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4年ぶりの広島。

 1994年から2019年まで、毎年欠かさず訪れていた8月6日の広島平和公園。コロナ禍により、2020年から昨年まで、出かけることを断念していた。今年は、なんとしてもと思っていたので、ともかく行くことにした。

 絵本『さだ子と千羽づる』という、原爆の子の像のモデルとなった佐々木禎子さんが、アメリカが投下した原子爆弾によって、12歳で命を絶たれるまでのことを絵本にしたものを、1994年に出版した。それ以来、この絵本の朗読を続けてきた。

 5年ぶりの広島平和公園は、これまでにない規制がさまざまにあり、広島市に公園の使用許可を取って行なう朗読も、例年のようにはいかなかった。それでも私たちの朗読に耳を傾けてくれる、とくに、幼い子どもたちの記憶に残ってくれたら、酷暑のもと、読み続けた甲斐もある。

 印象的だったことはいくつかあるけれども、なかでも、見につまされるような思いをしたのは、テキストの英語訳を拡大コピーして展示しているものを、両親と思わしきおとなが小学生くらいの少年に、英語をロシア語に翻訳しながら読んで聞かせている場面だった。
 この絵本の最後の方で、さだこさんが鶴を折ながら亡くなる場面がある。そのページを読みながら母親は涙ぐみ、少年の肩を抱きしめながら読み続けていた。最後は父親も、少年を抱きしめていた。
おそらく、現在の世界の状況は、ロシア語圏の彼らにとって、戦争は身近にあるのだろう。
 核廃絶と非戦、反戦の思いを新たにした出来事だった。

夏の空と原爆の子の像。

#夏の1コマ

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