見出し画像

2冊目:『デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (中)』フランク・ハーバート著(酒井 昭伸 著)

第2冊目。

昨年にPart 2が映画公開されたDuneの原作小説の中編。
英語原作は1965年に出版。

ゴリゴリのSFなんだろうけど、ファンタジーとか神話の雰囲気があって個人的には世界観が好み。


Duneの背景は、西暦が進み技術の発展に伴い思考機械(今の時代でいうAI)の発展と反乱による世界的な混乱を人類は鎮圧。その後、思考機械に頼ることなく、中世的な人間の精神を重んじた人間社会を再構築し、人類は宇宙を支配する。その支配の在り方は、一つの惑星を領家が皇帝の配下として封建的統治を行う。一方で、宇宙空間においてはテクノロジーを手中に収めるギルドが、恒星間輸送や貿易において権利を持つ。また、ベネ・ゲセリットと呼ばれる女性で構成された超能力教団が、各領家や皇帝家の婚姻関係を操っている。

この辺の勢力図は、小説を読んでいても理解が難しい。

上巻は、代々水の惑星カラダンを治めていたアトレイデス家が、これまでハルコンネン家が統治していた砂の惑星アラキスの統治を皇帝より任命され、家ごとアラキスに移るところから始まる。
アラキスは、このDuneの世界の中で貴重な価値を持つ香料「メランジ」の産地として、重要な惑星であった。

この重要な惑星の統治を任されることは、領家にとって栄誉なことであったが、前統治領家のハルコンネン家はアトレイデス家にとっての旧敵であり、アラキスにはハルコンネン家が退去する際に巧妙な罠が仕掛けられてあった。この任命はハルコンネン家と皇帝によって、アトレイデス家を滅ぼすために仕掛けられた策略であった。

砂の惑星アラキスへの移動後、アトレイデス家は仕掛けられた罠によって壊滅的な打撃を受ける。主人公ポールの父であり、アトレイデス家侯爵のレトはこの罠によって殺害。ポールは母のジェシカとともに命からがら逃げ延びる。

ここまでが、上巻の大まかな出来事。

中巻は、砂漠に逃げた主人公ポールと母ジェシカが、ハルコンネン家の追跡部隊からの逃亡を通して、砂漠の原住民フレメンの部族との接触が描かれる。

母ジェシカは女性教団ベネ・ゲセリットの一因であり、ポールは男性ながらベネ・ゲセリットの訓練を受けていた。この逃亡劇の中で、ポールは自身が持つ予知能力の覚醒に気づき始め、自身がたどる復讐の道とその過程で自身が死ぬいくつもの未来への道筋を視る。

教団ベネ・ゲセリットは、各惑星で神話や信仰に関わる伝導を行っており(なんのために行ってたかは忘れた。多分原住民の領家による統治を行うため)、砂の惑星アラキスには預言者が現れ原住民フレメンを圧政から解放する伝承が浸透しており、その伝承を後生に引き継ぐために教母と呼ばれる存在がフレメンには存在した。

謀略によってハルコンネン家に壊滅させられたアトレイデス家を建て直し、アラキスを再び取り戻すためには、このポールらはこのフレメンを味方につける他なかった。前統治者のハルコンネン家は、この砂漠を知り尽くした原住民フレメンを軽視しており、圧政を敷いていた。

ポールらは、追手から逃れるなかでフレメンの集団の襲撃を受け、それをはねのける。その過程で、フレメンらの集団は伝承に伝わる解放者がポールなのではないかと疑うようになる。そこからフレメンに先導される形で彼らの集落に向かい、ポールたちはフレメンの信用と信仰を獲得していく。

フレメンを味方につけ、砂漠を味方につけ、信仰を味方につけ反乱の時に向けてポールは成長していく。


中巻あたりから、映画との違いが目立つようになってきたけど、大まかな流れは映画と同じ。

自分は、原作の方が、ポールの予知能力の覚醒とそれが見せる聖戦への道筋を歩むしかない葛藤が詳細に描かれていて理解しやすかった。

この小説が他のSFと一線を画すと感じる点は、章が移り変わるごとに、小説内の架空の文献の一部を引用し(聖書の引用みたいに)世界観について、理解を深めていけるところ。

また、生物学や地政学、宗教的な知見が各所にちりばめられている感じで、独特な専門用語が頻出するけど、それが奥行きを与えているところ。下巻の巻末に用語の辞書が50ページくらいついている。

自分はやはり長編の小説が好き。一度その世界観にはまると長く楽しめるから。

Duneは下巻以降、新訳だとあと2作のものっているので、読むのが楽しみだけど、どのタイミングで読もうか。
村上春樹が面白すぎて、なかなか戻ってこれない。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集