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2024年 フィンランド音楽のベストアルバム

2024年に発売された、歌詞がフィンランド語の音楽作品の中からお気に入りのアルバムを選び、感想を書きました。

「この記事を書いている今の自分に一番響く音」が聴ける5作品を選びました。2023年版で選んだ作品は50作品だったので、かなり厳選していますね。

Aran『Maahan Laskettu』

音のひとつひとつはものすごく騒々しいはずなのに、心の方は聴き進めるほど静かになっていくんですよね。土曜の渋谷の人混みの中にいながら落ち着いたひと時を過ごしているかのような感覚。音量を小さくして少し離れた場所で喧騒を眺めるような聴き方をするとその印象がより強くなります。フワーっとした音に焦点が当たって、音の表面からは見えない味わいを見つけられるのかもしれません。

Circle of Ouroborus『Ajattoman Uni』

色んな音楽を聴けば聴くほど、Circle of Ouroborusは自分の肌に合うと実感しますね。妙に安心するというか。それは恐らく、Circle of Ouroborusの音楽性がブラックメタルというよりもノイズロックやグランジに近い音を出しているからなのかもしれません。パチパチノイズを毛羽立てたギターリフの数々は、かつてFlipperやSwans好きの少年だった自分にとって非常に馴染み深い音で、迷いなくスーッと入って来るのです。それこそがCircle of Ouroborusを聴いたときの安心感の正体なのかもと、本作を聴いて思いました。

Kylmyyteen『Kuihtuneen maan tuuli』

気温という意味での「寒さ」を音楽を通じて感じたいときに聴きたくなるアルバムです。その「寒さ」には具体的なイメージがあります。気温はマイナス10度くらいで、場所は森の奥底。曇天の中濃い霧がかかってて眼の前は真っ白な景色。Kylmyyteenの作品を聴いていると、そういう場所に一人でいるみたいな気分になるんですね。どう考えても過酷なシチュエーションですが不思議なことにネガティブな気分にはならなくて、浸れてしまう。本作の収録曲はいずれもかなり長い(4曲中3曲が11分以上ある)ですが、音に浸り気持ちよくなるために構築した結果この尺になったんだろうなと、聴いていくうちに思えてくるんですよね。尺の面でも鬱々とした曲調の面でも聴く人をかなり選ぶ音楽なはずなのに、一度ハマると年に数回、ふと聴きたくなる時がある。なので僕にとって、Kylmyyteenの音楽は無くてはならない存在となりつつあります。

Tempbaster『Tarina』

轟音の壁となったギターに紛れてベースが不協和音を鳴らしまくっているのがFlipperみたいで非常に格好いいです。全編楽しい内容ですが、どちらかというとテンポの早い曲よりも『Talvi』~『Ihminen osa 1』で見られる遅い曲のほうが本作のドロドロした魅力が発揮されていて好きですね。「喜怒哀楽」の「喜」と「楽」の概念が抜け落ちて感情の起伏が激化したときは本作をBGMにしたいです。

Verikyyneleet『Unisono』

本作を聴いていると、絵本『モチモチの木』で夜中にモチモチの木がキラキラ光るシーンを思い出します。景色としてはすごく綺麗なんだけど、そこには夜や自然が持つ捉えきれない恐怖のようなものが織り込まれていて、油断しているとその恐怖に簡単に吸い込まれそうで…その辺で夜景を見るのとはわけが違う安心できない感じがあのシーンにはあって、本作もその印象に近いものがあります。今年聴いた作品の中で一番綺麗で怖いアルバムです。


来年の抱負は、アルバム一枚だけを繰り返し何度も聴く、好きな音楽記事の感想を発信する、です。

来年もどうぞよろしくお願いします。

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