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【奥野洋子先生インタビュー】読み聞かせで“大人”がストレス解消!? 聴く読書のリラックス効果とは?

子どものためと思われがちな絵本の読み聞かせが、実は大人のストレス解消にも効果があることが明らかになっています。
今回は、『大学生に対する絵本の読み聞かせによるリラックス効果の検討』​​を研究した近畿大学の奥野洋子先生を取材。事業所でのストレスチェックが義務化されるなど、社会人のストレス軽減が課題となる今、読み聞かせが効果を発揮する可能性はあるのか、オーディオブックでも可能性はあるのかなど伺いました。

奥野洋子さんプロフィール
近畿大学総合社会学部准教授。臨床心理士、公認心理師、医学博士。
専門は臨床心理学。発達障害児・者の心理的援助と、医療・介護・教育などの専門職に就く人のメンタルヘルスについての研究などを行う。
https://www.kindai.ac.jp/sociology/research-and-education/teachers/introduce/okuno-yoko-cd3.html

――先生は大学生に対する絵本の読み聞かせ効果について研究されていますが、どうしてこのテーマで研究をしようと思われたのですか?

奥野: 10年以上前に大人の絵本がちょっとしたブームになりました。その頃に、柳田邦夫先生が書かれた『大人が絵本に涙する時』『砂漠でみつけた一冊の絵本』(どちらも岩波書店出版)を読んで、絵本は大人が読んでも考えさせられたり、訴えかけられたりするものだと興味を持ちました。ただ、そのときはまだ研究テーマにしようと考えていたわけでなく、大学の授業で使えそうだし、臨床心理士としてのカウンセリングの参考にもなりそうだなという程度でした。それが、授業で絵本を教材として扱う中で学生からいい反応があったり、読み聞かせをテーマにした研究を目にしたりして、研究テーマにするとおもしろそうだなと考えるようになりました。

――授業やその後の研究で読み聞かせを体験した大学生はどんな様子でしたか?

奥野: 研究では『わすれられないおくりもの』(作・絵:スーザン・バーレイ、出版社:評論社)『だいじょうぶだよ、ぞうさん』(作:ローレンス・ブルギニョン、絵:ヴァレリー・ダール、出版社:文渓堂)という、身近な人の生や死、命をテーマにした本を読みました。そうすると、大学生でも身近な人の死や別れを経験している人は多くいて、最初は子ども向けの絵本なんて、と軽く考えていた人も、話の奥深さを受け止めて自分の体験をふりかえったり、絵本の魅力に気がついたり、絵本に対する見方が変わる様子が見てとれました。
興味深かったのは、絵本を読み聞かせていると、気持ちよさそうにウトウトとする学生がちらほらいたことです。「子どものとき夜寝る前にお父さんに読み聞かせをしてもらっていたから、絵本を読んでもらうと眠くなる」という感想があったりして。他にも、子どもの頃のことを思い出して懐かしかった、ほっこりしたという声は多かったですね。研究論文ではリラックス効果という言葉で表しましたが、やはり何か過去の思い出やその時の気持ちが思い出されることでネガティブな気持ちが抑えられて、リラックスできたということかもしれません。そういったことを研究では数値化できたんだと思います。

――読み聞かせのリラックス効果はどこに要因があるのでしょうか?

奥野: 絵本を自分で黙読した場合と他の人に読んでもらった場合の脳の活動量を比較した研究があります。それによると、自分で読むよりも他人に読んでもらった方が、脳がリラックス状態になることが分かっています。どうやら、読む人の声や読む抑揚とか音の作用が起因しているようです。もちろん実際には、どんな声でもどんな読み方でもいいわけではないですし、絵の雰囲気、読み手との関係性、その場の雰囲気などの要素も関係しての結果だと思います。

――今企業では事業所でのストレスチェックが義務化されるなど、ストレスの軽減が課題になっています。絵本の読み聞かせは、社会人のストレス軽減にも効果があると思いますか?

奥野: 効果はあると思います。大人の絵本が流行したときも、社会人がそれを読んで癒されたり涙を流したりしてリラックス効果を得たということが話題になっていましたし。おそらく自分で黙読して読んだ方が大半だと思いますが、私は黙読よりも誰かに読んでもらったほうがよりリラックス効果を得られるのでは、と思います。
ただ、一言に「リラックス」といっても、実はいろいろなリラックス状態があります。研究で使った、生死や命をテーマにした絵本は、悲しいとかつらい気持ちもあるけれど、その悲しみを乗り越えていくストーリーに相手との繋がりを感じさせるところがあるので、あたたかい気持ちになれて、その結果、リラックスにつながったのではないかと思います。リラックス効果を期待するなら、その人の好みや心理状態に任せて、好きな絵本や読みたい絵本を選ぶのがいいですね

――オーディオブックでもリラックス効果が得られる可能性はありますか?

可能性はあると思います。リラックス効果には、本の内容の影響もありますが、読み手の声のトーンや読み方も影響します。現に同じ本でも、誰かに読んでもらうときは読み方によって心地よく感じられることもあれば、イライラすることもありますよね。オーディオブックの場合、プロの声優が心地よい声と適切な速さ、トーンで音読してくれるので、気持ちよく聴くことができます。まずは、音楽を聴くような気持ちで、好きな本を聴いてみるといいのではないでしょうか。


絵本の読み聞かせには、読む声や内容など様々な要因が絡み合って気持ちをリラックスさせる効果があることがわかりました。

オーディオブックユーザーの中には、就寝前にオーディオブックを聴くという人もたくさんいます。もしかすると、絵本の読み聞かせのようにリラックス効果を感じているからかもしれません。

オトバンクは今後もオーディオブックの可能性について紹介してまいります!

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