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クラフトマンシップが変える未来のモノづくり

序章

浦が拠点としている新潟県は、お米の名産地として全国的に知られています。特に魚沼産のコシヒカリはブランド米として有名ですね。
ところが、新潟県はモノづくりのメッカとしての重要な地位を占めていることをご存じでしょうか?
金物のまちとして知られた「三条市・燕市」では、毎年「工場の祭典」という、新潟のモノづくりを体験できるイベントが開催されています。

特に三条市ではモノづくりを支える職人を育成するために、公立の三条市立大学が開設され、数多の職人を世に送り出しています。

そんな職人の方々が大切にしている思いがあります。

クラフトマンシップ

職人気質、職人の技能、職人芸、技巧 という意味がある言葉ですが、ここでは、同じものを決められたように正確に作ることよりも、職人自身が目指した完成形に少しでも近づくために、己の技術や精神を磨き続ける技術者の心構えを差します。

クラフトマンシップの衰退

長らくモノづくりの現場は不遇の時代を過ごしてきています。
古くは産業革命から始まり、短時間に大量の商品を生産することで、物質的な所有欲を満たしてきました。
モノづくりの舞台は工房から工場に移り、職人は大量生産の労働者として単純労働を繰り返すだけの人間になってしまいます。
生産されたモノは資本家によって搾取され、労働者階級として身分が固定化されてしまいました。
今日に至っても、モノづくりの現場は、価格の決定権を持っている流通産業から搾取される構図に大きな変化はありません。
多くの生産拠点は安価の労働力を求めて海外に移り、質の高い(職人の技術を最大限に駆使した)プロダクトでは、価格的に太刀打ちできず衰退の一途を辿りました。

クラフトマンシップの見直し

 しかし、2020年に入ってから風向きが変わってきました。
ヨーロッパを中心とした既存のラグジュアリーブランドの戦略転換です。

 多くのラグジュアリーブランドでは、大量生産型の生産体制によってつくられた商品を、マーケティングの力によって希少化しブランド価値を維持してきました。
より多くの利益を確保するために、各ブランドがセカンドラインを積極的に展開したこともあり、ブランド価値の低下は顕著になってきました。

 そこで、新しいラグジュアリーの考え方として、クラフトマンシップを持った職人が一点一点ハンドメイドした希少性を、ブランディングの対象として発信することにしたのです。

 確かに、ビジネスモデルとしてのブランド戦略が発端とはいえ、ここにきてハンドメイドの価値が見直され、ハンドメイドの価値に見合った価格で取引がされ始めていることは大きな意味を持ちます。

 モノづくりサイドも、今まで搾取されてきた流通産業から自立し、ECサイトを通して直販に舵を切る動きが活発になっています。
特に、エンドユーザーにプロダクトの価値を直接伝えるために、デザイン力を強化。より魅力的に商品の価値を伝えることが可能になってきています。

モノづくりの未来

 エンドユーザーに直接情報を伝えることによって、確かな技術を持った職人のプロダクトは、高い価値を持つようになりました。
大量生産では感じることの出来ないクラフトマンシップによって、不均一な手作り感に新たな価値を生み出しています。
 今までも取り組まれてきた「生産者の顔が見えるモノづくり」は、さらに深みを増し、「消費者の顔が見えるモノづくり」へと進化しつつあります。

 エンドユーザーと職人が購入後も直接交流をすることで、互いの人となりを確認しあい、互いを尊重しあう関係を築くようになります。
ただ、言われたまま機械のように作ってきた時代とは全く違う価値観の誕生です。

 生産者側もただ利益を追求するだけではなく、社会的な責任を果たすことで、社会的課題への取り組みを評価されるようになります。
持続社会の実現(サスティナビリティ)も一つの形として認知されるようになりました。
 これからのモノづくりは、環境、資源、社会、経済に偏りなく貢献することで、エンドユーザーから支持されるようになります。

住宅産業の未来

大量生産時代の家づくりはもはやチキンレースです。
価格優位性と表面的なデザインの優劣だけで支持される家づくりは早かれ遅かれ衰退していくはずです。

 これからの家づくりは、設計者だけでなく大工をはじめとした職人の皆さんや現場監督さんが、お客様と直接コミュニケーションをとり、意思を通わす必要があります。
誰が誰のためにどのようなクラフトマンシップを持って取り組んでいるのか、お客様はどんな思いをもってこの家づくりを決心したのか、を互いに理解しあうことが大切です。

設計者は現場とお客様をつなぐ橋渡しの役割を担います。
職人の皆さんの技術の対するプライドと設計者の力量が合わさった時こそ、本当の意味で質の高いプロダクト(住宅)が生まれてくるのです。




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