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情熱を追い続けろ。

料理映画ってどうしてこんなに魅力的なのかしら。

今週、「美食家ダリのレストラン」という映画を見てきました。

わたしの住んでいる地域では、わずか二週間しか公開されない映画でしたから、あわてて予定を調整したのですよ。

そうして映画館に向かったら、まあ、人が多いこと!!

でもわかるな。

わたしは「もしも徳川家康が総理大臣になったら」をみたときの予告編で、この映画を知ったのだけど、とっても料理が美味しそうだったし、画面に映し出された地中海が美しかった。みてみたいなーと強烈に感じさせる映画だったのですよ。

おまけにこの映画のコンセプトが興味深いのです。

もしも、サルバドール・ダリと伝説的な三つ星レストラン『エル・ブジ』の料理長、フェラン・アドリアという二人の天才が、同じ時代に活躍していたら……?

残念ながら、わたしはこの二人の天才について、多くを知りません。サルバドール・ダリは有名な画家ということしか知らないし、三ツ星レストランの料理長、フェラン・アドリア、というかたなんて、まったく知らない。知らないけれど、ひとつの映画を作らせるほど、魅力的な存在なのだとは理解できました。

ですから、このままでは楽しめないかなと考えたわたしは、事前にネット検索した記事を軽く読んで、この映画に挑んだのでした。ふむふむ、フェラン・アドリアはエスプーマを開発された料理人さんなのですね。

そうしてね、ドキドキしながら映画をみました。今回はアイス白桃ティーを持ち込んで、ゆったりとした椅子に座っていたから、くつろぐような感覚でした。

***

そうして始まった映画は、1974年フランコ政権末期のスペインが舞台です。隣国ポルトガルで革命が起きたことによって、民主化運動が始まったころですね。

だから、ちょっと、暴力的なシーンが描写されます。

かと思えば、料理の厨房の場面に切り替わる。軍隊のように規律正しく、でも、あわただしく料理を進める光景を見ていると、うーん、どんな時代でも料理は普遍なんだなあと感じました。壁一枚向こうでは、政治抗争が起きているのに、料理はよどみなく続けられているんだもの。

うん。抗争と料理という対照的な組み合わせに、とっても惹きつけられましたよ。

ここで、映画のあらすじを紹介しますね。

1974年、フランコ政権末期のスペイン。バルセロナを追われた料理人フェルナンドとアルベルトの兄弟は、友人フランソワの伝手で、サルバドール・ダリの住んでいる海辺の街カダケスに辿り着く。

彼らを迎えたのは、魅力的な海洋生物学者のロラ、そしてその父-ダリを崇拝する、レストラン「シュルレアル」のオーナーであるジュールズだった。

「いつかダリに当店でディナーを」をスローガンに、ありとあらゆる無謀な試みに奔走しながら、情熱を謳い続けるジュールズ。

やがてそのカオスはフェルナンドの料理に新たな風をもたらし、世界規模の革命的シェフの誕生を呼ぶことになる。

この映画の主人公は、やがて革新的な料理人になるフェルナンドです。でもこの映画のメッセージを体現する人物は、フェルナンドの雇用主となるジュールズだ、とわたしは感じました。

ジュールズはね、とにかくダリを崇拝してます。ダリを中心に世界が回ってる。ダリを自分のレストランに招くために、いろいろな手を考え、実行しています。

でもどれもこれも、空回り。

企みが成功して、せっかくレストランに予約してもらえたにも関わらず、ダリがその予約をキャンセルしたときには、ヤケ酒を飲み、酔っ払った勢いでダリの家に押しかけて、あわや警察に捕まりそうにもなります。

困った人ですよね。でも憎めないの。

そんなジュールズは、娘ロラの過ちがきっかけになって、レストランを暴徒によってぐちゃぐちゃに破壊されてしまいます。さすがに挫けそうになるんですが。

でもそんなときに、ダリの訪問を受けるのですよ。ディナーに訪れたダリを、フェルナンドの料理でもてなしながら、厨房でジュールズはつぶやきます。はてしない夢のすべてを見届けたような、満たされたものが浮かべる穏やかな表情で。

成功とは情熱を失わず失敗し続けること

この言葉が、わたしの心に強く響きました。

***

わたしにも叶えたい夢があります。

でもその夢はとてもそっけない。わたしにはとても遠い遠いところ、手の届きようもない頂点に存在しているように感じます。

実際にその夢を叶えた方々を見かけたとき、その人とわたしは、なにが違うんだろう、なにが足りないんだろう、という具合に、情熱がしぼむ感覚を味わいます。

友人の一人は、夢を見ることを諦め、堅実な生活を送るようになりました。

でもわたしは諦めたくなかった。だって素晴らしい創造物を読んだとき、厄介なほど情熱はよみがえる。わたしにも書けるんだ、と主張したくなる。夢が輝く。はてしなく尊い瞬間が手に届くような感覚がある。とてもとても、諦められません。

だからこそ、「成功とは情熱を失わずに失敗し続けること」という言葉は、同じ目線で空回りし続けた人からのやさしい、温かい励ましにも思えました。

「美食家ダリのレストラン」は失敗を続ける凡人を勇気づけてくれる映画です。


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