS.H.I.E.L.Dの一員だった。量子世界でのカーンとの確執についてもストーリーを盛り上げる点として面白かった。
より新しいキャラクターとして、キャシーが登場する。1作目では小さな女の子であったが、エンドゲームにて指パッチンを逃れて成長した姿(なお役者は変更されたが)に感動した人は少なくないはずだ。今作では守られる存在ではなくスコットたちの隣に立つヒーローとしてスーツを身に纏う。彼女の素晴らしい点は自らを顧みずに人助けに翻弄するところだ。予告で留置所から出てくるシーンで、悪い子になっちゃったの!?と心配したが(親戚のおじさん目線)、指パッチンで家を失くしたホームレスを助けるためであることが明らかになり、そして量子世界でカーンから家を奪われた人たちのために動こうとする姿に成長を感じ考え深い(親戚のおじ…ry)。なにより奇怪な姿で再登場したM.O.D.O.Kことダレン・クロスに対し、かつて人質として襲われたことがありながらも、情けをかけ改心させる。ヒーローとして初登場しつつ、すでにヒーローとして完成されているキャシーの今後が楽しみだ。
そしてなにより忘れてはならないスコット・ラング(ポール・ラッド)は、アントマンとしてエンドゲームでは全宇宙をサノスから救ったヒーローでもある。しかし冒頭で描かれた通り、他の家族は成長した姿を見せていたが、彼だけは本にしたりサーティーワンの名誉従業員になっていたりと、多くは変わらずに過ごしているようだ。しかし映画ラストで冒頭と同じようにサンフランシスコの街を歩きながら、自らを改めて語るシーンではその成長を感じ取れることが分かる。またカーンとの取引により様々な可能性である自分が無限に増え続けた時、その他の自分たちがあたふたしながらも、キャシーの為に、という目的を共有し積み重なるシーンは蟻(ヒアリ)が重なってタワーをつくっていたものと重なり、”蟻人間”ということを表現していてとても良かった。
すなわち、今作ではアントファミリーがそれぞれ量子世界で様々な活躍を見せ、そしてしっかりとした見せ場があるのがとても面白い部分だと思う。それはMCUという広大な宇宙においてはとても小さな部分かもしれないが、それがこれまでのアントマンシリーズで描かれていた部分でもある。
まとめ
これまで述べた通り、今作ではフェーズ5の幕開けとして、MCUの壮大かつ射程距離の長い"大きな部分"も内包しながら、家族という"小さなコミュニティ"がスコットたちのモチベーションであり、ストーリーのエンジンとなっている。それらが映画のスケールを様々な大小として描いており、いろんな視点で楽しめる作品になっていると思う。これはMCUがユニバースとして一連の流れの上で単独作品を作っている巧妙なテクニックが成す技として、散々思い知らされてきたが、今作ではこういった大きさと小ささをいう面に向けて書き連ねてみた。
その他のどうでもいいこと
量子世界のヴィジュアルがすごく好き。これまでにMCU(GotGやロキ)で登場してきた鮮やかな宇宙観。映画全体の雰囲気としてはSWっぽい感じ。量子世界の住人がSWに出てきそう。
今までのシリーズで登場していたルイスたちがいないのは寂しい…個人的には彼らが量子世界でワチャワチャ、ぺちゃくちゃするシーンを見たかった。とくにスライムみたいなヴェブとの絡みも見たい(役者さんは同じ人だけどね)やや要素が増えて邪魔になるだけだったのかもしれないけど。
ビル・マーレイは大物感を出しつつも、最後の戦いで登場すらせず、すごい端役だった。一体なんでだろうね…()
ジャネットがピム粒子を使って食料問題やらなんやら社会問題解決に向けて活動している様が冒頭で明らかになったけど、昆虫食の研究に進んでいなくてよかったって思いました。あとエンドゲームでサノスがピム粒子を見つけた時になんでその発想に至らなかったのか…サノスは映画「ダウンサイズ」を観てから地球に来てください。
おわり。
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