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シャロン・シャノンの笑顔

シャロン・シャノンというアコーディオン奏者が日本に紹介され、初めて来日したのはいつだったか。90年代に東京のレコードショップでインストアライブがあり観に行った記憶がある。あまりのキュートさにすっかり大ファンになってしまった、と言うことだけは覚えている。

経歴を見ると、1968年6月生まれだという。僕と一歳違い。1989年21歳のときにウォーターボーイズに加入、脱退後1991年にファーストアルバム「Sharon Shannon」を発売すると、大ヒット。アイルランドで最も売れたアイリッシュトラッドのアルバムだという。

こちらの動画は1992年のもの。
正直言うと初めてみたのだが、すごいメンツだ。
ドーナル・ラニー、ホットハウスフラワーズのリアム・オメンリイ、ウォーターボーイズのマイク・スコット、U2のアダム・クレイトン。

ファーストアルバムがヒットして、アメリカ、ヨーロッパツアーに出て、録音に参加した「ウーマンズハート」がまた大ヒットして、大きな注目を集めるなか企画されたアイルランドの人気テレビ番組「レイト・レイト・ショー」での異例の特番が組まれたそうだ。

当然、その「ウーマンズハート」のメンバーもみんな出演している。
メアリー・ブラックやドロレス・ケーン。

そして、シャロン・シャノン・バンドは、ギターがパトリック・ストリートのジェリー・オベイルン、フィドルとマンドリンはポール・ケリー、そして、ベースは今やルナサを率いるトレバー・ハッチンソンだ。

見どころとしては、48分くらいのマイク・スコット、ボブ・ディランのフォーエバー・ヤングを歌っている。若くて、パッショネイトで、かっこいい。

また後半、1時間7分くらいで登場するスティーヴ・クーニーとシェイマス・ベグリーがすごい。油が乗っている。アイリッシュ音楽をやっているギタリストはこの演奏を観た方がいいと思う。同じようにはできないかもしれないが、この心意気だけでも参考にすべきだろう。

ところで、この映像を見て何より思うのは、音楽において最も重要なことは「笑顔」だということ。このシャロンの満面の笑みを見てほしい。見ているこっちも笑顔になってしまう。
もう少し言えば、音楽で重要なのは「楽しむこと」であり、それが一緒に演奏するメンバーに伝わることで、アンサンブル自体も良くなる。この動画で一緒に演奏をするメンバーの表情を見ればわかるはずだ。みんなに笑顔が伝染している。

こちらは初期、トレバー・ハッチンソン、ドノー・ヘネシーと組んでいた頃のライブ。みずみずしい。クレジットを見ると1994年とある。今ではアイリッシュで定番となっている「Tune For A Found Harmonium」をやっている。この曲はペンギン・カフェ・オーケストラのサイモン・ジェフスが京都に滞在しているときに道端に捨てられていたオルガンを拾ってきて作ったことで有名だが、これをアイルランドで演ったのもシャロン・シャノンが最初ではないだろうか。こういうセンスも彼女の強みだと思う。

セカンドアルバム「Out the Gap」(1995)は何とデニス・ボーヴェルのプロデュースである。ザ・ポップ・グループの「Y」のプロデューサーである。本人が望んだのか、周りがつれてきたのか、知りたいところだ。今聞いても素晴らしいプロデュースである。レゲエのリズムとアレンジが全く違和感ない。

そして、2000年の4枚目のスタジオアルバムでいろんなゲストと共演した「ザ・ダイアモンド・マウンテン・セッション」で、アメリカのロック・シンガー、スティーヴ・アールとともに「ザ・ゴールウェイ・ガール」をレコーディングし大ヒットする。というか、その後いろんなところでこの曲が使われるようになり、いつしか彼女の代表曲のようになった。「PS.アイ・ラブ・ユー」というアメリカ映画でも使われていたなあ。
こちらは2016年の映像。もはや国民的イベントみたいになっている。

僕が一番好きなアルバムは、2002年の「Live in Galway」。
妹のメアリー・シャノン、ギターのジム・マレーとの息の合ったスリリングな演奏が最高なのだ。グルービーなアイリッシュトラッド、というものに到達したアルバムだと思う。

昨年11月にポーグスのシェイン・マガウアンが亡くなって、様々な追悼コメントがSNSに溢れる中で、印象的だったのはシャロン・シャノンのFacebookでの心のこもったコメントだった。曰く

「シェインについてはもう何百万回も言われていることだと思うけど、あんなにワイルドで、クレイジーで、大胆で、狂気じみていて、おかしくて、凶暴で、大胆不敵で、猛スピードで、時には信じられないほど暗くて、堕落していて、怖くて、地獄のような歌詞を書くのに、今まで聴いたこともないような、心にしみるほど美しくて、尊くて、心のこもったロマンチックな曲も書けるなんて、すごいことだと思わない? 多くの音楽愛好家やミュージシャンが彼の曲の歌詞に耳を傾けていないことに驚かされる。どうか私を信じてほしい。特にシェインの曲を2、3曲しか知らないような人たちには、聴きながら、あるいは聴かずとも歌詞をググってみてほしい。そして曲の意味や背景についても調べてみてほしい。そしたらさらに彼らの曲が好きになり、私が言ってることがわかるはず。」

 彼女のFacebookより

シェインの生前はあまり知らなかったが沢山共演していたのだな。

そのうちの一つ、ちょっと録音がヒドイけれど、それがまたシェインらしい。ジプシーブラスバンドのような伴奏でポーグスの曲で最も駄作だと言われたあの「フィエスタ」をやっている。最高だ。

最後に音楽事務所ミュージックプラントさんのブログからの引用だが、シャロン・シャノンによる牛さん向けのコンサートの模様。本当に純朴な田舎のゴールウェイ・ガールなんだろうな、この人は!


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