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「ユニクロ潜入1年」感想

この本は、著者の横田増生さんがユニクロにアルバイトとして1年間働いた潜入ルポです。

潜入経緯の面白さ

まず、アルバイトとして潜入する経緯が面白い。
横田さんの前著「ユニクロ帝国の光と影」を中心としたユニクロへのブラック企業批判に対して、柳井社長が以下のように発言する。

「悪口を言っているのは僕と会ったことがない人がほとんど。会社見学をしてもらって、あるいは社員やアルバイトとしてうちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたいですね」
横田増生. ユニクロ潜入一年 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.544-546). Kindle 版.

その発言に対して、横田さんが「なら潜入したろやないか」という売られた喧嘩を買ってやるみたいな流れが面白い。

横田さんのツッコミが面白い

ユニクロには部長会議ニュースという文書があって、だいたいそこで柳井社長が激を飛ばしている。部長会議ニュースを中心としたユニクロへの横井さんのツッコミが面白い。以下で自分が好きだった横田さんのツッコミを紹介していく。

部長会議ニュースとは、毎週月曜日に行われる同社の部長会議の内容を、翌火曜日に全店舗に向けて発信する文書を指す。
横田増生. ユニクロ潜入一年 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.317-319). Kindle 版. 

・大感謝祭というユニクロの売上に大きく影響を与えるイベントが不振に終わった原因について、柳井さんが部長会議で配るノベルティの数が少なかったことを挙げる。それに対して横田さんは

「殿、ご乱心か!」
横田増生. ユニクロ潜入一年 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1157). Kindle 版. 

・その次の年の大感謝祭ではノベルティを渡すための買物額が、前年7000円以上の買い物→10000円以上の買い物と値上がりし、よりノベルティをケチるようになっていたことに対しては

「去年は七千円が高すぎるって言ってたのに、今年は一万円かよ!」横田増生. ユニクロ潜入一年 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3188-3189). Kindle 版.

・ユニクロの大感謝祭を学校の文化祭、体育祭のように捉えようというビックロの総店長に対しては

本気で言っているのか。果たして、この男は正気なのか、と私は不安になった。
横田増生. ユニクロ潜入一年 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3163-3164). Kindle 版. 

ユニクロの「有明プロジェクト」というリアル店舗とネット通販の融合を図るプロジェクトに対しては、柳井社長の過去の著書「一勝九敗」のタイトルを使いながらこうツッコむ。

リアル店舗での販売の成功と、ネット通販での成功は全く違ったノウハウとマインドセットが必要であることを考えると、これも柳井社長の著書である『一勝九敗』のうちの〝九敗〟に分類されて終わるのだろうか、と思った。横田増生. ユニクロ潜入一年 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.986-988). Kindle 版. 

ぼやきながらもアルバイトを楽しむ横井さんが格好いい

この本を見る限りユニクロの職場はかなりきつくて苦しい環境のようだが、そんな中でも楽しみを見出している横井さんがかっこいい。

・単調な袋むきの作業でも効率的なやり方を発見すること、どの物流業者から商品が来ているか知ることに喜びを見出している。
・商品のレイアウトを工夫することでユニクロの売上を伸ばす。
これは柳井さんが言うところの全員経営というものらしい。柳井さんの発言に反発しながらも、部分的には柳井さんの発言を実行していく横井さんの複雑な感じも面白い。

総評

ユニクロのアルバイトの辛さがこれでもかというくらい伝わってくる。
特に大感謝祭のレジの描写は読んでいるこっちが疲れてくる。

感謝祭でレジに立つと、一息つけるのは、顧客がお金を出すのに時間がかかっているときと、レジの機械がレシートを出すのにかかるほんの数秒間。そこで、直立不動のまま、深い息を一つ吸って吐くことで気持ちを落ち着かせる。
横田増生. ユニクロ潜入一年 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3334-3336). Kindle 版. 

海外の下請け工場の労働環境の劣悪さ、やりがい搾取される大学生バイト、正社員を目の前にぶら下げられ都合良く使われた主婦の方、読めば読むほどユニクロ怖いなぁと思う。一方、ユニクロの安くて品質のいい服に助けられている自分もいる。
ブラック企業だとユニクロを糾弾することなど当然できず、むしろユニクロのコスパの良い服による恩恵を受けている自分を含めた消費者がブラック企業を作っているのかなぁと思った。

以上

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