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20代一般女性とジストニア -その1
はじめに
これは、私が2020年12月にジストニアを発症してから、2024年2月に機能的定位脳手術(脳外科手術)を受けるまでの闘病記録(になる予定)です。
まさか自分が罹るなんて思いもしなかった難病を経験した為、個人的な記録を残しておいて自己満足することが主な目的ですが、万に一つジストニアに罹って苦しんでいる人がこのnoteと遭遇した場合、私の経験が情報の一つになれば良いなと思います。ただし、私は専門家でもないただの一般女性のため、単なる「当事者の所感」とご認識いただけますと幸いです。
この記録を書き始めた今現在は、まだ入院・手術の約2週間前です。本当は、寛解まで辿り着いてからこの記録をまとめようと思っていました。
そんな話をしていた時、古い友人から「手術で身体に大きな変化が起こる前に、今の気持ちを書いておくのがおススメ」とのアドバイスをいただき、少しずつ書き溜める方針に変更しました。
また、3年と少しに及ぶ記録はまぁまぁ長くなりそうなことにも気づき、闘病のフェーズごとに分けながら書いてみるのも良いかなとも思った次第です。
今回はまず、はじまりの発症当時を思い出しながら文章を書いていきたいと思います。
今後書こうと思っていること(変わるかも)
①発症した時のこと ☜今回
②地獄の病院探し
③ボトックス注射での治療~一度目の寛解
④再悪化~手術の決断
⑤手術とその後(一発で良くなって、「二度目の寛解」になりますように)
そもそもジストニアとはどのような病気か(ざっくり)
ジストニアとは、脳(主に大脳基底核)や神経系統の何らかの障害により、持続的または不随意的に筋肉が収縮し強ばる難治性の疾患である。発症メカニズムは解明されていない。
筋肉が自分の意思通りに動かなくなり、異常な動作や姿勢を強制され肉体的に大変つらい状態となり、それによる精神的苦痛も発生する。
知能が侵されることは無く、視力、聴力など感覚機能に障害が起きることも無い。また、生命に関わる疾患ではない。
具体的な症状は人によって様々だそうですが、私個人のケースでは、
首が上や下、左や右に傾く
首がねじれる
身体が歪む
鉛筆や箸が持てない、持ちにくい
字が書けない、書きにくい
ピアノ・ギターなど特定の楽器が弾けない、弾きにくい(これは身体が歪んでいることが原因なので少し違うかも)
などの症状が発生しています。
(参照:https://sanai.or.jp/kinou/ 、https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/dystonia/ )
上記以外にもジストニアに該当する症状は色々とあり、またこの説明は私が相当かいつまんで記してあるので、関心のある方はジストニアの治療を行っている医療機関などのHPを見ることをお勧めします。
①発症した時のこと
自分の状態が「ジストニア」だと気づく、あるいは診断・治療に辿り着くまでの道のりが長すぎるのではないかと、個人的には今でも思っています。
そのため、まずは発症した当時から、自分がジストニアであると自覚するまでのことを記します。
2020年12月、翌年の春に就職を控えた当時学生の私は、論文執筆のラストスパート・母校でのTA・そしてバイト先(デパ地下)の繁忙期で大変慌ただしい日々を送っていました。それでも、12月上旬までは元気に遊びに出かけたりしていたのを覚えています。つまり、発症は本当に突然のことでした。
きっかけは些細な違和感でした。首の調子が悪い。何か手を動かしている時に首が安定しない。気がつくと、顔が勝手に右へ傾いている。
最初は、「今回の肩こりは結構酷いな~」程度にしか思っていませんでした。しかし、楽しみにしていたNHK交響楽団のコンサート(多分またどこかで書きますが、私はクラシック寄りのアマチュア打楽器奏者です)(どうでもよいですが、曲目はシンデレラ抜粋とチャイ4でした)を聴きに行った際、鑑賞中に右上半身の痙攣が止まらなくなり、特に静かな場面では冷や汗をかきました。隣の隣に座っていた男性がいびきをかいて寝ていたため、周囲の注目がどちらかと言うとその人に向けられていたのが、せめてもの救いでした。後にも先にも、コンサート中にいびきをかいて寝る人に感謝したのはこの時だけになると思います。
流石にこのままではマズいと思い、依然酷い肩こりだと信じ続けていた私は、気が向いた時によく訪れていたタイ古式マッサージ店に行きました。それはもう、よくほぐしていただきました。翌朝起きたら、悪化していました。
首が勝手に右を向く力が徐々に強くなってきたので、痛みも出ていました。腹をくくって、きちんと医療機関へかかることに決めました。
とりあえず最寄り駅前の整形外科クリニックに行ってみました。
「意思とは関係なく首が勝手に右を向いてしまう」「マッサージをしてもらったら症状が悪化した」などと伝えると、「ストレートネックでは?」と言われました。
いやいや、ほんまか?と思いましたが、レントゲンを撮ったところ、運の悪いことに実際ストレートネックだったため、それとして片付けられてしまいました…。勿論、ジストニアとストレートネックは関係ありません。後で思ったのですが「マッサージで症状が悪化した」という私の発言もミスリードになっていたのかもしれません。ただ、そうでなくても、目の前の患者が専門外の疾患、しかも難病であるジストニアだと診断できる整形外科医なんて、恐らくほぼいなさそうだと思います。初手の診療科チョイスを誤ったのは事実ですが、この後私が見聞きした限りでは、ジストニア患者が最初に整形外科に行ってしまうのはよくあることのようです。
その日は機械に座って首を引っ張られたり、理学療法士に整体の施術?をされ、ロキソニンと湿布を処方してもらいました。そしてもうお分かりかと思いますが、翌朝起きたら、悪化していました。
どうも普通の肩こりではないらしいと気づき始め、本腰を入れて症状を検索してみました。ここで初めて「ジストニア」という病名を知ることになります。彼氏も大層心配し、一緒に色々調べてくれました。思い返すと、私より賢い彼の方が先に事の重大さに気づき、大きな不安を感じていた気がします。そんな彼に「大丈夫!どうにかなるよ!」などと能天気に抜かしていたのは、他でもない私です。言っておくが、全然大丈夫じゃないし、数年単位でどうにもならない。
当時一番困ったのが、繁忙期中のバイトを中々休めなかったことでした。勿論、体調が悪い時は仕事を休むべきです。ホワイトカラーの正社員として就職した今なら、そうきっぱり言えます。しかし、当時のバイト先はシフト制かつギリギリの人数で回していて、1人が欠勤すると他の人が2倍程働かなければなりませんでした。自分が逆の立場にあったら、大変しんどい一日を送ることが容易に想像できました。ごちゃごちゃ書きましたが、要するに首が辛くても頑張って出勤していました。そして症状は悪化の一路を辿りました。この頃からTwitter(現:X)では「バイトがしんどい」「首がやばい」と毎日のように言っているのが確認できます。
並行してジストニアについて調べていくと、発症原因に抗不安薬の副作用がある可能性があるという情報を得ました。この時期、私は諸事情により心療内科に通院していました。慌てて処方されている薬について確認すると、副作用の中に「筋肉の震え」的なことが書かれている薬が一つだけありました。絶対にこれが原因だと思い込み、いつも診てもらっている先生に相談したところ、とりあえず副作用が出ているかもしれない薬の服用の中止と、その他の処方薬の調整をしてもらい、様子を見ることになりました。副作用が原因なら、薬の服用を止めれば症状が治まるかもしれないということでした。
ちなみに、ここまで辿り着いたのは大体12月25日頃でした。年末年始はかかりつけのクリニックも閉まるため、タイミングとしてはかなり悪く、もう不安でいっぱいでした。私にできることは、服薬の中止で症状が治まるのを祈りながら、いつもの生活を続けることしかありませんでした。
残念ながら私の祈りは届きませんでした。症状は徐々に悪化していき、ついにはベッドで仰向けになっていると身体が痙攣して眠れなくなる状態にまで陥りました。そんな中、バイト先はありえん繁忙期の真っ只中でした。どうして年末に人々はデパ地下へ殺到するのでしょうか?
症状については店長に伝え、同僚の皆さんも心配してくれたものの、ギリギリの人数で回している中ではとても何日間も休みたいと言える状況ではありませんでした。Amazonで首のサポーターを購入して、それを付けながら接客する許可をフロアマネージャーに申請しました。正直あまり効果は無く、気休めに過ぎませんでしたが…。この時期になるとTwitter(現:X)では、アイデンティティが首になるほど(?)、首の辛さに対する愚痴に溢れていました。
12月31日がバイトの仕事納めでしたが、本来福袋準備で22時まで勤務予定のところ、あまりにしんどそうにしていたためか、店長が18時に帰してくれました。翌1月1日は建物全体が休館日のためお休みでした。しかしその翌日1月2日は、1年の中で最もオペレーションが複雑な福袋販売の日でした。私は会計の片翼を担うレジ担当でした。2日に出勤できないと大変な迷惑がかかるので、どうにか一日で調子を戻して、2日には復帰したいところでした。
しかし、久々の休みで気が抜けたのか、ようやく自分が限界であることに気づきました。強制的かつ持続的に首が右を向いているということは、首を動かす筋肉が常時作動しているため、首全体の筋肉が疲労しており、鋭く耐え難い痛みに襲われました。
お正月のことで覚えているのは、痛みで食事もままならない中、とりあえず日本酒は飲みつつ「孤独のグルメ」を視聴していたことです(穏やかに話が進んでいくので、ストレスになりにくかった。おいしそうな食事はまぁまぁ目に毒だった)。座っているのも、仰向けで横になっているのも辛くて、楽な体勢を模索しながら絶妙な格好で横たわっていました。
流石にこの状態なのに何時間も立ちっぱなしでレジを打つのは難しいと判断し、翌日出勤できない旨について、店長に土下座謝罪連絡を入れました。店長もメールの向こうではきっと阿鼻叫喚だったとは思いますが、お優しい方だったので、私を責めることなく休ませてくれました。そして、三が日が明けたら病院に行ってみることを勧められました。
こうして三が日は、絶妙な格好で寝込むことで過ぎて行きました。この三日間については何も記録されておらず、記憶もかなり曖昧です。「楽な体勢」がピンポイントすぎたので、起きている時はずーーっと同じ景色を見ていました。この時のことを思い出そうとすると、無印良品の衣装ケース(麻)が脳裏に浮かぶので、恐らく視線の先にあったのだと思います。
1月4日になれば病院に行くことができて、少しは楽になれると信じながら、この三日間を耐え抜きました。
しかし、この後の「病院探し」が本当に地獄のようであることを、この時の私はまだ知りませんでした…。
つづく