サポートミュージシャンの生活ってどんな感じ?お金とか私生活とか【プロベーシストの軌跡③】
前回と前々回でぼくの幼少期からプロのベーシストになるまでのお話をしたので、今回はプロになってからのお話。
(興味ある人は前のも読んでね↓)
サポートミュージシャンの生活ってどんな感じなのかとか、私生活とか具体的なお金のこととか書きます。
時期的には、バイトやめて音楽一本で生活するようになった26歳から32歳くらいまで(コロナ禍になる前まで)の話です。(コロナ禍以降の話はまた次回します。)
ちなみにぼくを知らない人のために書いておくと、ぼくはアーティストのライブのサポートやレコーディングでベースを弾いてお金をいただいて生活しているプロミュージシャンです。プロフィールはこちら。
▼ミュージシャンはどうやって稼いでいるのか
サポートミュージシャンは、そもそも何をしたらお金をもらうことができるのか。
もちろん楽器を演奏することでお金をもらうのですが、意外といろいろな方法があります。
・ライブサポート
まずぼくの場合、一番多かったのがライブサポート。(今も一番多い)
アーティストさんのライブなどでベースが必要になったときにベースを弾いてお金をもらいます。
ライブは全国規模のツアーのときもあれば、フェスなどイベントのライブのときもあれば、単発のライブ、ミュージカルなんかもあります。
サポートするアーティストさんも様々です。20代後半から30歳にかけてだと、SKY-HIみたいなラッパーだったり、クリス・ハートやMs.OOJAみたいなJ-POPだったり、Jun. KみたいなK-POPだったり、ユーミンさんの舞台や蜷川幸雄さんの音楽劇で弾いたり、他にも声優さんとかアニソン系の現場、アイドルの現場だったり、本当節操なくベースが必要な現場なら何でもやってました。
・レコーディング
次に多いのがレコーディング。(ライブよりレコーディングのほうが多いというミュージシャンもいると思います。)
レコーディングも色々で、立派なレコーディングスタジオに行ってレコーディングすることもあれば、宅録(たくろく)と言って家でベースを弾いてデータで納品するということもあります。
弾く楽曲も様々で、アーティストの楽曲だけではなく、ゲーム音楽だったり、劇伴と言ってドラマとか映画の音楽だったり、CMの音楽なんかもあります。
ちなみにレコーディングすると二次使用料という不労所得が得られるようになります。自分がレコーディングした音源がテレビでかかったり、CDレンタル屋で借りられるとお金が入ってくるという感じです。
・テレビ収録
あとはテレビの収録です。
ミュージックステーションとかCDTVとかうたコンとかああいうのですね。
テレビ収録も実はいろいろあって、実際に演奏しているものと、実際に演奏してないものがありますし、生放送のものもあれば事前収録のものもあります。
実際に演奏してないってどういうことかというと、ただ単にカラオケを流してベースを弾いているふりをします。いわゆる当て振り(あてぶり)です。実際に音は出ないけど、音に合わせて弾いているふりをしないといけないので意外と気を使います。
ちなみにちょっと珍しいケースだとテレビ用に事前に自分でレコーディングした音源に合わせて弾くという場合もあります(プレスコ)。
・その他の収録
その他にもMV(ミュージックビデオ)の収録なんかもあります。
これは当て振りです。映像を撮ることが最優先になるので、待ち時間が長かったり、朝早かったり夜遅かったり、寒かったり暑かったり、結構過酷なことが多い印象です。ちなみに過酷なわりにギャラは安め。笑
変わり種の収録でモーションキャプチャーの収録というのも経験したことがあります。
ゲームかなんかでキャラクターがベースを弾くシーンの動きを、ぼくの動きを収録してそのキャラクターが再現するっていう感じのやつです。全身タイツに小さい球体がいっぱいついたやつで収録する感じでした。
これはわりとギャラがよかったです。ゲーム業界ってお金ありますよね。レコーディングとかでも支払がいいイメージがあります。
あとはぼくは経験したことないですが、ラジオの収録とかも仕事としてはありますよね。わりとピアノとかギターとかシンガーと二人でできる系の楽器の人がやってる印象。
最近だったらYouTubeの収録とかもあるかもしれませんね。製品レビューとか。これもぼくはないです。
・サポート以外の仕事
あとはサポートミュージシャンとしての仕事ではないですが、レッスンとかもありますよね。
ぼくの場合、音楽教室とかで教えていたわけではないので、習いたい人が個人的に連絡くれて教えたりとか、たまにコーディネーター(ミュージシャンを斡旋する業者)経由で有名な芸能人とかに教えたりとかありました。でもそんなにたくさんはやってきませんでした。
バンド活動をしていた時期もありました。時期的にサポート仕事が増えてきていた時期だったのもあって1年も経たずにやめちゃいましたが。
当時は自分の活動よりもサポートの仕事のほうがやりたい気持ちが強かったです。
ちなみに、セッションとかセッションライブとかそういう演奏の機会もあります。
が、こちらは仕事というよりは、人脈を作ったりとか、ただただ楽しむとかそういう感じで、遊びとか飲みに近い感覚です。
でも馬鹿にできなくて、前回の投稿でも書きましたがぼくはセッションで作った人脈で仕事をもらえるようになったので、音楽で生活できるようになってからもわりとセッションは行ってました。
▼どれくらいお金がもらえるのか
じゃあ、具体的にどれくらいお金もらえるのよー?!って思いますよね。
ぼくが仕事として音楽をやり始めたときのことを書いちゃいます。
・ライブサポートの場合
ライブサポートではライブ1本あたりの金額が提示されて、リハーサルはその半額がもらえるというのが多いです。
ぼくが一番最初にやったメジャーな仕事はライブ1本4万円でした。源泉、消費税別。
ちなみにライブでDVD収録とかそういうのが入ってると収録料みたいな感じでライブ1本分もらえたりします。
だからたとえば、8本のツアー仕事でリハーサルが5日間、DVD収録があったら、
という感じで全部で46万円のギャランティーがもらえるという計算になります。
ミュージカルとかだと全部でいくらみたいな感じで提示されるときもあります。
たとえば「リハ、本番、全部合わせて100万円です」とか。
100万円って聞くと「やったー!」ってなりそうですが、「本番とリハーサルの本数数えると1日あたりの単価は・・・あれれ?」みたいな感じにあることもあります。
・レコーディングの場合
レコーディングは1曲レコーディングしたら3万円というような具合で、曲単価でお金が支払われることが多いです。(バイオリンとか弦の人たちは時給らしい)
だからたとえば、1日で2曲レコーディングしたら
みたいな感じです。
劇伴みたいな曲数が多いときは1日でいくらみたいなときとか時給もあります。拘束時間が長ければ1日で10万円とかもらえたり。
・テレビ収録の場合
テレビ収録とかミュージックビデオ収録だと1日でいくらみたいな感じになります。
当て振りの仕事は安くて、2万円くらいのことが多かったです。
テレビで生演奏の仕事だと、わりとまちまちな印象ですが、だいたいライブサポートの本番と同じくらいもらえるのかなーという感じです。
どうでしょうか。
高いと思いましたか?安いと思いましたか?
当時のぼくの印象では「そんなにもらえるのー?!」って感じでした。
だってバイトだったら1日4万とか絶対稼げないじゃないですか。
でもライブ一本やったら稼げちゃうんですよ。いいですよね。
とはいえ、実際はライブ1日をこなすためには家で練習したり、音作りしたり、機材を準備したりなど単純に1日労働ではないので、そのあたりの労力も考えたら駆け出しであっても妥当な金額なのかなあとは思います。
ちなみにここに書いた単価はあくまで一例で、いつもこの値段で受けてたわけではないです。
年齢を重ねるごとに自然に単価が上がっていくような感じはあって、そうでなくてもこちらが交渉して上げてもらうこともありましたし、逆に「予算がなくて」ということで安いギャラで受けるということもありました。現場によって違うという感じですね。
ただここに書いたのは、ぼくの若いときの話なのでプロとしてサポートミュージシャンをやっていく上での単価の最低ラインはこのあたりなのではないかなとは思います。
今は物価高くなってるから若い子ももうちょっともらってるのかな。どうですか?
▼どんな私生活なのか
仕事のない日はベース練習したり、ライブとかセッションに行ったり、友だちと飲みにったり、女の子とデートしたり、1日中漫画読んでたりしてました。
仕事のない日の過ごし方はバイトしてたときと多分ほぼ変わってなかったと思います。
ただバイトと違うのは自分が仕事をするタイミングを自分では決められないということです。
来た仕事のスケジュールがそのまま自分のスケジュールになっちゃう。
忙しいときはめちゃくちゃ忙しいのに暇なときはめちゃくちゃ暇みたいなこともよくありました。
結局、サポートミュージシャンは雇われ仕事なので、本当にごく一部の超売れっ子以外はどうしても仕事のスケジュールにムラができちゃいます。(サポートミュージシャンでずっと忙しいっていう人は本当にすごいです。)
そこで暇なときにレッスンをしたりとか、作曲を始めたりとか他の収入を作る努力をしていればよかったのですが、若いぼくは持ち前の謎の自信と楽観主義があいまって「なんとかなるだろ〜。」と暇なときはそのまま暇を謳歌してました。
それでも20代後半から30歳にかけて、ありがたいことに仕事もどんどん増えて、多くの普通に働いている人よりは稼げてたと思います。
とはいえ、特別贅沢するわけでもなく、独身のときは戸建てをミュージシャン同士でルームシェアしたり、スタジオ付きの安いアパートに住んでいたりしてました。
ミュージシャンっていうと華やかそうですが、華やかなのはステージ上だけで私生活は全然そんなことなかったと思います。手堅くNISAとかiDecoとか小規模企業共済とか資産構築&節税始めてみたりとか。ミュージシャンも個人事業主ですからね。
あとは機材たくさん買ったり、車(機材を運ぶのに必要)を買ったりで、そんなに手元にお金が残らなかったというもあります。忙しくなればなるほど機材が必要で、たとえばツアーが3つとか同時期にあったら3セット分ベースとアンプともろもろの機材が必要になってくるので、散財しちゃうわけです。
それでも機材買うのとかやっぱ楽しいし、ツアーとかライブの仕事も楽しいし、バイトをしないで音楽だけで生活できる日々はそれだけで楽しかったです。
▼結婚と子ども
そんな感じで独り身ミュージシャン生活を謳歌していた20代後半でしたが、30歳で結婚します。
付き合って、プロポーズして、籍を入れて、結婚式をして、家を買ってを1年でやりきりました。
ちなみに家を買うときに希望額のローンが組めませんでした。
会社員で同じ年収だったら全然組めるような額でも通らない。
まあ、それもそのはずで収入あっても機材買いまくってるから所得が同じ収入の会社員よりも低いんですよね。
それにしてももうちょっと組めてもいいんじゃない?!と思ったものですが、ミュージシャン(個人事業主?)の社会的信用は低い模様です。
実際そのあとコロナ禍になって大打撃だったし、ローンの会社は正しいんですけど、当時は「クソー!」と思いつつ笑、いろいろな人の力を借りて購入にいたりました。
それで31歳のときに第一子が生まれて、子どもとか生まれたら自分の中の何か新しい音楽の扉が開いてネクストレベルに行けるんじゃないかとかちょっと期待してましたが全然そんなことなかったです。笑
むしろ音楽が仕事になったなあという感覚を持ったのを覚えています。自分が楽しくてやっていたこと(ベースや音楽)が、お金を稼ぐための手段になったという感じで、純粋に音楽を楽しむというより、仕事をこなしていくという感覚がいつの間にか強くなっていました。
まあ、そんな感じで内面では変化もありつつでしたが、業務内容的には以前と変わらずライブサポートなど中心に色々やってたところでコロナ禍になるんですよね。
はい!そんな感じで、この続きはまた次の記事で書こうと思います。
コロナ禍どうしてたかとか、コロナ禍での心境の変化とか、コロナ禍を過ぎてからのこと、これからのこととか。
とりあえず、次回がこのシリーズ最終回です!多分。