日本が長寿大国なワケ【空気を読む脳】
今回紹介するのは、
「空気を読む脳」です!
本文には明記されていませんが、「空気を読む」=「社会性の高い日本人的特性」だと解釈しています。
この本の面白いポイントはズバリ「脳科学が日本人の性格を解明している」点です!
〇〇人とか国ごとに性格の違いってほんとにあるのかなと半ば疑問に思っていた私は、この本を読んですっきりしました(笑)。
また、ギャンブルにハマる仕組みや、やる気を出させる伝え方など、実用的な知識が得られたことで500円(中古)以上の価値を感じました。
不安感を軽減する神経物質セロトニン
セロトニンとは、日光を浴びると合成される物質で、精神安定剤のような働きをします。
精神の安定や、安心感を与え、脳を活発に働かせる鍵となる物質で、セロトニンが正常に分泌されていることがストレスへの抵抗力につながります。
日光浴がいいと言われるのはこのセロトニンが合成されるからで、起床直後から30分以内が重要だと言われています。長時間日光を浴びる必要はありませんが15〜30分程度がいいとされています。(セロトニンの生成には限界があるので、日光を浴びれば浴びるほど無限に生産されることはありません。)
ちなみにこのセロトニンは男性と女性で生成能力に差があり、男性の方がその能力は高いと言われています。
いい影響ばかり生み出しそうなセロトニンですが、人類はセロトニンの生成を抑制する方向に進化してきました。
不安を解消するセロトニンですが、不安つまり危険に対して敏感な状態の方が生存には有利だったからです。
セロトニンによって生物の行動だけでなく、性格や身体までも変えてしまう例として、サバクトビバッタが紹介されています。
普段集団行動をしないバッタが数十年に一度大量発生し集団となって作物を食べ尽くしてしまうのですが、原因はある刺激(個体同士の接触)によるセロトニンの異常分泌だと分かっています。
羽は緑色から筋肉の発達により黄色と黒になり、個別で行動するバッタが数十億規模の集団となって移動するのは想像するだけで恐ろしいです。
実際集団で移動しているバッタのセロトニンは通常の3倍になっていたそうです。
人間も生きる環境の変化によりセロトニンの分泌量が増え、行動や体が変わるかもしれません。
善悪と美しさの混同
美しいと感じるのは、脳の眼窩前頭皮質と内側前頭皮質だと考えられているようなのですが、ここは別名「社会脳」と呼ばれ、他者への配慮や共感性などを司っています。
内側前頭皮質は自分の行動の善悪を判断する領域で、理性に近いものです。
脳にはきちんと部屋が用意されているわけではないので、回路が混同していたり、共有している部分があるようで、善悪と美しさもそのうちのひとつです。
これは合理的な選択が私たちにとって常にプラスになるわけではないことを示しています。
社会的に善いこと(自分の利益よりも社会全体の利益を考えた行為)を美しいと感じるように進化しています。「ムラ」意識が強い日本で、特攻隊が美とされていたのは必然だったのかもしれません。(実際に日本人は自分が利益を失ってでも相手に制裁を与えたいと言う気持ちが世界一強い民族である可能性がセロトニントランスポーター(セロトニンを取り込むタンパク質)の密度の低さから示唆されています。)
サイコパスの少ない日本
前項では日本人が社会性の高い民族の可能性を示しましたが、社会の風潮に合わせることに敏感だともとることができます。
言い換えると、価値観や倫理の基準が変わりやすいのです。常に自分の行動がその社会規範に適しているかを判断しながら生きているのです。
ブランド物を身につけていると、無意識的にその人の評価が高くなるのも、判断基準を社会に当てはめているからです。
価値観や倫理が変化するに意を介さない行動をする人たちは「サイコパス」と呼ばれます。
サイコパスを悪のように扱う風潮があるかもしれません。確かに社会の規範を守ることができない、守ろうとしないと解釈すればわかるのですが、特別悪い意味はありません。
面白いことに、サイコパスの性質を持つ人は若い女性にとって魅力的に映ると言います。自意識の低い(自分の行動が社会的規範から反していると感じやすい)人にはサイコパシーの高い人を性的パートナーとして好む傾向があるそうです。年齢を経ると変わるそうですが...。
不確実性を好まない脳
資産1億円の方は多いものの、10億円以上保有している方は少ない日本人は、お金持ちだと思いますが大富豪はいないようです。
理由は日本人が大きな賭け事(勝負)を好まない慎重派だからだと言います。
日本人はドーパミンの要求量が低く、リスクを冒してでも新しいことや未知の世界に触れたいという性質(新規開拓性)が弱いというのです。(この性質があったからこそ人類は大陸を渡ってきたのです!)
中国や韓国は別として、世界的にみてアジアは新規開拓性が弱く、南米や南ヨーロッパが強い傾向にあると言います。
日本で新たなビジネス、産業が生まれないと言われているのは日本人の遺伝子も少なからずは関係しているのかもしれません。
脳から見たやる気にさせる褒め方
私たちが不確実性を好まないのには理由があると言います。
その一つが間違った「褒め方」です。
最近は教育現場でも厳しく躾けるのではなく、褒めて伸ばすことが進められていますが、何でもかんでも褒めることを薦めているわけではないのです。
褒める際には「能力」「努力」を分けて考えなくてはいけません。
例えばテストで90点をとった子どもに、「能力」を褒めるのであれば、「頭いいね!」となりますし、「努力」を褒めるのであれば「頑張って勉強したね!」となります。よくないのは前者の褒め方です。
「能力」を褒められた子どもは、自分は努力しなくてもできると思い込むのと同時に、低い点数を取ることを恐れるようになり、挑戦しなくなるという実験結果もでています。
外発的動機付けの限界
報酬をあげること(外発的動機付け)が必ずしもよいとは限りません。「報酬=その対価として嫌なことをする」と認知され、やる気が削がれてしまうことが指摘されています。
だからといって、報酬が高いことがやる気につながらないわけではありません。それは、単純なルールとわかりやすいゴールが見えている短期的な課題に限るようです。
やる気が起きる=面白い・楽しい・やりがいを感じる、として考えると、面白いことにブラック企業と呼ばれる会社では、賃金が低くてもやめられないでいる人がいることが説明できます。
これは「わずかな報酬でも自分が一生懸命に働いているということは、この仕事は楽しいに違いない」という認知的不協和が起きているようです。低い報酬がやりがいという内発的動機付けに繋がり、やめられないというのは皮肉なことです。
日本人の長寿の秘訣
長寿者に共通するのは、良心的で慎重であり、注意深く、調子に乗らないという、真面目で悲観的な性格だという調査結果がでています。
常にリスクを考えて、生存に適する行動をとり続ける性格が長生きするのはよくよく考えれば当たり前ですが、日本が長寿大国だという事実は逆説的に日本人が上記の特性を持っていることを表しているでしょう。
「日本人は幸福度が低い」と揶揄した本が多くでており、悲しい気持ちになることもあるのですが、その思考特性おかげで長生きしているとも考えるといくらか気持ちが楽になります。
ある側面からは欠陥のように見えても、生存に有利に働くからこそ現代にまで引き継がれているのです。
そのように考えると、無駄なものとか弱みなどというのは存在しないものなのではないでしょうか。
まとめ
日本人が社会性が高いのも、不安を感じやすいのも、ギャンブルにはまりにくいのも、長寿なのも、脳科学の観点から説明されています。
もちろん、遺伝によって性格の全てが決定されるわけではないのですが、環境によってある程度の性格が決まるのは面白いです。
逆にいうと、このボーダーレスの時代において、遺伝的な性格特性を理解しておくのは、ビジネスを展開する上でも、コミュニケーションを取る上でも大切かもしれません。
脳科学への理解を深めることは、自分では扱うことの難しい感情と向き合うことができる点で新鮮でした。ホットな話題である同性愛や毒親の心理も紹介されていますので、興味のある方はぜひぜひ読んでみてください!
ではまた!
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