きれいな石
2022年コメント
ある時、私の名前は京子ですが、私の手紙の内容(もうどんなことを書いたか忘れましたが)から、「強固」の方が合っていると、彼は書いてきました。私が中学生の時にすでに20歳を過ぎていたと思われるので、すでに70代後半かそれ以上。お元気に暮らしているでしょうか。
タイトルの写真は、やはり彼が送ってきたリッキー・ネルソンのLPレコード。
2011年2月4日
もう名前も忘れてしまったけれど……。
片付けものをしていたら、中学生の時にある人からいただいた石のかけらが出てきました。
その人の名前はもう忘れてしまったのだけれども、あまりにも時代を感じさせるエピソードなので、記しておこうと思う。
私が中学生の時、「東京オリンピック」があった。1964年のことです。当時、父の仕事の関係でモンゴルの医師と交流がり、その医師がモンゴル選手団の専属医師として、来日しました。
そこで私たち家族は、モンゴル選手団を、浅草などに案内し、天ぷらやすき焼きをごちそうしたのです。そうして私は、彼らから、代々木の選手村に自由に入れる通行証のようなものをもらい、毎日のように遊びに行きました。
なんせ1ドル360円の時代ですから、海外へ行くというのは、よほどのお金持ち。新婚旅行が熱海の時代です。それが、選手村は居ながらにして世界中の、それもアスリートたちが一同に滞在している場所ですから、それは、それは面白くて、出会う人、出会う人に、「Hello!」なんて声をかけて、サインをもらったり、それぞれの国のバッチをもらったりしました。
その時、語学学校を卒業して、すでに海外のホテルへの就職が決まっていて、アルバイトとして、選手村での通訳をやっていた日本人と知り合いました。本名は忘れてしまいましたが、「ツウ」と名乗っていました。
オリンピックも終わり、ツウさんは、アメリカだったか、ハワイだったかのホテルへと旅立ちました。程なく彼から手紙が来て、しばらくの間、文通をしていました。
この石のかけらは、その手紙と一緒に送られてきたものです。
「泳ぎに行ったらあまりにきれいな石があったので、送ります。ほんとうは、この30倍くらいの大きさだけれども、ハンマーで割っておくりました。机の上にでも飾ってください」というようなことが書いてありました。
今では、珍しくも何ともないことだけれども、彼から送られてくる手紙には、外国の匂いがあって、小さな石のかけらから、たとえば当時テレビで放映されていたアメリカのドラマなどで見ていた風景に思いを馳せていました。