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絵描きが洗われた「うらぎりもの」の無意味、それから祈り



 「うらぎりもの!」
 彼女は目に涙を溜めて睨みつける。

 院内感染でインフルエンザに罹った彼女に会うことを許されなかった彼は、
 「病院の決まりで仕方なかったんだよ、ごめん」
 そう言って、小さな彼女を抱きしめた。
 心細かったことは痛いほどわかってるし、彼自身何をしていても彼女が気掛かりで、いつでも落ち着かなかった。

 「毎日欠かさなかったのに突然来なくなったから、死んじゃったのかと思ったわ」
 抱きしめていると、曲がった臍は元の位置に戻って来たようだ。
 涙が彼の首に温かく流れて、くすぐったいのを我慢していると、若い青年スタッフが、
 「お熱いですねえ」


 うらぎりもの!

 この言葉を直球で投げつけられる信頼。
 この言葉に涙を流して優しく応える相棒。
 恋人とは違う夫婦とも違う友情とも違う不思議な不思議な繋がり。
 意味なんかない、信頼だけ。

 ずっとこの言葉を紙に書きつけてはごみ箱に捨て続けていたあたしは、今この言葉の無意味を知った。

        *


 インフルエンザで諦めていた面会。
 今年最後にふたりが会えて良かった。
 あたしはうれしくて、電話口でうれし泣きをした。

 あたしの大切なふたりの絵描きの大先輩。
 こんな繋がりを目の当たりにするだけで、汚れた心が洗われる。


 そしたらあたしは……
 全ての葉を閉じている小さな森に新たな水脈を造るつとめがある。
 森を守る女神になるの。
 元気な葉を開いて活き活きしたぴかぴかの森に戻るように。

 そしたらあたしは……
 治療後たった半年余りで執念深い悪性腫瘍の再発に再度覚悟を決めた、大切な詩人の友の回復と腫瘍撲滅を神に祈る。
 「うらぎりもの!」
 「これ以上試練を与えるな!」
 なんて言わずに、ただ祈るの。


 自由すぎる空の雲が壮大な喧騒に思えた日もあるけれど、でもやっぱり空を追いかけずにはいられない。

 その辺のふわふわ綿ぼこりみたいなちっぽけで何の役に立たないあたしも、一応生きてるもん。
 綿ぼこりだってすきま風をふさぐことはできるのよ。

 それぞれの一年の終わり。


空の喧騒



 一年の最後の最後の日まで、やらなくちゃならないことがある。
 部屋の片付けもままならないままに、年越しをする覚悟はずいぶん前からできている。

 そんな時。
 ついさっき、いつでも応援していてくれる大好きな友人から温かい動画が届いた。
 うれしいなぁ~。

 1分17秒の短い動画。

 列車が走ってる映像。
 2024年の列車から2025年の列車に乗り換えるの。
 その時に、嫌だった思いは2024年の列車にわざと忘れていくんだって。
 2025年の列車には、楽しかったりうれしかったりした思い出と、これからの望むものを持って乗り込むの。

 たったそれだけなのに心がぽかぽかしたんだ。
 またがんばれる。

 ありがとう、大好きな友だち


空の乗り換え



さあ、新たな列車に乗り換えるのよ



祈りが届きますように

かけがえのない大絵描きの魔女へ


かけがえのない詩人の友へ


息子よ、かあか・・・がとりあえずの女神でもいいかしら、放任してるけど……


今年はおそろしくペースダウンしましたが、読んでくださったnote友、ありがとうございました🌻感謝


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