AB社コラム第57回:具体的なチャレンジを提示できる人は、希少価値がある。
前回、「自分ファースト」のトレンドの中、組織のトランスフォーメーションやイノベーションを本気でやろうともがいている人材は、必ずメインストリームに返り咲くという話をしました。
前回の記事を書いたのは2ヶ月前(!サボってしまいました)だったのですが、ますます「自分ファースト」のトレンドが進んでいるようにも感じます。
多くの人が「会社は個人の成長のためにある」「会社に入るのはハクをつけるため」と考え、組織が自分の成長を促してくれないと判断すれば、組織をどうにかしようと努力するよりも、さっさと新しい組織に移るようになっています。
この潮流に乗ってしまえ!と安易に考えるのは、やはりリスクがあります。
そのあたりの話を、もう少ししてみたいと思います。
「逆張り」のすすめ
私は常々「逆張り」をすすめています。
「逆張り」とは投資の用語で、相場のトレンド(流れ)に逆らった投資法のことで、古くからよく使われています。相場環境や市場人気を読み、上げ相場の時に売り、相場環境が悪化し、人気がなく、値下がりしているときに買うことを指します。
昭和から平成にかけて、終身雇用が当たり前の時代は、組織人になることが一般的で、マジョリティでした。
そんな時代に「会社は個人の成長のためにある」と考え、自分の成長を追い求めて会社を転々とする人は少なかったわけです。
少なかったから、希少価値があった。
しかし、今は自分ファーストの考え方がマジョリティになりつつあります。
マジョリティになると、希少価値がなくなって、買い叩かれます。
長い期間、ポジションを維持したいならば希少価値を狙う「逆張り」の戦略が有効です。
具体的なやり方を言える人は、希少価値がある。
いま最も希少価値がある人は、組織をドラスティックに変えようとするとき、具体的なやり方を言える人です。
昭和の時代から今まで、どの組織もドラスティックな変化を経験していません。だからこそ、「DX」を代表されるトランスフォーメーションが必要だということになると、どの企業も右往左往して、とりあえずコンサルに丸投げ、ということが起こっています。
もちろん、今の組織に所属している人にも経験はありません。
そのため、「組織を変えよう」と言うだけで具体的なやり方を何も示さない人が多いです。
未知数でありながらも、具体的なチャレンジ方法を提案できる人が今はいない。だからこそ、ここが狙い目です。
マジョリティになることは、自分の価値を下げる。
そのチャレンジは、眼を見張るような斬新なものである必要はなく、知っている人ならば常識のような当たり前のことでも構いません。具体的であることに意味があります。
例えばカクテルのマティーニはベルモットを使って作ります。
ベルモットを使うことは知っている人には常識でも、言わなければわかりません。
今の組織には、「マティーニを作ります」と言って何もしない人はたくさんいますが、「ベルモットを使おう!」と具体的に提示できる人は、ほぼいません。
そこを埋めることができる人は、「会社は個人の成長のためにある」「タイパ重視だから成長させてくれない会社にとどまるのは無駄」と考えている人より、はるかに希少価値があります。
希少価値があるということは、重宝されます。
当然ですが、組織から重宝されたほうが、仕事はしやすいですし、成果も出しやすくなります。
トレンドに乗ってマジョリティになり、自分の価値を下げるよりも、「逆張り」戦略をおすすめします。
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